経営理念だけでは利益は上がらない

赤字企業の相談

昔、鋳物関係の会社から赤字解消の相談を受けたことがあります。
先代から引き継いだ若い経営者の方からの相談だったのですが、赤字が続いており何とか黒字化したいとの事でした。
その方いわく「やはり経営理念の作成から始めるべきでしょうか。」でした。

私が提案したこと

いろいろお聞きすると、業界は中国製品がコストも安く日本製品は減少していること、見積もりは先代が実施していたが古い付き合いの顧客に頼まれると無理して受注するためかなり安い値段で提供していると思うが、どの商品が儲かっていてどの商品が赤字なのかはわからないとのこと。
景気は回復基調で、顧客は製品調達には苦労しており原材料費も値上がりしていることなどをお聞きしました。
そこで、私がお話したのは「経営理念の作成」ではなく次のような内容でした。
1.まず個々の製品が儲かっているかどうかを把握し、赤字品目は値上げ交渉を行う。
2.そのためには、原価管理制度を導入し原価の明確化をはかる。
3.なおその際に、間接経費をチェックし不要な費用を削減する。
結果は、先方がしっかりと作業時間と機械の稼働時間を把握してくれたおかげで、原価が把握でき値上げ交渉も行え、黒字化に転換しました。

ドメインと勝ち方とオペレーション

若い経営者はそれなりに勉強会に参加し、経営理念を作ることが重要だと教えられたのでしょう。しかし、私が伝えたいのは、経営理念は無いよりもあったほうがマシ程度で、経営理念があるから利益が出るものではないといことです。
経営理念はいわば社長の頭の中を公開することです。
会社の使命を明確にし社長として何を大切に経営を行うのかを示すものですが、作ろうと作るものでなく、経営を行いながら現実と格闘し生まれるものだと思っています。
いくらきれいに成文化した文章があっても、トップが日常それに反した言動をしていればなんにもなりません。
いくら立派な使命を掲げてもそれが具体的にならなければ、ただの紙屑となるのです。

会社が存続するためには、利益が必要です。
その利益を上げるために必要なのは、ドメイン(商品サービスと市場の組み合わせ)の設定と勝ち方(戦略)の検討を行うとともに、戦略実行のためのオペーレーションを構築するし、それをしっかりと実行することです。
たまにドメインや勝ち方を示さないまま社員に対する行動指針等を作成したがるトップがいますが、トップとして示すべきことを示さないまま、社員にこのように行動してほしいと要求することが私には理解できません。
社員からすると、自分たちに要求する前にまず会社の戦略を示せとなるでしょう。


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