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発達障害とは何か?What are developmental disorders ?


発達障害はカテゴリーの名前であり、疾患名ではない

 発達障害と良く耳にしますが、発達障害と言う疾患名があるわけではありません。自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、学習障害(LD)が発達障害の代表です。発達障害というだけではどのような状態を表しているかはっきりせず、例えば消化器疾患とか神経疾患というように、いくつもの疾患名を合わせた総称なのです。文部科学省の調査で小中学生の8.8%に発達障害の可能性があると推計されています。学校であればどこのクラスにも、社会人になればどこの職場にも発達障害の特性をもった人がいるような、ありふれた特性と言えます。

発達障害と診断される人が増えている

 発達障害の特性をもつ人は昔から多かったのでしょうが、医療者側の知識不足もあり特性がかなり顕著でないと診断はつきませんでした。今では医学的知見が広がり、一般的にも発達障害という言葉が普及してきたことで医療機関を受診し、診断される人が増えています。児童精神科の初診まで1年待ちというところもあるようです。

山はどこからが山なのか? ーグレーゾーンー

 発達障害の診断は白黒はっきりつけられるケースばかりではなく、いわゆるグレーゾーンと呼ばれる場合があります。発達障害の特性の強さが0から10まであるとすると、一昔前までは8,9,10辺りの特性が非常に強い人だけが診断されていました。最近では診断の裾野が広がり、5,6,7辺りの人も診断を受けるケースが出てきました。では、発達障害の特性が0から10までのいくつ以上が診断を受けるのかというと、明確な基準はありません。富士山を思い浮かべた時にどこまでが山なのかという議論と同じです。8合目から10合目など頂上付近は明らかに山です。5合目から7合目も山です。1合目も一応山と言って良いでしょう。ではビルや家々が立ち並ぶ山ではないところと1合目の境界線をはっきり引けるかと言われればどうでしょうか。数センチの差でここまでが山、ここからは山ではないという根拠はどこにもないのです。発達障害の場合も同じで、特性があっても診断がつくかどうか明らかにできないグレーゾーンがどうしてもできてしまいます。これは疾患の有無という概念では捉えられず、発達障害のモデルケースにどれほど似ているかという程度の問題になります。診断がつくかどうかは特性の大きさよりも、今いる環境にどれだけ適応が難しく、苦痛を感じ、社会的に力を発揮できないかによります。環境に適応できていればそもそも医療機関を受診することもないでしょう。

発達障害は治るのか?

 医療機関を受診すれば発達障害が治る!と大きな期待を胸に受診される方がいます。しかし、発達特性自体はなくならず、幼少期から高齢になるまで一貫して続きます。ADHDの多動性・衝動性のように年齢が上がるにつれてあまり目立たなくなることはありますが、基本的な特性は続くものです。受診のメリットとしては、診断がつき、自己理解が進み、特性にあった工夫をしたり配慮を得ることで適応が向上し、生き辛さが解消され、力を発揮しやすくなります。これらの試みと合わせてADHD治療薬を使ったり、発達障害をベースにしたうつ病や不安障害の診断、治療のためにも受診する意義はあります。興奮、いらいら、抑うつ、不安などの症状に対して薬を使うこともあります。社会福祉サービスを利用する上でも診断を求められます。このため、児童精神科だけではなく一般の精神科でも発達障害関連の受診がとても増えています。

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