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留学の話:Erasmus+について

さて、新しいジャンルの記事をはじめようと思います。カバー写真通り、ヨーロッパ留学のお話。

留学中にも寄稿という形で記事は書いていたのですが、先日留学フェアのお手伝いに行き、いろいろ答えたなかから「このあたりは質問が多かったな」ということを抜粋してかいてみようと思います。

私の留学はちょくちょくみかけるであろう「Erasmus+」に関連しているので、制度について情報源(ソース)の引用をしつつ、私なりの解説をつけるので、リンク集みたいに使ってもらえたらと思います!

Q:そもそもErasmus+って何


A:欧州連合の教育・トレーニング(研修・訓練)・青少年・スポーツのためのプログラムです。「エラスムスプラス」と読みエラスムスは「European Regional Action Scheme for Mobility of University Students」から来ています。プログラムの分野に対してさまざまな助成金を出しています。ただ、理解のされ方としてはが、次の項目で説明する移動補助金(モビリティグラント)や短期留学のことを指して「Erasmus」と呼ぶことが多いです。

日本で関心が高いのも奨学金情報だと思うので奨学金に特化して書きます。
大枠の理解としては、留学フェアのウェブサイトで公開されていたこちらのちらしが参考になります(PDF)。

PDFで取り上げられているように、奨学金としてのErasmus+とEMJMD(エラスムス修士/エラスムス・ムンドゥス)について説明していきます。

Q:Erasmus+とEMJMD (エラスムス修士)の違いは?


A:短期留学(2ヶ月から12ヶ月以内)の制度として広く認知されているのがErasmus+。
12ヶ月以上で主にジョイントディグリーの修士号取得を目指すのがEMJMD(エラスムス修士)。

まずは前者から詳細を。「Erasmus」と呼ばれる制度は、EU加盟国を中心に、2ヶ月〜12ヶ月以内の交換留学をしやすくする目的でできました。なんと開始は1987年!今年で35年目を迎えています。7年サイクルの予算で少しずつ名称が変わり、現在Erasmus+とプログラム名がなっていますが、基本は変わりません。
単位互換や必要な書類も共通のものにして、そこに必要に応じて移動補助金(奨学金)を出す、というもの。学生や教員の移動を促進することで、国境を超えたヨーロッパ域内での相互理解を深めようという部分もあります。長年継続されて、利用されてきた制度なので、寮の学食でも「エラスムスで来てるの。」とか「君もエラスムス?」と、「exchange (交換留学)」よりも頻繁に会話に登場しました。
以降、このnoteではわかりやすく短期エラスムス、移動補助金/奨学金を「モビリティグラント」と呼びます(書類や英語での呼び方がこれなので、情報調べやすいかなと)。

 後者のEMJMDは正式名がErasmus Mundus Joint Master Degree 。読んで字の如し2つ以上の大学から共同修士号を取得するもの。分野は多岐にわたり、EMJMDとして100近くの修士課程があります。文系・理系はそれぞれすくなくとも1つは当てはまるものがみつけられるのでは?という感覚。また、産学連携のコースもあるので、チョコレート職人や振付家、人形劇パフォーマー、観光産業などほんとにユニークな修士課程がたくさんです。

各コースの検索ができるウェブカタログはこちらから。タイミングもいろいろですが、在学中に少なくとも2カ国で学ぶことになるので、留学中に国境を超えた引っ越しをすることになります。
そして、この修士課程で学ぶ学生の一部に奨学金が出ます。この奨学金は競争率は高いけどとれるととても助かるもの。そこで、ここでは修士課程そのものはエラスムス修士、奨学金をモビリティグラントと区別するために「ムンドゥス奨学金」と呼ぶことにします。

そして下記、重なる質問もありますがあえてこの短期エラスムスとエラスムス修士に分けて書きます。

短期エラスムスとモビリティグラント

Q:日本からでもエラスムスは申し込めるの?

A:所属大学によります。
短期エラスムスは、先にも触れたように要は交換留学で、EUの制度を使用する、という状態です。所属機関と受入れ機関がエラスムス制度での交換留学に同意し、準備が整っていることが必要です。そして、所属のある学生である必要があります。
PDFにも書いてあるように日本でも200ほどの大学等がエラスムスでの留学制度ができるようになっているようなのですが、リストなどが公開されているわけではないので、短期エラスムスできるかどうかは所属大学の国際交流課に確認をとるしかありません。PDFなどに「貴方の大学の国際 交流室に、どの国で何を学べるか問い合わせてみて下さい。」とあるのはそのためです。

また、留学を支援する国際単位移動制度(International Credit Mobility-ICMは留学中に取得した単位が卒業に必要な単位としての認定がされる、そしてその留学について現地大学への費用が発生しない、という制度としてEU代表部のウェブサイトに表記がありますが、こちらもまず所属機関がこの制度の活用に参加していないといけないので、必ず国際交流課に確認をとってください。

Q:ヨーロッパの大学に直接留学(入学)する場合に使える可能性は?

A:こちらは大いにあります!
こちらが公式の説明へのリンク

エラスムスに限らず、EUやCreative Europeの助成金は、国籍よりもその時どこの国に住んでいるか、長期滞在者かどうかが申請者の条件になっていることがほとんどです。そのため、たとえばイタリアの大学に進学していて、短期エラスムスでフランスに留学することが可能です。
大学から、エラスムス短期留学に必要な書類をもらい、出発時・到着後にそれぞれの大学に書類を届け出ることになります。

モビリティグラントについても、他の奨学金と被っていないなど一定の条件をクリアしていれば給付を受けることができます。

Q:どれくらいもらえるの?

A:これは、どこの国からどこの国に行くかで変動します。先のPDFでは、月800〜900€となっていますが、これは日本から行く場合の例。私が留学していた2016年ヨーロッパ内では月250€前後で、生活費が高い国に行く場合と、安い国に行く場合で設定額が違いました。
そのため、額についてはまたしても、所属大学に問い合わせる必要があります。

基本的にユーロでの支給なので、現地で銀行口座を持っていればレートを気にせず受け取ることができます。

エラスムス修士(EMJMD)とムンドゥス奨学金

Q:日本からも申し込めるの?

A:OKです!エラスムス修士は、プログラムごとにアドミッションポリシーが設定されているのでその要件に沿えば出願OKです。入学そのものに国籍が足枷になることはほぼないと思います。学士の資格を持っている、あるいは卒業見込みであれば良いので、社会人の方も出願可能です。
どのプログラムも授業料が設定されていて、要件をクリアしていれば入学が可能。書類審査にどんな書類が必要になるのかもプログラムごとに異なるので、必ず自分が関心のあるプログラムの公式ウェブサイト(ウェブカタログなどからリンクに飛べます)の内容を読みこんでください。
一部の学生はムンドゥス奨学金有での合格になるので、その場合は授業費はかからず、奨学金で生活費の大部分をカバーできることになります。

Q:ムンドゥス奨学金を申し込むタイミングは入学許可がでてから?

A:プログラムへの出願と同時がほとんどのはずです。おおむね秋から12月、1月ごろの締め切りでムンドゥス奨学金付きの出願受付が行われます。プログラムごとに締切日も、奨学金付の入学に挑戦したい場合の条件などがそれぞれ異なるので、こちらも必ず自分でプログラムのウェブサイトを読み、わからなければそのプログラムのコンタクト先に問い合わせをしてください。

Q:ムンドゥス奨学金はどれくらいもらえるの?(額と競争率)

A:さて、PDFでは「授業料、渡航・転入費用、生活費、保険料を補填し、最高で 1 万 6800 ユーロ支給」となっているムンドゥス奨学金。現在のエネルギー費高騰のなかでは、少し厳しくなってきたという話もありますが、基本的に留学中の資金をムンドゥス奨学金でまかなえることになります。ヨーロッパでの銀行口座をもっていれば、日本円とのレートを考えることもなくてOKになります。

ただ、競争率はかなり高いです。ムンドゥス奨学金は、じつは国ごとに予算がばらけており、国の経済状況やEUとの関係によって奨学生の数が異なります。私のいたプログラムでは、学年に3人日本人がいて、ムンドゥス奨学金がとれたのは一人だけ。また、日本人がそのプログラムに一人でも、出願したプログラムの奨学生枠そのものの選考にもれてしまうことももちろんあります。

ただ、しっかりリサーチをして、準備をしていけば奨学金を得られる確率はあがると思うので、情報収集をしっかり行ってくください。有効なのは、現役性やOB・OGに聞いてみること。どのプログラムもウェブサイトがあり、最近はSNSでの発信も活発なので、問い合わせをしてみたり、FacebookやLinkedInを利用して現役生などに連絡をとってみるのもありです。
私も、大学やSNS経由などで後輩から連絡をもらうことがあるので、わかる範囲でいろいろ伝えています。

Q:ムンドゥス奨学金がとれなかった時は?

A:プログラム自体に入学を認められていて、私費でも行きたい!という場合には手続きをすればOK。逆に、入学許可がでていてもムンドゥス奨学金がとれずに辞退、というのもOKです。

プログラムごとに、ムンドゥス奨学金がとれなかった人が申し込めそうな他の奨学金を紹介してくれることもあります。ただ、必ずしも申し込み要件を満たせるとは限らないこと(ヨーロッパ現地の地元の奨学金も多い)、日本の奨学金はムンドゥス奨学金の結果が出る頃には締め切られていることも多いです。

そのため、少し大変ですが出願前にできるだけ可能性のあるほかの奨学金情報を集め、合否が出る前に申し込みのできるものには出しておくことをおすすめします。

このあたりも、それぞれのプログラムごとにOB・OGが活用した奨学金情報などをもっていることもあるので、問い合わせてみてくださいね。

さいごに

以上が、エラスムス・プラスの私なりの解説になります。
エラスムス修士も含め、「調べてください」「問い合わせてください」という文言が多かったと思いますが、さまざまな場面に適用される制度ゆえに、ある程度状況がかたまらないとわからない、ということも多いのです。そのため、自分がどの条件に当てはまっているのか、自分で調べながら、問い合わせをして、現役生や卒業生にコンタクトして情報を得ていくのが近道です。

2カ国以上で学ぶことが前提のエラスムス修士は、大変でしたが楽しかった思い出や得たものも多かったので、またそのうちまとめてみようと思います。



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