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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第23回 苦難の農業経営② 人件費を抑えるノウハウ(その1)

農業経営者にとって、人件費は運営費の大部分を占める重要な課題です。特にインフレ不況期には、人件費の抑制が生産性を維持し、持続可能な経営を実現するための鍵となります。今回は、オーストラリアでの事例を参考に、日本の農業現場で人件費を効率的に管理する方法、労働環境の改善方法について詳しく探ります。

エージェントの活用と見える化の重要性

オーストラリアでは、多くの農業生産者が「Protection Visa」と呼ばれるビザを持つ労働者を短期雇用するため、労働不足を補うために活用しています。特に、収穫期や突発的なタスクに対応するための超短期労働者を効率的に管理する仕組みが整っています。言い換えると、必要な時に必要なだけ雇用することで、効率的に労働力を確保することができます。
このようなシステムは、日本の農業現場でも大いに参考になります。

重要なのは、生産現場がしっかりと仕組化され、作業内容が見える化されていることです。これにより、必要なときに必要な労働者を効率よく配置することができます。例えば、オーストラリアでは農業人材エージェントが存在し、生産者が数日前までに必要な労働者の数と作業内容を伝えることで、エージェントが適切な労働者を手配してくれます。エージェントを介して雇用される労働者は、特定のスキル(単純作業のスキル)を持つ者が多く、果物の収穫が得意な労働者や野菜の収穫に特化した労働者など、ニーズに応じた人材を確保することができます。これにより、収穫期の労働力不足を効率的に補うことができます。
エージェントを通じて一時雇用労働者を雇うことで、突発的なタスクや収穫要員不足などに迅速に対応することができます。これにより、コストを削減し、農業従事者の負担を軽減することが可能となります。

エージェントの利用は、農業以外の製造現場でも広く行われています。日本でも、農業以外の製造現場では短期労働者を雇える環境が整っており、この環境を農業にも導入することで、週休二日制の他の産業と同様の労働環境を構築することが可能です。これは、農業従事者のワークライフバランスを改善し、働きやすい環境を提供するために必要な抜本的な改革です。

短期労働者の雇用環境の整備

日本の農業現場では、年中無休の労働を強いられるケースも少なくありません。このような状況を改善するためには、超短期労働者を活用することで労働力を補充し、残業を減らすことが重要です。日本政府も、労働負担の軽減を目的として、農業現場の仕組化や見える化を進めるための生産現場をカイゼンさせるための教育事業に対する補助金や、専門家の導入などのサポートを提供する必要があるかもしれません。また、エージェントの仕組みを構築するための援助も必要になると考えられます。ただ、エージェントに求められるスキルは、日本の労働基準(安心・安全・規律など)に準じた、外国人人材を管理するスキル(言語※AI通訳、翻訳の発達により十分クリアできる、外国人を適切にマネージメント、教育できるスキル)が必須条件です

多国籍労働者の管理ノウハウ(※言語はAI通訳、翻訳により十分クリアできる)

多国籍労働者を管理するためには、生産者側にもある程度の外国人管理ノウハウが求められます。オーストラリアでは、インドネシア、マレーシア、タイなどの東南アジアから来る労働者が多く、その文化や慣習は様々です。日本でも同様に、外国人労働者を受け入れる際には、異なる文化背景を持つ労働者を適切に管理するスキルが重要です。

日本の農業現場への提言

日本の農業現場では、年中無休の労働が強いられている現場も多く、短期労働者を活用することで労働負担を軽減し、残業を減らすことが可能です。政府も、新たな仕組みを農業現場に導入するための補助金や専門家導入などでサポートする必要があります。

外国人労働者の活用についても議論があります。低賃金の外国人労働者が日本の労働市場に与える影響については賛否両論がありますが、現実として、日本の労働環境は他国と比較して劣っていることが多いです。例えば、オーストラリアでは労働賃金が日本の2〜3倍となっており、日本が低賃金労働者として雇用していた東南アジアの国々も、現在では、日本と同等、またはそれ以上の賃金を支払っています。

もし、日本の政策が一次産業での外国人労働者の増加を推進する方向にあるならば、従来のように一現場、一生産者、一企業で外国人労働者を数年間雇用する形(育成就労制度など)のみではなく、オーストラリアのようにエージェントを介して、一時雇用労働者を確保する仕組みを導入することを検討することも必要かもしれません。

結論

日本の農業現場においても、オーストラリアの成功事例を参考にしながら、効率的な人件費の管理と超短期労働者の活用を進めることが求められます。エージェントを活用した労働者の管理や、多国籍労働者の文化的背景を理解した適切な対応を行うことで、労働環境の改善と生産性の向上を図ることができます。


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