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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第8回 野菜の「鮮度その2」

「鮮度」を長期間保つための温度管理

今回は、前回に引き続き、野菜の「鮮度」についてお話しします。特に、温度管理の重要性について詳しく見ていきましょう。

温度管理の重要性

出荷先、市内、空港までのアクセスが悪かったり、出荷先までのコールドチェーンが整っていないと、輸送中に鮮度が損なわれる可能性があります。鮮度に大きく影響するのは、不安定な温度管理です。鮮度を長期間保つためには、常に一定の温度(冷蔵室)を保つことが重要です。

以下の表は、各野菜保存場所の温度目安を示しています。

先端技術の活用

近年では、鮮度保持を可能にするプラスチック容器や輸送コンテナの研究が進んでいます。以下に、いくつかの先端技術を紹介します。

MA(Modified Atmosphere)プラスチック容器

「低酸素・高二酸化炭素」状態を維持することで、青果物の呼吸を抑え、成熟・老化を遅らせることができます。これにより、通常の容器に比べて鮮度を長く保つことが可能です。

CA(Controlled Atmosphere)コンテナ

冷蔵・冷凍機能に加え、内部の酸素や二酸化炭素濃度を調整することで、青果物の劣化を防ぐことができます。

オーストラリアでの鮮度維持を含む先端農業技術の研究

バイオサイエンス研究機関であるアグリバイオ(AgriBio, Centre for AgriBioscience)は、メルボルン郊外のBundooraに位置し、2011年に設立されました。動植物・微生物の研究・診断を行うこの施設は、国際的にも認知されており、世界トップレベルの科学者との情報交換の場としても活用されています。

アグリバイオはビクトリア州政府機関とLa Trobe大学が共同運営しており、約400名の職員(政府研究員300名、La Trobe大学の研究員100名)が在籍しています。総面積15,380平方メートルの施設内には、最先端のバイオサイエンス研究設備のほか、ポストハーベスト(※)研究セクション、試験野菜栽培用のガラスハウスや研究室などがあります。

※ポストハーベスト(収穫後鮮度保持技術)は、収穫された果物、野菜、根菜類が消費者に届くまでの鮮度を保つために、温度、湿度、ガス、光などを制御する科学技術です。

アグリバイオのポストハーベスト研究セクションでは、野菜・果物の鮮度維持のための研究開発が行われています。同セクションでは、収穫後の野菜・果物の劣化に影響を及ぼすエチレンガスの放出量を調整し、鮮度維持期間を延ばす技術が2016年に確立し、正式に発表されました。

また、2019年初頭に締結された「中国とオーストラリアの自由貿易協定(中豪FTA)」により、この技術を活用した長期間鮮度維持可能な中国向け農産物の輸出量が大幅に増加しました。2019年6月には、中国向け農産物の月間輸出量が過去20年間で最高値に達しました。

まとめ

野菜の鮮度を長期間保つためには、温度管理と先端技術の導入が欠かせません。MAプラスチック容器やCAコンテナなどの最新技術を活用することで、鮮度を維持し、収益の向上に繋げることができます。また、先端技術の研究を行っている機関と連携することで、さらに効果的な鮮度維持方法を見つけることができるでしょう。
今後、日本の農産物の輸出を促進させるためには、これらの技術がますます必要になると考えられます。ただし、これにはコスト高になる懸念点があります。そこで、コストを抑える技術開発や、その導入を支援する補助金などの制度が求められます。国を挙げて研究開発や導入サポートを促進することで、農業者が最新技術を利用しやすくなり、日本の農産物の競争力向上に大きく寄与することが期待されます。

今後も、最新の技術と情報を活用し、日本の農業を発展させていきましょう。


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