私の好きな1stアルバム

 これまで聞いてきた音楽の中で、ファーストアルバムについてまとめてみようと思いました。というのも、あまりこういった類のリストを見たことがなかったから、面白いかもしれないと思ったからです。
 数学的にも、世の中に最も多いのは「ファーストアルバム」なのですから、ある意味でも最も難しいかもしれません。そのアーティストの中で、ファーストアルバムが一番好きかもしれない、というものを選択しました。ですから、いわゆる名バンド・名アーティストのあれもこれも入っていません。
 UKロック多めですが、おおめにみていただければ・・・。ここではリンクも貼ってみたいと思います。

"The Doors" The Doors 1967

 私の中では、これはサイケデリックですね。陶酔感がある。#6の演奏が好きです。オルガン(?)のお陰でポップに聞こえますが、その実は結構トリップ感があるような気がしますね。良くも悪くもおおらかな時代だから生まれた名作なのかなと。

"In the Court of the Crimson King" King Crimson 1969

 ビートルズもキンクスもストーンズも好きだったけれど、デビューアルバムが好きかと言われたら、好きだけどそこまでではないと言ってしまうでしょう。ですがクリムゾンは、「デビュー作が一番好き」と言われることの多いアーティストではないでしょうか。#1のMirrorsが完璧。以降は詩がすばらしくて、ファンタジィとの親和性も高いです。クリムゾンの歴史を振り返ると、#1だけが異質なのかもしれません。

"Horses" Patti Smith 1975

 彼女はパンクロックにカテゴライズされることが多いようですが、シーンが重なっているだけで、私は作風はパンクではなく、むしろ、ロックを先鋭化させたもの、あるいは原点回帰したポエトリィ・リーディングだと思っています。実は熱心にカタログを追ったわけではないのですが、これはよく聞きました。ノーベル賞授賞式での「A Hard Rain's A-Gonna Fall」は素晴らしかったです。

"Ramones" Ramones 1976

 ピストルズやダムドやテレヴィジョンよりもこちらの方が好きだったのはなぜなんでしょうか。クラッシュはもはやパンクではなかったし・・・。違いは明確ですが絶対的かと言われればそうではないですし。ライブのような熱量が込められている点に惹かれたのかもしれません。ギターが弾きたくなりますね。

"Café Bleu" The Style Council 1984

 めちゃくちゃおしゃれ。何がおしゃれか言語化が難しいけど、あえていうなら、「ティータイム・ロックンロール」とでもいうことか(どういうこと?)。当時にもし先鋭的なのだとしたら、40年後の今はスタンダード。この変遷はジャズ的ですらありますね。実はメッセージ性も強い。素晴らしい。

"The Stone Roses" The Stone Roses 1989

 説明不要の名盤①。上記はジャケットが隠れているが、ポロック風の作品も見事。イアンがこのジャケットのパーカーを着ていて、めちゃくちゃかっこよかった。

"Rage Against the Machine" Rage Againt the Machine 1992

 #1と#2の並びが完璧。空耳アワー的にもこれ以上ない並びでしたね。演奏がとにかく上手くて手数が多い。心を掴まれるボーカル。メッセージ性。これをパンクと言わずに何を言う? と思っているのですが。

"Is This It" The Strokes 2001

 説明不要の名盤②。メンバーの着ている服がおしゃれでカッコよかったなあ。

"Franz Ferdinand" Franz Ferdinand 2004

 挑発的なバンド名と対照的に、ワルになりきれない真面目さと育ちの良さを感じるアルバム。独特のギターがリズム隊とマッチしていないようでしている感じがクラクラして好きでした。踊るロックの金字塔。

"Whatever People Say I Am, That's What I'm Not" Arctic Monkeys 2006

 説明不要の名盤③。でも最近は、3rdアルバムをよく聞いていたりして、自身の変化・成長を感じられるのも、このバンドのおかげです。

"Inside In/Inside Out" The Kooks 2006

 めちゃくちゃ好きで、Arctic Monkeysの1stの次によく聞いていました。単純に、演奏がうまい。曲がいい。たったそれだけのことだけど、それが一番大事で、それでこんなにも充実できるのかと驚きました。好きな2組が不仲だったのは残念でした。もし仲が良ければ、この先のThe Kooksにも素晴らしいケミストリィがあったのではないか・・・。そんな気がしてなりません。リマスタよりも元々の方がクリアに思えて好きなのは、聴き込んだからでしょうね、きっと。

"Costello Music" The Fratellis 2006

 これはすごかった。ノスタルジックなロックンロールで、「昔こんな曲なかったっけ?」のオンパレード。それだけ耳触りが良くて、両曲揃いでした。ドラムのプレイが好きでしたね。リズム隊のお手本。全曲再現ライブとかやったら号泣すると思います。

"Hats Off to the Buskers" The View 2007

 2006~2007は私にとっての黄金時代ですね。とにかく素晴らしくて、新譜が待ち遠しかった。これは、#2をMTVで見て、「The Strokesっぽいな」と思ってタイトルをメモした記憶があります。今となっては似ていないような気もしますが、やっぱり似ているような気もします。#2と#3と#8がとにかくかっこいい。「バンドやろうぜ!」という勢いのまま生み出された傑作。

"We'll Live and Die in These Towns" The Enemy 2007

 2000年代デビューのバンドの中で、一番「パンク」だなと思いました。それは曲のタイトルや歌詞の切実さからも窺い知れます。巧拙ではなくて「何か言いたいことがある」というのがパンクの原点だとしたら、このアルバムほどふさわしいものはないでしょう。ピストルズよりもメロディアスで、時代が違えば大大大名盤だったでしょう。

"Myths of the Near Future" Klaxons 2007

「なんだかわからないけど凄い!」というものに出会えた経験はそれほどありません。このアルバムは数少ない貴重な経験でした。私の中ではこれがサイケデリックなのかなと思っています。#7が一番わかりやすいかな。なんだかわからないのに聞けるというのは凄い才能だと思います。晩年のピカソと同じベクトルですね。やたらとコーラスが入っているのも点数が高いです。

"Fleet Foxes" Fleet Foxes 2008

 どことなく牧歌的な曲に、美しいコーラスが折り重なって、初めてなんだけど懐かしい気持ちになる、不思議な曲群です。次作のドラマティックさ、それ以降の内省的なものも良いですが、この時期の人生讃歌のようなイメージが合う曲調が好きです。#2は辛い時にお風呂で歌ってデトックスしています。

"The Colouful Life" Cajun Dance Party 2008

 正直なところ、演奏はそれほど上手くないし、歌唱力も取り立てて。でもなぜか気になる。歌いたくなる。それはもう、良いバンド、良い歌の証拠です。1stで終わってしまった儚いバンドでしたが、一つでも作品を残してくれてよかった。

"Vampire Weekend" Vampire Weekend 2008

 クラクソンズと同じ、「なんだかわからないけどすごい!」シリーズですね。これは、一体なんだろう・・・。初期衝動とも違うし、かといって手を抜いているわけでもないし・・・。脱力感を感じる中にも、芯がある、柔軟性の高い楽曲だと思いました。楽器でこんなこともできるという、楽しさを教えてくれます。

"Them Crooked Vultures" Them Crooked Vultures 2009

 言わずとしれたロック界のスーパースターによるスーパーグループ。「プロの遊び」のレベルを超えた名作だと思う。ジョンジーの楽しそうな演奏が聞けて嬉しかったなあ・・・。

"Tourist History" Two Door Cinema Club 2010

 私の音楽遍歴の中で、タワーレコードで出会ったアーティストがいくつかいます。これもその中の一つです。確か試聴したような。Franz Ferdinandをもう少し先鋭化したようなイメージでしょうか。2作目も好きでしたが、メリハリが効きすぎていて落ち着いてしまいました。ジャケットのフォントもかっこよかった。#3の7拍子(というのかな?)は綺麗にまとまっていて力量を感じましたし、#6は不思議な陶酔感がありました。The 1975レベルになる器があったと思うだけに、これからに期待したいです。捨て曲なし。

"What Did You Expect from The Vaccines?" The Vaccines 2011

 この世界において意味深なバンド名になりましたね。タイトルもArctic Monkeysのようで、周囲の評価を気にしないスタンスを表明しています。最初の2曲で決まり。ストレートなロックンロールはこの時代には貴重でした。ロックは短いほどいいんだよ!という気分にさせてくれます。

"Colour of the Trap" Miles Kane 2011

 ソロでのデビュー作なので入れました。歌謡曲っぽい#2から緊迫感のある#7など、とにかく多才で飽きのこないアルバムです。ロックというには狭すぎる気もしますね。どちらかと言うと、当時は参加アーティストの豪華さが話題になっていましたが、それもすべてこの才能に惚れ込んだからに他ならないと思います。

"Jake Bugg" Jake Bugg 2012

 #2がとにかく好きで、ソラで歌えるまでに。私たちの時代のBob Dylanでした。使っているのは結構単純な単語だったりするのですが、不思議と引っかかるフレーズが多いのは、かなり練られたものだからでしょう。弾き語りというスタイルもこの時は新しかったし、何よりこの若さでソロというのが類い稀な才能です。ただ、真骨頂は#6のような曲なのかなと。

"Days Are Gone" HAIM 2013

 どの曲をとっても彼女たちの作品とわかる個性があって、非常に羨ましくなったことを覚えています(音楽なんて作ったこともないのに)。ジャケットも含めて、とにかくかっこいい。メンバーの一人がバックバンドで腕前を鍛えられたことも大きかったかもしれません。素晴らしいデビュー。その後の作品も素晴らしい。

"When We All Fall Asleep, Where Do We Go?" Billie Eillish 2019

 VUCAな時代に、それをそのまま歌に込められることのできる稀有な才能。(心臓の鼓動のような)ベースが前面に出てくる歌も刺激的で、かつ踊れるタイプの曲もある。兄と合わせて素晴らしいチームワークです。R&Bにも聴こえるし、ジャンルの壁を簡単に飛び越えました。このあとしばらくして、いろいろなところでベースの目立つ曲が増えたのには笑ってしまいました。ラナ・デル・レイもビヨンセもそれほど深くあるいはまったく通ってこなかった自分にとって、彼女が歌姫です。#13で、「i」を小文字で表現するのがこんなにかっこいいとは思わなかった。

"Help Ever Hurt Never" 藤井風 2020

 できるだけ情報を削ぎ落としながらも、幕の内弁当みたいなジャンルの多彩・豪華さのある本作が好きです。2ndはポップな、より大衆的な作品が増えて、雰囲気は明るくなったけど、若干バランスが悪くなったかなと。それも本人の指向なら応援したいですし、聞き続けます。一度スタジオもプロデューサも日本から離れて、海外で録音・製作したら、また別のケミストリィが生まれそう。今はシンプルなのが好きなんです。Arctic Monkeysみたいに、時が経って2ndあるいはその先がもっと好きになると予想しています。素晴らしい才能と同じ時代に生きていることに感謝したいですね。

"Wet Leg" Wet Leg 2022

 近年、素晴らしいロックバンドが増えてきました。その中でも最も聞いているのが彼女たちです。これまでのリストを見ると、私の好みは比較的一貫していますね。ストロークス直系ですが、このアルバム以上にさらなる可能性を感じさせる瞬間が、彼女たちのライブを見るとわかります。次作がとても楽しみです。

おわりに

 私の嗜好が明確に出ていて、私は面白かったですね。迷った作品もいくつもあって、例えば宇多田ヒカルは、最新作の方が好きになっていたので入れなかったり、Led ZeppelinはPresenceが一番好きだよなあと思い直したり。整理するのにとても役に立ちました。
 基本的に、大衆の意見をまとめて平均化したリストにはあまり興味がなくて(それでも入門編として聞く参考にすることはよくあります)、個人を知る上では個人が選出したリストが知りたいな、と思います。
 時代が偏ったりしているのは、最も音楽を聴いていた時期と重なるからですね。音楽とか読書とか、ある時期を過ぎると苦痛になるので、今は離れています。数年後、また聞き始めるんだろうなと思いながら。


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