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パワハラ・パルプフィクション

2022 11/28(月)

ウワサというのは面白いものである。
誰がいつどこで言い出したのか分からない曖昧な情報が一人歩きし、人から人へ伝わり、インパクトのある部分だけが残って、最終的にはウソになり、誰が聞いても分かり易い一つのフィクションとなって完成するのである。
そんなフィクションのようなウワサを先日、ある芸人の先輩から聞いた。
「はらしょうって、フィクサーなんだって?」
えっ?なんのことだか全く分からない。
フィクサーって、いや、随分とスケールの大きなウソだが、どういうことなんだろう。
「今、話題の落語家パワハラ問題、あれの仕掛け人って聞いたんだけど?」
確かに、最近、落語協会所属の落語家、三遊亭天歌が、師匠である三遊亭円歌からの暴力・暴言のパワハラを訴え、裁判が始まるということは話題になっている。
だが、俺がその仕掛け人?一体、何を仕掛けるというのだ。
興味津々、これは、面白そうなストーリーが聞けそうだ。
「はらしょうが、暴力反対!って言って、それで天歌が動いたんだって?」
凄いあらすじである。
ネットフリックスで始まる新しいドラマか何かなのだろうか。
「詳しいこと教えてよ、はらしょう」
俺が一番知りたい。脚本家は誰なのだ。
俺はすぐさま、根も葉もないウソであると答えた。
「えっ、そうなの、でも、天歌と仲がいいし、パワハラ問題の天歌のユーチューブにも出てなかった?観てないけど」
観てないのか!
出てはいたが、天歌が俺を番組に呼んでくれたのは、元々、親しいのもあるが、俺が落語協会ではなくフリーの落語家として活動し、今回の問題をどう思うのかを客観的視点で見れるからである。
そんな俺が、フィクサーだとしたら、あのユーチューブの監督・脚本を担当し、天歌が俳優のように演じているということなのか。
こんなドラマ、この先、面白い展開は起こらないぞ。
「なんで俺がフィクサーなんですか、親しい仲間が困っているから力になれることがあれば応援しているだけですよ、フィクサーな訳がないですよ」
俺は、先輩に全力で否定した。
すると、先輩は、しばし沈黙したあと、こう答えた。
「そうか、あれはウワサだったのか、所で、はらしょうさぁ、フィクサーって、どういう意味なの?」
なんと、先輩は、フィクサーの意味を知らなかったようだ。
「いや、黒幕、のことですよ!」
「黒幕!?いや、だったら、はらしょうな訳ないな~」
一体なんだと思っていたのか分からないが、疑いが晴れてよかった。
ウワサとは、実に完成度の低いフィクションである。
あまりにも安っぽい内容に、映画「パルプフィクション」の由来になった、アメリカの三文雑誌、パルプマガジンの小説のような味わいもあった。

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