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🎬グランツーリスモ 感想

レーシング・シミュレーション・ゲーム「グランツーリスモ」のプレイヤーが、現実のレーシング・ドライバーになっていく実話。

そもそもゲームの「グランツーリスモ」が、実際のカーレースを想定したシミュレーターだったことは初めて知りました。
開発者の山内を演じる平岳大さんが、ドラマに接するパートは少ないですが重厚で印象的でした。

ゲームプレイヤー(シムレーサー)だったヤンが現実の世界でレーサーとして成長していく姿が描かれます。
"実話"というベースがなければ荒唐無稽と一蹴されそうなアイディアからスタートする映画ですが、実話であることゆえの説得力は少なからずあると思いました。

レースシーンなどの描写はゲーム感覚に近く、いろいろな表示が出てきて見ている上では状況はわかりやすい。
ただ、それゆえにですが、ゲームっぽさが強くなり過ぎてリアルなカーレースとしての迫力には若干乏しいように思いました。
サブスクで観てしまったので、劇場で観ればまた印象も変わったかもしれません。

ドラマとしては、シムレーサーのヤンがゲームの世界を飛び出して現実のレーシングカーに乗り、ゲームではわからなかった肉体的・精神的プレッシャーを感じつつも周りの生身の人たちに支えられ本物のレーサーとして認められていく物語になっています。
ゲームもオンラインでたくさんの人と繋がっているのでゲーマーが必ずしも孤独とは言えないと思いますが、悩んだ過去の経験を持つ人物の存在、家族の存在などリアルな生身の人間の世界でしか体験できないこともたくさんあることは事実のようにも思います。

一方で、特に地理的な理由で過去にやりたいことを諦めていた人も多かったと思うのですが、バーチャルも含めネット空間の拡大により地理的不利が飛躍的に解消され、若い世代に才能を開花させる限りないチャンスを与えている事実とこれからの可能性がしっかり描いていて、映画にそんなチャレンジをしていこうとしている人たちを応援するメッセージが強く込められていることは好意的に感じることができました。

この作品では、主人公はバーチャルから現実の世界へと動いていきますが、ちょっと話が逆転し飛躍するかもしれませんが、例えば、音楽や小説、マンガ、映画などの表現手段も東京やニューヨーク、ハリウッドにいなくても発信することが今もできるし、良質であれば十分受け入れられていて、そのことのさらなる可能性も示唆されているようにも思いました。
ちょっと話が広がり過ぎましたが、ゲームや動画サイトなどのネット環境を人の可能性を引き出すためのツールとして活用していく時代を肯定的に捉えていいように思います。

映画としての人間描写については、やや淡白かな?という印象。
ソルターとの師弟関係がやはり肝で、ゲームの世界にいただけではわからなかった生身の人間とのやり取りで成長していくヤンの姿が丁寧に描かれていますが、失意からヤンが立ち直る描写には少し物足りなさを感じてしまいました。
契約レーサーになる時点ではライバルだった人たちと最後はいっしょに闘う展開には、日本の少年マンガに似通ったものも感じました。
一方ヤンの宿敵キャパが、わがまま放題の御曹司で悪趣味な金ピカのランボルギーニに乗っている本当にイヤな奴なのもやり過ぎ感強め、マンガチックでそれはそれでおもしろかったです。

ソルターを演じるデヴィッド・ハーバーが『バイオレント・ナイト』の、あの最強のサンタクロースだったことに気づいて、なんだか妙にうれしくなりました。

先に書いたように、レースシーンがゲームやアニメっぽい描写で描かれていたことは好みが分かれるところかもしれません。

カーレース映画ということで、人間描写とレースシーンに大好きな傑作『フォードvsフェラーリ』の厚みと迫力を求めてしまったのは高望みし過ぎた自分に責任があったかな?と反省モードになりましたが、逆に、リアリティにこだわらず、むしろゲーム感覚的なわかりやすい描写こそがこの映画の本来の世界観だと思えば、映画の個性としては十分納得できる作品でした。

日産のGT-Rがお馴染みの丸いテールランプを輝かせて、ほぼ全編で活躍するのはやっぱりうれしくなりました。

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