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メーカー・小売企業が自社でリユースビジネスに取り組む収益性をどう考えるか

こんにちは!リユースビジネス支援サービス『Selloop』ジェネラル・マネジャーの新谷です。 普段は、クライアント企業様のリユースビジネス参入において、企画・設計の伴走支援に携わっています。

この記事は、リユースビジネスへの新規参入を検討されている企業の担当者様を対象としています。
メーカー企業や小売企業においてリユースビジネスへの参入を検討する際には、当然のことながら事業収益性が大きな論点になります。そこでこの記事では、リユースビジネスならではの収益性の考え方について整理し、検討のヒントをご提供できればと思っています。

この記事の要点は以下です:

  • 差益による収益性は、①対象商材、②回収品のグレード分布、③回収方法、④再販方法に左右される。収益確保は簡単なことではない

  • 一方、メーカー企業・小売企業ならではの戦略として、リユースビジネスを通じて買替サイクルの強化やロイヤルティの向上を促すことで、トータルの収益性を高めることができる


1. リユースビジネスの基本的な収益性

まずは基本的な構造として、リユースビジネスにおける回収と再販から直接発生する収益の考え方を整理します。
リユースビジネスには様々な形態(買取再販、シェアリング、レンタル、…)がありますが、代表的な形態として買取再販を念頭に考えていくことにします。

直接的な収益性を左右する主要な要因は、①対象商材、②回収品のグレード分布、③回収方法、④再販方法の4つです。それぞれの要因について、検討のポイントを見てみましょう。

①対象商材

リユースビジネスの基本的な収益源は「売上高 - 仕入高」による差益です。一般的なリユース商材では、差益は末端売上の5-7割程度の水準になりますが、この水準は対象商材カテゴリによる再販価値の違いに左右されます。耐久性が高く再販価値が残存しやすい商材、例えば貴金属や高級時計、スマートフォンといった商材は比較的差益を確保しやすいですし、食器・キッチン用品やファストファッションの衣類などでは差益の確保が難しくなります。

下図は商材カテゴリ別の一次・二次流通単価の、『Selloop』による大まかな調査結果です。一次流通単価が同じくらいの商品であっても、二次流通単価には大きなばらつきがあること分かります。(少数のサンプルからの推計のため、あくまで参考としてご覧ください。なお、当然ながら同カテゴリの中にも様々な価格帯の商品が存在するため、参入検討に際してはより細かい粒度での調査が必要となります)

商材カテゴリ別の一次流通単価、二次流通単価(市場サンプル調査)
※ 宝石・貴金属の二次流通単価はばらつきが大きく調査困難のため、便宜的に10万円とした

こうした違いの他に商材による傾向を生むのは、体積による物流費の違いです。例えば家具のような商材は、再販単価は必ずしも高くない一方で、物流面ではかなり「かさばりやすい」商材ですので、差益確保の難度は上がります。

このように考えていくと、物理的にリユース可能な商材は様々にあれど、「とりあえず売買すれば稼げる」という領域は、実はあまり大きくありません。リユースビジネス参入の際には、このような傾向を前提認識としたうえで、収益確保できるビジネスモデルを検討する必要があります。

②回収品のグレード分布

実際に買取をしてみると、回収される商材のグレード(使い込みによる品質劣化の水準)には大きなばらつきがあることが分かります。一般的に、再販価値のほとんど無いような低グレード品が多数集まるため、それらの買取価格をできるだけ抑えながら、一部の高グレード品で収益確保するような工夫が必要になります。

なお、回収品のグレード分布は、「どのようなグレードのものをいくらで買い取るか」をあらかじめユーザー向けに発信することで、多少コントロールすることが可能です。低グレード品の買取価格の低さでユーザーに不満感を与えないためにも、このあたりの繊細な調整は必要になってきます。

③回収方法

買取における回収方法は大きく宅配買取/店舗買取の2つです(高額商材の出張買取など、工夫次第で他の方法も考えられます)。この違いは物流費に大きく影響を与えます。

宅配買取はユーザー利便性に長けていますが、ユーザーの自宅からものを引き取る「ラストワンマイル物流」によりコストがかさみます。例えば衣類を自宅から回収しようとすると、1箱あたり1,000円程度のコストを見込む必要があります。衣類一般の再販価値の低さを考えると、このコスト負担はかなり重たいと言えます。

店舗買取はユーザーにモノを持ってきていただくことでこの点を効率化できますが、当然店舗そのもののコストが掛かります。すでに小売店舗などを広く展開している場合には効率的な運用が可能です。なお、この場合店頭で査定や保管などのオペレーションが必要になる点も考慮を要します。

④再販方法

再販方法の大きな分岐は、toCで売るか/toBで売るかです。

toCでの再販の方が再販当たりの利益率は高まります。ただし、自社でtoCの再販チャネルを構築するハードルが存在します。また、商材品質によってはブランドイメージに傷をつけるリスクがある点や、高度な在庫管理能力が求められる点からも、難度の高い選択肢であることは否めません。

一方で、リユース品専門業者へのtoB再販は、収益性は劣るもののハードルの低い選択肢といえます。


以上、リユースビジネスの基本的な収益性について、4つのポイントから考えてきました。各ポイントで議論したように、多くの商材や事業環境において、リユースビジネスで利益を確保するのは決して簡単なことではないため、こうしたハードルを上手くクリアした大手専門企業やニッチな小規模企業のみが活躍している状況です。

一方で、メーカー企業・小売企業ならではの戦い方として、以下で議論するような視点を併せて考えると、収益性の成立する領域は大きく広がります。

2. 別の視点①:買替サイクルの強化

メーカー企業・小売企業が顧客向けに買取サービスを提供すると、従来の新品販売における顧客接点とは別に、新たな接点が生まれます。この接点を利用することで、顧客により頻繁に/より継続的に自社商品を購入していただく「買替サイクルの強化」を実現することが可能なため、収益性に大きなポジティブ効果があります。

買替サイクルの強化には大きく2つの要因があります。1つ目は、買取を自社ポイントやクーポンで行ったり、買取に際して自社商品のレコメンド情報を伝えることにより、再購入のきっかけをつくることです。この手法は、再購入が前提となる代わりに高い買取価格を提示できる、もし再購入が無かった場合にはコストアウトが防げるといった点でもメリットがあります。

また、公式の買取サービスがあり、ユーザーがそこでの買取価格の目安についてあらかじめ分かっているという状態をつくりだすと、ユーザーは新品を購入する際にも、再販可能性を前提に安心して購入することが可能です。このことも買替サイクルの強化につながります。

買替サイクルが強化される場合、買取再販サービスに伴う費用は、新品販売のマーケティング費用を兼ねているため、効率的な状態が実現できます。別の言い方をすると、買取再販サービスの収益性について、新品販売の収益増加分を含めて評価することができます。このように新品販売(一次流通)とリユースビジネス(二次流通)を融合させて効果的なビジネスモデルをつくりあげることが、メーカー企業・小売企業ならではのリユースビジネスの在り方といえるかと思います。

3. 別の視点②:ロイヤルティの向上

「買替サイクルの強化」ほど分かりやすくはありませんが、長期的に見ればより大きなポテンシャルを持っているのが、リユースビジネスを通じた顧客ロイヤルティの向上です。

多くのメーカー企業・小売企業にとって、顧客へのサービス提供はほとんど「モノを売る」ということに限られています。そのため、もしリユースビジネスに参入するのであれば、それはユーザーから見たブランドイメージを大きく左右するサービス提供ポイントになります。ここで好印象を与えることができれば、ユーザーのブランドへの愛着(ロイヤリティ)を高めることができ、継続的な関係性構築や買替サイクルの強化につながっていきます。

例えば、リユースビジネスは消費や廃棄を抑制し、循環型社会の構築や、事業のサステナビリティの確立につながる活動です。このことにフォーカスを当てて、リユースビジネスを「ユーザー参加型のサステナビリティアクション」のような形で打ち出すことが考えられます。こうした企画をうまく成立させられれば、従来とは異なる特徴を持った新たなファン層を醸成していくことができます。そのためには、自社のブランドイメージと親和性のある企画ストーリーを創造し、ユーザーから見て説得力のある形で展開することが重要になります。

4. 事例

実際にリユースビジネスに参入し、上記のようなシナジー効果を狙っていると考えられる事例について、以下の記事でご紹介しています。

5. リユースビジネス支援サービスのご紹介

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
オークネットグループ企業ストラテジックインサイトでは、一般企業様におけるリユースビジネスの立ち上げを支援するサービス『Selloop』をご提供しています。 クイックかつローリスクなリユースビジネスの立ち上げを、ビジネス設計のコンサルティングや各種開発・制作の代行、業務BPOによって実現します。
ご興味のある方は、Selloop webサイトよりお気軽にご相談ください。

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