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#6身体からみる心

Noteのページにお越しいただき、有難うございます。
これまで理学療法士として多くの方の身体のリハビリやコンディショニングに関わらせていただきました。その中でいくつか不思議だなと感じる体験がありましたので、その話を元に身体と心の繋がりについて考えてみます。

僕は理学療法士になりたての頃、自分の治療で少しでも選手や患者さんの身体を良くする!と意気込んでいました。その気持ちとは裏腹に勝手によくなっていく方が多くおられます。自分の関わりが一つのきっかけにはなっているかもしれません。でも僕が何かをしたというよりは、その方が自分でよくなる方法を見つけ出す、あるいは自己治癒力が高まってどんどん好循環がうまれるような感じでした。嬉しいような自分の技術に対する無力感のような不思議な感覚でした。

心理学の用語で「レジリエンス」という言葉があります。

この言葉はもともと物理学の分野から発展してきています。弾力、復元力、回復力などの弾性エネルギーという用語があてられています。

https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1100090757.pdf

僕は「身体と心は時に別々になり、時に重なるという立場」で心身を考えていますが、人の身体が不調をきたした後、そこから回復するためにはこの「レジリエンス」なるものが必要だと感じています。それは、身体の物理的な回復力だけでなく、何らかの影響により、一度低下したパフォーマンスを元に戻したいという欲求のようなものです。この欲求が生じやすい人とそうでない人がいて、それが心理的なレジリエンスと考えられます。

少し言葉は変わりますが、スポーツ場面では試合に負けたり、よいパフォーマンスを発揮できないなどの「失敗体験」をすることがあります。スポーツは突き詰めれば、その大会でトップにならない全員がどこかで失敗体験をすることになります。失敗の定義にはよりますが「試合に勝つ」ということを成功と考えるとそのような考えに至ります。この失敗体験のあとはどのような思考を持てば良いのでしょうか。

失敗体験から次の試合に至るまでの思考プロセスでは、反芻(失敗した原因を繰り返し考えてします)や役に立たない対処行動(失敗した原因を考えようとしなくなるなど)をすると良くないと言われています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspopsy/advpub/0/advpub_2022-2102/_pdf

つまり、負けた要因を繰り返し考えすぎたり、その反対に原因を考えようとしないなど極端な方向へ思考を振ってしまうことがよくないということと理解しています。

人は一人で考えてしまうと、偏った考えに陥りやすくなります。これはどれだけ客観性を保とうとしても難しいため、家族や友人、様々なコミュニティの支援を受けることが何より重要です。その中で自分自身の能力を信じることができ、固定した考えではなく周囲の考えに対する柔軟さや適応力、その中で生じるストレスに対して自己ケアや管理ができるようにしていく必要があります。

身体の不調が生じた際に偏った考えだけを持っていると、いくら身体の回復が早かったとしても、心の回復に時間がかかり、結果として良い方向への循環が生まれにくくなります。

身体はどうしても年齢を重ねるごとに老化が進みます。スポーツ選手のピーク時期もそれほど長いわけではありません。自分の身体のパフォーマンスが低下してきたとき、あるいはその前から、自分の心や周囲の人々にも耳を傾けて過ごしてレジリエンスを高めると好循環が生まれるかもしれません。

今週も良い1週間になりますように。

藤井隆太

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