記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

🎬ブラック・レイン 感想

1989年、公開後間もなく鑑賞。
その時は松田優作の鬼気迫る演技に圧倒され、これから世界で活躍するであろう松田優作の未来に思いを馳せた。
しかし数日後、松田は急逝(ファンにとっては急な出来事だった)。
このあまりに無念な事態ゆえに『ブラック・レイン』は自分にとってはいつまでも松田優作の遺作であり、ソフトで鑑賞するときも松田の登場シーンを中心に観る習慣がついてしまっていたように思う。

今回34年を経て「午前十時の映画祭」の大スクリーンでじっくり鑑賞してみて、松田優作の演技はもちろん凄まじいのだが、全く今までとは違うテイストの感想を持つことができた。

それは、実はたくさんの人はすでに感じていることなのだが、ニック(マイケル・ダグラス)とマサこと松本(高倉健)の関係性の熱さ。
そもそもこの映画が描きたかったのは、全く文化背景の違う二人の刑事が仲間の死という共通の痛みをきっかけに人間として友情と言っていい関係性を持ち、お互いの人生をも変えていくところだったのだが、それにあらためて気付くことができた。

何度も書いてしまうが、公開当時は松田の演技に圧倒されて高倉健は主役級なのにあまり印象に残らなかった。
しかし今回再鑑賞すると、高倉健がリドリー・スコットといういつもとは違う監督に演出されながらも高倉健らしさを失わず、松本という一人のやさしく正義感の強い刑事をしっかり地に足のついたキャラクターとして演じ切っていることがすばらしかった。
高倉健が楽しそうにレイ・チャールズを歌うシーンは珍しく、日本映画ではたぶん見たことがなくて初見ではちょっと驚いてしまったのだが、とても楽しそうに高倉健がはしゃいでいることがしっかりその後のチャーリー(アンディ・ガルシア)の出来事の伏線となっていて悲劇性を強くしている。
また、親友を亡くしたニックに対する感情が日本人らしく慎ましいのだが内面に熱さを持って演じられるのはやはり高倉健ならではだったか、とも思った。

松本が最後までニックに振り回されっぱなしだったように長いこと思っていたのは間違いで、途中からニックという人物に共感し影響を受け、真面目な組織人間の松本が日本の社会規範から友情のために飛び出していくところこそ最大の見どころだった。
ただ松本はニックが汚職刑事であることを告白されていることから、ニックに全幅の信頼を置くことができず、そんなニックとの関係に最後まで歯痒さを感じているところもうまく演じられている。

そして忘れられないラストの空港での「ニックさん!」のシーン。
高倉健らしい演技がしっかり顔を出し、ニックと松本の本当の信頼関係が生まれる名場面にはあらためて胸が熱くなった。

リドリー・スコットのフィルモグラフィーとしては初期作らしい雰囲気で『エイリアン』や『ブレード・ランナー』のテイストに近いシーンづくりとなっていて、トンデモ日本描写もあるのだが、異文化間で生まれる友情と信頼関係を誠実に描いた映画としてやはり忘れてはいけない作品になっている。

映画には俳優を観るという楽しみ方があると思うが、この映画は間違いなく俳優に心酔するための映画だと思う。

若山富三郎も強烈な印象を残しているし、神山繁、内田裕也も出演していて、今考えると日本側キャストだけでもすごい作品なのは間違いない。

最後に佐藤を警察署に連行した場面…高倉健、松田優作、マイケル・ダグラスが横一列に並んでいるという、もう二度と撮ることのできないショットを大画面で再び見られただけで込み上げるものがあった。

この機会にぜひご鑑賞ください。

#映画感想文
#映画鑑賞記録
#ネタバレ
#映画好きと繋がりたい
#映画好きな人と繋がりたい
#ブラックレイン
#午前十時の映画祭

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?