デッカード

映画鑑賞が趣味の紳士です。 鑑賞した映画の感想を書いていきます。 頭の体操のつもりで映…

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映画鑑賞が趣味の紳士です。 鑑賞した映画の感想を書いていきます。 頭の体操のつもりで映画を観たらすぐ感想を書くようにしていますので、的外れだったり独りよがりな感想もあるかもしれませんが、記録として書いています。

最近の記事

🎬PERFECT DAYS 感想

東京でトイレの清掃員をする一人の男性の日常を描く。 なんと濃密な2時間4分。 最初、毎日淡々とルーティンをこなしトイレ清掃に出かける主人公の平山の姿を延々と見せられ、いわゆる「退屈な映画か?」と懸念させますが、映画は完全にそんな予想を裏切ります。 まず前半は「平山」という人物像についてどういう人物なのかをとにかく想像させます。 トイレ清掃員という仕事をしながらも、かなりインテリであることが匂わされる平山。 トイレ清掃員の方を決して差別しているわけではないつもりなので、

    • 個人的 2024年上半期 鑑賞映画ベスト10 (新旧問わず観た映画から)

      次点は泣きの2本で ベスト10 (次点は泣きの2本です…) 1 夜明けのすべて 2 キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン 3 オッペンハイマー 4 落下の解剖学 5 関心領域 6 アメリカン・フィクション 7 ミッシング 8 デューン 砂の惑星 PART2 9 福田村事件 10 ゴジラ−1.0/C 次点 aftersun/アフターサン 次点 せかいのおきく 今年の上半期は健康上やいろいろな理由で鑑賞本数は一気に失速していますが、映画としてはオールタイムベストに入るよう

      • 🎬機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 感想

        テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の正統な続編。 DESTINYから20年も経ってしまっての鑑賞なので、かなり忘れている設定などもありましたが観ているうちに意外と思い出せました。 DESTINYのラスボス・デュランダル議長の提唱した「ディスティニー・プラン」。 「ディスティニー・プラン」も忘れていたのは申し訳なかったのですが、世界を"アコード"という新たな超人類で支配しようと暗躍しているデュランダルの再来といえるファウンデーション王国の陰謀でだんだん

        • 🎬コンクリート・ユートピア 感想

          ※2,000字になりました。 世界的な地盤隆起による災害の後、ソウル市内で唯一崩壊を免れたマンションでの住民たちのサバイバル。 この映画がデザスター映画であり、それに続くサバイバルを描きながら、実は「独裁国家」の成立と全体主義が支配していく過程を克明に描いていることは観ている人にはすぐにわかります。 特にイ・ビョンホンという俳優の持つカリスマ的な個性は、当初朴訥とした存在なのにどんどんカリスマ性を帯びた支配者になっていく、しかも内面に暴力的凶暴性を持つ"ヨンタク"の姿に

        🎬PERFECT DAYS 感想

          🎬枯れ葉 感想

          ※2,200字です。 フィンランド、ヘルシンキに暮らす、もう若くはない男女が少しずつ近づいていく姿を描く。 お恥ずかしいのですが、私はアキ・カウリスマキ監督作品を観るのは本作が初めてです。 "作家性が強い"監督と言われている人だけに、自分の感性と合わなかったらトコトン合わないだろうなーと一抹の不安も感じながら鑑賞しました。 (ある方がXでポストされていましたが、"作家性"という言葉には観る側に創作者への先入観を植え付ける観る側の想像の自由度を制限するニュアンスが暗に感じら

          🎬枯れ葉 感想

          🎬関心領域 感想

          ※短めにするようがんばりましたが、2,100字になりました… ごめんなさい ナチスドイツ時代。アウシュビッツ強制収容所の隣に住む家族の平凡な生活を淡々と描く。 ホロコーストの"ある"側面。 映画の主人公はアウシュビッツ強制収容所の所長だったルドルフ・ヘス(1987年に刑務所で自殺したナチス高官のヘスとは別人)の家族の生活を追っていきます。 妻のへートヴィッヒ(ザンドラ・ヒュラー)が地元ポーランド人のメイドたちにも横柄な態度を取ったり、所長の妻として当然知っていたであろう

          🎬関心領域 感想

          🎬ミッシング 感想

          ※6,000字になりました. もう自分の映画鑑賞記録、自己満足です。 6歳の娘が行方不明になってしまった夫婦とそれを追うテレビ報道記者の姿を描く。 物語は映画のA面として沙緒里と豊という娘が行方不明になってしまった夫婦のことと、映画のB面としてテレビ局の砂田のことが描かれています。 鑑賞後この二つの物語はそれぞれにボリュームがあり常に並行して描かれていることから、双方について描きたいものがある作り手の意図を感じましたが、最終的には現代社会の縮図としてクロスオーバーする仕組

          🎬ミッシング 感想

          🎬aftersun/アフターサン 感想

          ※3,600字になりました。 20年前、トルコでの旅行を楽しむスコットランド人の父と娘の何気ない旅。 とにかくラストの切なさにあふれた余韻が強く印象に残る映画でした。 しかし正直に言うと、とてもわかりにくい映画であるようにも思います。 父娘の旅の様子は淡々と描かれていて、特にこれといった事件は起こりません。 その映画としての描写に二人が録画したホームビデオの映像が挟まれます。 この映画の描写を絶賛する感想も少なくありませんが、それはおそらくラストを見て複数回鑑賞した方

          🎬aftersun/アフターサン 感想

          🎬アステロイド・シティ 感想

          ※3,400字になりました。 アメリカの砂漠の町「アステロイド・シティ」を舞台に繰り広げられる群像劇。 映画はエドワード・ノートン演じる脚本家が書いたお芝居の世界とその舞台裏で構成され、お芝居の世界はカラーで、舞台裏はモノクロで描かれています。 さらに観客は舞台裏のその外側であるテレビ番組として作品を見ているという三重構造になっているので、ときどきナレーターが現れいろいろなコメントを挟みます。 お芝居である架空のクレーターのある砂漠の田舎町「アステロイド・シティ」を描く

          🎬アステロイド・シティ 感想

          🎬ほかげ 感想

          ※2,200字になりました。 戦後間もない日本を生きる人々の、消すことのできない戦争の記憶を描く。 映画の登場人物たちには名前がありません。 森山未來が演じるテキ屋の男が物語の必然性でかろうじて自身の名前を告げますが、それ以外はみんな名無しです。 このことから、この映画が戦後間もなくを生きた名もなきすべての人々の物語であることがうかがえます。 映画は居酒屋の女と戦災孤児の少年が出会うことから始まります。 前半は女と少年がいる居酒屋だけのワンシチュエーションで、そこに復

          🎬ほかげ 感想

          🎬哀れなるものたち 感想

          ※また長くなりました。 2,900字 読んでいただけたら、うれしいです。 また解釈が違ってたら、ごめんなさい。 胎児の脳を移植され胎児の経験値しかない、死から生還した「人造人間」の女性・ベラの旅を描く。 独特の様式美と音楽、登場人物など、不思議な世界観の中で、人にとっての「人格形成とは?」を問いかける物語が繰り広げられます。 様式美を言うなら、ベラがダンカンと旅する世界はすべての描写が夢か幻のようで、そこには常に不安定な感覚が付きまといます。 ベラのファッションがその

          🎬哀れなるものたち 感想

          🎬コット、はじまりの夏 感想

          おとなしく無口な少女・コットが母親の親戚夫妻と暮らすひと夏の忘れられない日々。 コットはおとなしく無口なため、両親など大人からはとらえどころのない少女だと思われています。 コットには他の子どもたちと比べると成長の遅れが見られ、もしかしたら「発達障害」の一つの姿なのかもしれません。 物語はそんなコットの視線で大人たちを中心とした他者を描いています。 コットの実の両親、特に父親には粗野で自堕落な側面があるのは明らかで、母もそんな夫にイライラばかりしつつ出産を控えています。 姉

          🎬コット、はじまりの夏 感想

          🎬グランツーリスモ 感想

          レーシング・シミュレーション・ゲーム「グランツーリスモ」のプレイヤーが、現実のレーシング・ドライバーになっていく実話。 そもそもゲームの「グランツーリスモ」が、実際のカーレースを想定したシミュレーターだったことは初めて知りました。 開発者の山内を演じる平岳大さんが、ドラマに接するパートは少ないですが重厚で印象的でした。 ゲームプレイヤー(シムレーサー)だったヤンが現実の世界でレーサーとして成長していく姿が描かれます。 "実話"というベースがなければ荒唐無稽と一蹴されそうな

          🎬グランツーリスモ 感想

          🎬荒野にて 感想

          15才の少年チャーリーと足を痛めた競馬馬のピートの荒野での旅。 行き場のないチャーリーの目から見た、それこそ行き場のない大人たちの姿を描く。 小さい頃は決して裕福ではなくてもおそらく幸せに暮らしていたチャーリー。 父の突然の死とかわいがっていた競馬馬ピートが売られる(おそらく殺される)ことをきっかけに、チャーリーはピートを連れて旅に出ます。 チャーリーが旅で出会うのは、みんな"行き場のない"大人たちでした。 そもそもチャーリーの父こそが、決して豊かとは言えない生活を送って

          🎬荒野にて 感想

          🎬カラオケ行こ! 感想

          合唱部の中学生・聡実は突然の出会いでヤクザの狂児にカラオケを教えることに。 中学生の聡実は、部活のコンクールでの成績や人間関係、変声期に悩んでるいる本当にどこにでもいる普通の中学生です。 そんな聡実が狂児というヤクザにカラオケボックスで歌を教える…という唐突な物語の始まり方に、狂児の組のカラオケ大会での屈辱的な罰則があるという、一見ヘンな理由があるのですが、意外とすんなり入っていけました。 決して見た目もいかつくはない狂児ですが、態度の端々にはその業界の人であることを匂わ

          🎬カラオケ行こ! 感想

          🎬オッペンハイマー 独特目線のネタバレ感想(18,000字)

          ※この感想はあくまで映画を観て個人的に感じたことを素直に書いたものです。 1回鑑賞しただけの感想なので、セリフ、シーンなど詳細の間違いやそもそもの解釈を「間違いだ」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、どうか個人の思い込みとご容赦ください。 ※かなり削除しましたが、全文で18,000字程度もある長編になってしまいました。 素人の勝手な思い込みの書かれた18,000字に至る感想を読んでいただける方は少ないと思いましたが、自分自身の「映画鑑賞記録」として書き記しました。

          🎬オッペンハイマー 独特目線のネタバレ感想(18,000字)