詩85/ 欲望
僕は
5匹の猛獣を飼っていた
皆違う種類の動物だけど
5匹ともに
欲望
という
全く同じ名前を付けていた
動物園や
サーカスではなく
家畜として給餌し
その馬力を使い
彼らの恵みを
僕が生きるために役立てていた
同じ檻の中で
5匹を飼っていたが
絶妙な秩序があり
お互いを襲い合う事はなかった
でもある時
一匹が粗相をして
僕は躾のために
食事を抜いて罰した
少しで良かったのに
強く戒めないと
牙を剝いて歯向かわれる気がして
度を越して飢えさせてしまった
彼は遂に狂い始め
他の4匹を襲った
それによって
全員が制御不能になり
お互いを襲い合い
終いには僕に襲いかかってきた
猛獣の暴走に
太刀打ち出来るはずがなく
結局そういう形で
敢え無く一度僕の人生は終わった
今
僕は
その人生のやり直しを試みている
当時
殺し合いの中で
一匹だけ生き残った狼の
その子供が手元に居る
僕自身への戒めのために
彼にはまた
欲望
と名前を付けた
檻には入れず
自由にさせている
彼は
大人しくて懐かない
かと言って去っていくこともなく
いつも
僕のことを
遠巻きにじっと見ている
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