第31話 ネネ 砂浜で休憩 おわり
「ちょっとネネさん 何やってんの」
サンダー・ボルトと離れてしまってから、およそ1日半が経っています。
やっとボルトが、ネネの元へと戻ってきました。
そんなボルトが目にしたのは、砂浜にたてた日傘の下、水着で思いっきりくつろいでるネネの姿でした。
何だか少し日焼けまでしちゃっています。
「あーーー!ボルトどこ遊びに行ってたのよ。ホントに、もう」
ネネはと言うと、開口一番ボルトにブーブー文句を言い始めてしまいました。
この時すでに、自分が雪だるまにされて行方不明になっていたことなんて、すっかり忘れていたのです。
「いやいやいや、それはこっちのセリフだっての。ネネこそ今までどこに行ってたんだよ・・・って、それより、ちゃんと脚は閉じて座りなさいって」
「もう! わけわからないこと言って、話をはぐらかそうとしてるでしょ。
そんな、はしたないこと私がするわけ・・・あっ ホントだ」
ネネは、そろそろ彼氏を作ってもおかしくないようなお年頃です。
にも関わらず、まだまだ子供っぽさが抜けていない部分が多くて、よくこうやってボルトに注意されてます。
とりあえず脚を閉じてくれたネネですが、お互い何だか話がかみ合わないので、まずはボルトが自分にあった出来事を簡単に話すことにしました。
ボルトの話は、こうです。
昨日の朝、ネネがサンタ・ツリーのドームを森の外へと投げつけた時に後を追ってみたものの、その姿はどこにもありませんでした。
道化師のオレンジがドールの街に戻らないといけないと言い出したので、送って行くことになります。
道案内をしてくれたおかげで迷うことなく街に着いたものの、意外に遠くて往復で1日もかかってしまいました。
ちなみに一緒にいた道化師のフールは、すでに南の大陸へ調査の為に出発していたので姿は無く、挨拶できなかったらしいです。
一方で、ネネの話です。
あの時サンタ・ツリーに怒られてしまったことで雪だるまに閉じ込められ、脱出できなくてそのまま1日を過ごしていました。
要するに、ネネもボルトも「どっちもどっち」なわけです。
ただしこの時、ネネはわざと黙っていたことがありました。
トナカイ達に会ったことだけは、ボルトには絶対に内緒なのです。
なぜなら「サンタ・クロース爺ちゃんの家が現在どこにあるのか」と質問するのを完全に忘れてしまっていたことが、バレてしまうからでした。
しかし、隠し事をしていることを察したのか、ボルトがいきなり質問をぶっこんできました。
「ネネ、何か隠し事してないか?」
なぜかいつもボルトには、隠し事や嘘をつくと見抜かれてしまいます。
それはネネは誤魔化すのが下手っぴすぎて、すぐ顔に出るからでした。
そのことに気付いていないネネは、さらに誤魔化しにかかります。
「そうだ!さっき植えたサンタ・ツリーの所に戻りたいんだけど、いい?」
「何でだ?」
「最後の儀式が、まだ残ってるの忘れてた」
「儀礼って、いったい何をするんだ?」
「ボルトはさ、サンタ・ツリーって何だと思ってる?」
「御神木だろ。つまり不思議な力を持ったモミの木」
「半分正解なんだけど、ちょっと違う」
「他に何かあるのか?」
「ボルトに、本当のサンタツリーに会わせてあげるよってこと」
「なに言ってんのかわからないが・・・わかった」
ネネはおもむろに立ち上がると、お尻についた砂を手で掃いました。
ちなみにネネが隠し事していたり、嘘をついている時には、たいていこういう微妙な表情になるので、すぐボルトにばれるのでした。
この時、精神年齢がまだまだ子供なままのネネは「よし!うまく誤魔化せたぞ」と思っています。
しかし精神年齢が大人なサンダー・ボルトは「何か隠そうとしてるのはバレバレだけど、かわいそうだからあまり突っ込まないでおいてあげよう」と思っていました。
「サンダー・ボルト」は、いつもネネのことを心配し助けてくれています。
つまりネネにとっては、兄のような存在です。
彼女が自由奔放に好き勝手できるのも、サンダー・ボルトがいてくれるからこそでした。
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
サンタ・ツリーに対する儀礼が残っているというのは、ホントの話です
次回はその残された儀礼として、1本目のサンタ・ツリーに宿っている「神木の霊」を呼び出すそうです
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
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