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相互性の愛で"満たされた"飛行船——夢追翔ファンミーティング『ゆめおの夢まつり』の感想に寄せて

2024年3月3日。
空気が春の色に入れ替わりつつある季節の、抜けるような青空の下。繁華街や動物園・博物館や公園など人通りの多い栄えた地区からは少し外れた、住宅街に近い細い道路沿いにある飛行船シアターにて、夢追翔さんの初のファンミーティングが開催されました。

にじさんじという事務所に所属するタレントのうち、個人のファンクラブを開設されている方は増えてきましたが、ファンミーティングとして単独のイベントを開催されたのは2023年9月に行われた椎名唯華さんに続いて彼が二人目となります。
2022年の時点でもファンクラブの活気がすごい、と他ライバーさんから評されていたこともあった夢追さんですが、こうして一ソロイベントとして抜擢されたのを見るに勢いは冷めるどころか盛り上がり続けているように思います。

今回は、幸いなことに現地でのイベント参加が叶った一ファンの視点から当日の会場の様子やイベントの内容などについて覚え書き程度に綴っていけたらと思います。イベント当日から日が経ったのもあり、映像として残るかどうかは現時点ではわからない(個人的にはオリジナル曲歌唱部分以外はほぼ望み薄かな……と思っています)ので、有料放送分の内容もいくつか文章レポとして起こしております。問題があれば該当部分は削除いたします。


前置きはこのくらいにして、当日の会場の様子から思い出していきましょう。

〇物販開始時間~寄せ書きフラッグについて

(終演後に撮影したフラッグ。多様な色で敷き詰められたメッセージが凄い)

AM10時。青空の下で会場に向かった頃にはすでに結構な人数の方が並んでいました。みなさん一様に赤、黒、白を取り入れた思い思いの格好にイベントのグッズやにじぱぺ、2月に発売したばかりのにじぬいを連れてらっしゃって、ここにいるのがみんな夢追さんのファンなんだな……と感慨深くなったことを覚えています。この感情はイベント会場の座席に着いた時により強く感じたのですがこちらは余談。
ちなみに自分は事前物販で欲しいものを購入し終えていたので、イベント前々日にe+経由で届いたメールに記載のあったメッセージフラッグのために訪れました。新曲『虹の在り処』のインストが流れ続けるホールエントランスに設置されていたフラッグは、10時すぎ時点ではまだ片手程の人数分のメッセージしかなく、これどのくらいのサイズ感で書いていいやつ?とドキドキしつつ真っさらなフラッグに友人とともに3行ほどのメッセージを書いたのですが……。終演後に見た時にはすごい量のメッセージでいっぱいになっていて、しかも大体が小さな文字でぎゅっと言葉を詰められていて、ファンから彼への愛でいっぱいの旗に圧倒されてしまいました。
こちらのフラッグ、案内メールにも書かれていましたが運営さんから夢追さんへのサプライズという時点で彼への運営さんからの愛と言いますか、主役を最大限喜ばせようという心意気が見えてじんとしましたね。イベント中のご本人の驚かれた様子からも本当に秘密にできていたみたいでファンと運営さんの結束力にも拍手でした。サプライズは隠し通してこそのサプライズ……!
サプライズ慣れしていないことを以前話されていた彼宛だからこそ、一欠片も情報を漏らさずにおいて驚かせよう、それも意識して喜んで見せたりする必要もないくらい盛大で、かつ形に残る物を贈ろうという配慮も良かったなぁと勝手ながら思いました。

◯イベントホールの様子

(公演中の撮影可能時間に撮ったもの。事実上の最後列からでこのくらいの距離感)

さて、時間を送って開演前に得られた情報などの纏めも簡単にしておきます。
飛行船シアターのホールは一階席と二階席に分かれており、一階席は中央後ろ三列と上手側後列二列を機材席として使用(カメラは後方とステージ横の二台、本当は後ろ三列は全て機材席にする予定だったのかもしれませんね)。なので、総観客数としては470人とちょっとくらいでしょうか。
うち120名ほどがプレミアムチケット(前方席+終演後1on1トーク)だったみたいで、需要の高さに震えるなどしました。そもそもファンクラブのプレミアム会員が多そうですしね(会報が読みたいファンが結構な数いる勝手な印象、過去の楽曲解釈をデジタルでもいいからアーカイブ化してほしい層もいるんじゃないでしょうか)(これは脱線です)。
ステージ自体は舞台に沿った横長の空間と上部スクリーンで、オンライン配信の映像はすべて上部スクリーンの映像だったのかなと思っています。全景が見えた方が楽しめる瞬間も多かったですが、こればっかりはステージ規模と搬入機材量の関係上仕方なかったのでしょうね。オリジナル曲のダンスは多少の白飛びと客席が映っていても良いので定点映像を欲してしまう感じでした。記憶って消えていくもので……。

◯イベント雑感

開演前まででやたら長く覚え書きを綴ってしまったので、いい加減本編の感想にいきましょうか。
イベント全体の雑感としては、振り返り配信でも話されていましたが、「普段の配信や彼が届けてくれるコンテンツの魅力を会場全体で共有しながら相互に満喫した」ような感じでした。
オリジナル曲、雑談、司会、マスコッツなどその他もろもろ……安心感もありつつ手放しで笑ったり歌やお話をしみじみ聞いたりなど。ご本人の振り返り配信でも仰っていましたが、本当に全体を通して「配信の延長」であるような構成をされたコーナー群(大枠は運営主導で考案されたものだったようです)もたいへん楽しかったので、印象に残った点も含めて書き連ねていきたいと思います。

大枠としては以下になります。

1.歌唱『ミタサレナイトガール』
2.スプラウトーク!(事前募集・会場の質問に答えるコーナー)
3.ゆめ問いかける!(四択クイズコーナー)
4.みんなのゆめうた(即興作詞で作曲しようコーナー)
5.ゆめおいカラオケる!(事前アンケートから選んだ3曲を歌うカラオケコーナー)
 セトリ:1.ダーリン/2.pride/3.僕が死のうと思ったのは
6.写真撮影
7.歌唱『人より上手に』
終幕

では、一から順に振り返っていきましょう。

1.歌唱『ミタサレナイトガール』

(噛み合わせるような腕の振りとばっちり合ったリリックモーション)

1st Album『絵空事に生きる』のうち、今まで一度も生歌唱で披露されることがなかったこの曲。彼自身としては歌唱難易度が高く忌避していたものだったそうですが、後述のカラオケコーナーのアンケートにて、全体で2位、オリジナル曲の中でも最も希望が多かったことも後押しとなり、今回のイベントの幕開けの選曲に至ったとのことでした。
演出としては、シンプルな黒の背景ステージで共通衣装を身に纏った夢追さん1人が立ち、上部のスクリーン(+配信)では魅力的なリリックモーションが歌唱を彩るというものです。
歌唱難易度について触れましたが、生歌としては圧巻。サビで連続する高音域への乱高下もブレることなく歌い上げられていました。また、パフォーマンスは過去のライブから分類するなら『FANTASIA』での『お揃いの地獄だね』、『にじフェス2024前夜祭』での『人間じゃないよな』などをはじめとする「劇場型」よりも『JM梅田MUSIC Fes』の『オリジナリティ欠乏症』などのライブパフォーマンスの一環としての「ダンス型」と表現するのが近しい物でした。この曲の歌詞が女性、とりわけ自己承認欲求と愛に飢え病んでいる若い女性の姿を歌っているのもあり、立ち膝からの割り座や腰や腕の細かい揺れなど女性的とされる仕草やポーズ、そのほか滑らかで曲線的、艶かしさを感じる振り付けが多く組み込まれていたのも特徴的でした。ステージを駆け回って大きく使うのではなく、その場での上下動や細かな重心移動を主とした使い方が多く、ジャズダンスに近い印象も受けましたね。ただ、ダンスに終始するのではなく、2番Aメロではその場に膝を立てて座ってみせたり、間奏では後ろで指を絡めて拗ねたように小さく宙を蹴ってみせたりと、緩急も上手く付けられていてイベントの初手で観客の心をグッと掴む目の離せなさを作っていたように思います。

(サビの歌詞に合わせて二つに割れたぼろぼろのハート)

また、リリックモーションも凝られていて、手書きの白いフレームを基本に、中でも檻や鎖などの囚われのモチーフ、割れたビビットピンクのハートや「噛み跡」という歌詞に則って牙が噛み合わされるシーンが印象的でした。振り付けはご自身で考えられていたとのことでしたが、こちらもご自身でプロデュースされたのでしょうか。
全ての要素を合わせて見ても、この曲を熱望していたファンを唸らせる完成度の高いステージがファンミーティングのトップバッターを見事に飾っていたように思います。

2.スプラウトーク!

(ジョニーの向こうに見える手と頭は……)

一瞬で空気を作った歌唱から一転。聞き馴染んだ明るい声色で会場の観客やコメントと戯れ「遊ぶのがメイン? そうですよ! 単独イベントですよ、何してもいいの」と笑顔で語ったオープニングトークを挟んだあとに移行したこちらのコーナー。
共通衣装から普段のパーカーに歯や着替えした夢追さんが連れてきた(持ってきた)特別ゲストとして「もやしの妖精ジョニー」が事前に募集した質問に答える、という募集段階では正直予想のできなかった展開に思わず笑ってしまいました。ステージ中央に置かれた教卓めいた台の後ろに夢追さんが座っているのがほとんど見えている状態で進む、なんなら途中で台の横に出てきて水分補給をするといった「にじさんじマスコッツ」の3D配信で見たような構図で笑いを誘っていましたね。

(ジョニーを置いて水を取りに手を伸ばす夢追さん)

途中からは会場の観客からも質問を募った中では、「悪意なく責めてくる上司との上手い付き合い方」という質問に途中までジョニーとして喋ったあと、台に肘をついて顔を見せながら「もうちょっと言い方を考えてくれたらいいのにねぇ」と夢追さんとして真摯に考えて見せる場面があったり。また、「ジョニーから見た夢追くんのおすすめの曲」に「僕あんまりゆめおくんの曲聞かないんだけど、いや嘘で、制作期間中ずっと流れてるからできたころには満足してるんだよね」「僕がMVに出てるから『青空を睨む』かな」と真面目な内容には少し冗談めかして答えてみせたり。「他の野菜の妖精はいますか」という質問に「お野菜にはみんな妖精がいてね。僕はかぼちゃの妖精と話したことがあるんだけど、ゆめおくんがかぼちゃが嫌いだから追い出しちゃったんだよね。ただもし野菜の声が聞こえるようになったら病院に行ってほしい」とよく回るベラで喋り続けるなど、どの質問の内容も答えも普段の彼の雑談配信で聞いたことのあるような空気感で、思わず笑ってしまった方も多かったのではないでしょうか。

3.ゆめ問いかける!(四択クイズコーナー)

(四択クイズ、最終問題の答えは……)

ジョニーとともに卓も回収され、ステージ上に一人立つ夢追さんが回し始めた次のコーナーは「にじクイ」などを想起させる四択のクイズコーナー。会場の観客はペンライト等で、配信ではコメントで参加できるよう工夫されたこちらのコーナーは、イベント当日に基づいたひな祭りに関する知識問題、夢追さんの配信に関する問題などの真面目なものから「夢追が昨日食べたものは?」に「回答はこの中にはありません」といった理不尽クイズまでを含めたものでした。
たびたび公式番組やライバー企画の番組で彼が担当されているMC業をファンが体感できる、と表現するとある種のファンサービスとも言えるものかもしれません。
配信日にまつわる問題で正解者が多く「これ覚えてたの?」と純粋に驚いていたり、理不尽クイズに飛んでくるブーイングにうきうきで笑っていたりと、こちらも一つ前のコーナーと違う形でファンとの交流を楽しまれている姿が印象的でした。

4.みんなのゆめうた 出張版(即興作詞で作曲しようコーナー)

(作曲ソフトとトンチキなワードリストを自在(?)に操って収録をしていく夢追さん)

暗転から戻るとステージ上に映し出されたのはどこかで見慣れた廃墟……もとい、夢追さんの住まれているライブハウス。ノートパソコンとマイクを前にデスクに座る夢追さんが臨む次のコーナーは、デビュー初期に行われていた募集した7文字以内のワードを組み込んで即興で歌を作るというものです。
イベント前夜に作られた(!?)というバックトラックを元に、事前募集および会場で募ったワードをその場で作ったメロディに当てはめていく作業を30分強で行う、という彼の技術力と発想力をいかんなく発揮、いや贅沢に無駄遣いをしたこちらのコーナー。
実際の作曲風景が生で見られるVSSW夢追翔としての本領発揮のコーナーでしたが、事前募集と会場・コメントから集まるやや頓智気なワードであったり、彼自身悪ふざけと自覚しつつそれらを改変して組み立てていく様が笑いを誘うという不思議な光景でもありました。「こういう風に曲作ってると思うかもしれないけど、誤解だからね?」という彼の言葉ももっともです。
即興で考えたメロディを口ずさむ過程では足先や全身でリズムを取る姿が見られたり、その場で歌い上げて録音をするという普段なら公開されない過程の中で「もうちょっと上手く歌おう?」と言って録り直すといったこだわりが見えたり。また、先までのコーナーでは手を挙げてもらっても拾えていなかった二階席にもマイクを回してもらって参加を促したり、という可能な限りすべての人を取りこぼさないようにする配慮が伺える場面も彼らしく好ましかったです。
完成した曲(『ギルティ上野』)がどこかで公開されることは……ないかもしれませんが、2024年のひな祭りの忘れられない思い出の一つとして今日この日を観測した人たちの中に残ったのはきっと間違いないでしょう。

5.ゆめおいカラオケる(事前アンケートから選んだ3曲を歌うカラオケコーナー)

〇セトリ
1.ダーリン(須田景凪)
2.pride(速水ヒロ)
3.僕が死のうと思ったのは(amazarashi))

廃墟から真反対の明るいカラオケルームに移動し、緩やかなトークから始まったのは事前アンケートから選ばれた楽曲を歌唱する、ある種「カラオケ歌枠」に当たるコーナー。

(こんなに広くて収容人数の多いカラオケルームは初めてです)

観客もその場で立ち上がってペンライトを振って鑑賞できるよう声かけもあり、ライブめいてはいますが、その場でデンモクを操作して入力する姿がカラオケそのもので親しみが残る様子でした。
ただ、歌唱がはじまると空気は一変。曲名が出る度に歓声というか悲鳴が上がっていたのはそれだけ彼の歌声で聴きたいと熱望されていた楽曲が多かったからでしょう。
一曲目の『ダーリン』は投票数が一位だったとのこと。実を言うと筆者も投票してました。失恋曲が似合うというのは褒め言葉にあたるのか難しいところですが、彼のカバーが聴いてみたかったので個人的にもとても嬉しかったですね。
「みなさんプリティーリズムって知ってますか? 知ってますよね! いやリクエストがありましてね、僕の趣味に合わせてくれたのかもしれませんけど、投票をもらったという大義名分で歌わせていただきますね」との前置きを挟んで歌われたのは二曲目の『pride』。たびたび配信内でも話されていた作品からの選曲というのもあり、間奏の台詞まで完璧に網羅されており、真剣かつ楽しそうに歌われていてとても熱かったです。
コーナーの最後を締めるバラードと銘打って歌われたのは『僕が死のうと思ったのは』。曲名が出たとき、前の二曲とはまた違った悲鳴が上がったのを覚えています。
『NIJIROCK NEXTBEAT』では『フィロソフィー』をカバーされたこともありましたが、それよりもっと遡ってデビュー初期にも歌枠で歌われていたことがあったこの曲。こちらの楽曲は彼自身の楽曲とも共通する「人間の弱さ」「満たされない思い」などを歌っている曲でもあり、歌唱力や表現力がまた一段と伸びあがった今の彼の声で歌い上げられたことに染み入る思いがあった方もいたと思います。

6.写真撮影

(ステージで急に自発的にプランクを始めたのはたぶん後にも先にも彼だけかも。いやなんで?)

多様な側面からのファンの要望に応えた各コーナーを終え、イベントも終盤に差し掛かってきました。
明るいカラオケルームからイベント開始直後の黒背景に戻り、「めちゃくちゃ楽しかった、もう終わりか! 始まったらあっという間だね、楽しさがもう一時間後くらいに追いついてきそう」という語り口から続いて「このイベントにきた皆さんと思い出を残せれば」という心遣いから設けられた時間。観客席からスマートフォンでの撮影許可というややも珍しい時間では指ハートなどのファンからの無茶ぶりにも答えてくださっていたのですが、最後にはなぜか自分からプランクをし始めるなど冷静に考えなくてもよくわからない空間が出来上がっていました。

(想定外のサプライズプレゼントに思わず膝をついて覗き込む夢追さん)

ちなみに、前述の寄せ書きフラッグが掲げられたのはこのコーナーの最後。突然のサプライズに言葉を失いながらも膝をついて目を凝らし、フラッグを一頻り眺められてから「サプライズ苦手なんですよ、ええ、すごい、ありがとうございます」と動揺しつつも「でも今年の夢追はみんなの声援を受け取るって決めたから」と、しっかりと言葉にされた感謝に一緒に感激したファンの方も少なからずいたと思います。
その後話されていた「僕がみんなをおちょくったり遊んだり、歌ったりして楽しませようってファンミーティングだったんだけど。なんか相互的だったね。すごいなんかみんな返してくれて……ありがとうございます。それ以上に返せるよう頑張っていきたいと思います」というイベント全体の締めの感想もあわせてみれば、今回のイベントがファンはもちろん、ご本人にとっても想定以上に満足のいくものになったと言っていいのではないでしょうか。

7.歌唱『人より上手に』

(笑顔で大きく手を振りながら歌い上げるED)

「夢追翔が企画を閉じると言えばこの曲」として最後に歌われたのがこちらの曲。実際に普段の配信のエンディングとして流れていることもあり、イベントも終わりという実感を抱かせてくれる粋な選曲だったように思います。
MVを想起させる手書きのチューリップが咲いたフレームと笑顔で手を振られる姿から始まったこの曲は、寂しくも温かい気持ちを抱かせてくれるものでした。
演出としては、冒頭の『ミタサレナイトガール』と同様にリリックモーションを用いつつも、こちらの曲ではダンスめいた振り付けは少なく、歌詞に合わせた身振り手振りやMVを想起させる足踏みなどが多かったように思います。前述の分類で言えば『劇場型』に近いかもしれませんが、間奏ではステージをゆっくり左右に歩きつつ、途中で屈んで手前の席、背伸びして二階席と会場いっぱいに向けて笑顔で手を振られていたりと自由にライブを楽しまれていて、その日その場所その空間を満喫する『ライブ型』と表現した方が適切かもしれませんね。芯を持った歌声をそのまま体現するような真っすぐな眼差しや、これまで多様な道を歩んできた背中が本当に素敵で、この曲をリリースされた当時と比べるとこの曲が、この詩が持つ意味も少しずつ変わりつつあるのかな、と勝手ながら思うなどしました。

終幕

ここまででステージの全工程が終了。本当に最後の締めとして「またこういう機会が作れるよう活動頑張っていきますので何卒よろしくお願いします」と話しつつ深々と頭を下げたあと、最後まで手を振りながらステージを去った彼の笑顔に自然と拍手が湧いたのを覚えています。
限られた座席の関係で会場に来られなかった方々のことも含め、イベントを楽しんだすべての方へ言葉をかけ続けるのは、彼の人柄と心配りそのものの表れにほかありません。
終演後の一対一トーク(参加した友人によると事前告知もなく共通衣装を纏ってらしたそうで悲鳴が上がったとか)もトラブルがあったりいろいろ大変だったようですが、最後の一人までずっとお話しされていたようで。ステージだけでも全力に取り組まれているでしょうに、そこから2時間ほども笑顔を絶やさないのは並大抵のことではないでしょう。
ライブ以外の時間は全てライブのための準備期間だと思っている、と話されていた通り、体力が原因でパフォーマンスが落ちることがないように、立ち振る舞いをより理想に近づけるため週四でジムに通い食事制限も続け……と長らく努力もされていた成果、と言葉にするのは簡単ですが。ライブ・イベントのたびに見違えるように変化する彼が次にどんなものを見せてくれるのか、と身勝手にわくわくしてしまいます。

努力という観点から見ると、今回のファンミーティングもそもそもが夢追さんが日々ファンクラブのコンテンツ更新継続を頑張られていることが運営側から評価されたことで提案に至ったそうですね。ファンミーティングという催しを行っても成功が見込まれるほどコミュニティとしても盛り上がっていると見なされたのは、彼自身がファンクラブという媒体を通したファン交流を楽しみながら継続されていたからでしょうし、その彼の思いにファンが熱意を持って応えてきたからでしょう。
個人的な話ですが、私はひとつのファンコミュニティに属することに苦手意識があるので交流されているのを遠巻きに眺めるくらいの距離感にいたのですが、今回のイベント前後でも周囲の迷惑にならないようにと気を払いながらファン同士が交流されている場面を見かけました。ある程度の統率が取れている集団が自然形成されたのは彼の人格や気遣いをファンが見てきたから、という側面もあるのかもしれませんね。

おわりに

ずいぶん長々と書き連ねてまいりましたが、なんとこれを纏めているのは現在6月です。イベントからどころか、メモを文章に起こしはじめてからもう3か月も経ってることに驚きを隠せません。仔細が薄くなりつつあるのをなんとか繋ぎ止めようと必死な一オタクの文章にここまでお付き合いくださありがとうございます。
感想を纏めれば纏めるほど、今回のファンミーティングがファンはもちろん、彼自身も大満足のものとして終わったのだなと思えます。あれからたびたび配信上で「(自分の)ファンミーティングが楽しかったから違うかたちでもまたやりたい」と口にされる場面が多く、それだけ彼の心に大きな存在、大事な記憶として刻まれたことが伺えます。きっと、この先何度ライブやイベントを重ねたとしても、今回のファンミーティングのことを彼はずっと忘れないのだろうな、と勝手ながら思います。それぞれに優劣はないとしても、ひとつ独立した思い出として残ったとしたら、このイベントに関わったすべての人にとって、それ以上に嬉しいことはないでしょう。

ここからは本当に個人的な感想を手短に綴って、今回のレポの締めとしたいと思います。
今回のイベント中、サプライズを貰った直後。彼から聴かれた「相互性の愛だった」という表現が、自分にはとても印象に残っています。
いつかの別のnoteでも書いたような、書いていないような気もするのですが、”夢追翔”さんはもともと、自分自身に自信がない、著しく自己肯定感が低い(自分の作品は除く)ひとでした。三つ子の魂百までなどと昔から言われはしますが、それでもここ数年で少しずつ、一歩ずつ彼は変わられたように感じています。
具体的とも言えませんが、もう少し具体的に言うなら、彼自身の作品や配信、諸所の技術等に対する賞賛を疑わないことから始まって、最終的には「自分に自信が持てない自分」を否定せず受け入れるという一種の自己肯定に辿り着いたというか。
さらに曖昧に話すなら、その自己肯定の先で、自分がこれまでに貰ってきた声援、自分自身へと向け続けられてきた多様な愛を自覚して、さらにそれを受け止める覚悟を持った。そして、その変化を言葉にしても良いと思ったことの表れが「今年の夢追はみんなの声援を受け取るって決めたから」と不意に零れた言葉なのかなと思っています。
少し脱線しましたが、「相互性の愛」という言葉に立ち返ると、今回のファンミーティングそのものが日々の配信活動を主とした自分自身を見て、見止めて、それぞれの形で応援してくれている人々への彼なりの恩返し、笑わせたりじんとさせたり、見たかったであろうものを届けるというかたちで与えられた分以上の”愛”を返そうという思惑がひとつあったように思います。ただ、実際には、自分が返礼するだけじゃあなく、想定を超えたかたちでさらにたくさんの愛の形が返ってきた。つまるところ双方が双方に愛を向け合った、贈り合ったあたたかな空間が、あの日あそこに在ったのだと。それを象徴する表現として「相互性の愛」という言葉があの日の記憶とともに今なお、自分の胸の内に残ったのかもしれません。

少しずつ6月の終わり、彼がデビューしてから6回目の誕生日が近づいています。1年弱の作業期間を終えてなお収録等々で忙しくされているようですが、のびのびと好きなことを楽しんで配信される時間も確保できつつあるように思えます。
きっとこれから、時期はわからずとも彼の魂の一端たる作品たちに触れさせてもらえる機会が来ることでしょう。それがとても楽しみなのはもちろん、また新たな節目を越えた先で彼がどんな姿を見せてくれるのか。わくわくしながら、夏の入口を待ちたいと思います。
このたびは楽しいイベントを、本当にありがとうございました。また近い形で、もしくはもっと違うかたちで、関わる全ての人にとって大事な思い出となるような空間に、時間に出会えることができたらとても嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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