詩103/ 手放さない

苦しいのは
何かしらを
捨てずに持っているからで

すべてを手放して
心の表面の凹凸を無くして
自分以外との摩擦を
完全に無くしてしまえば

家族も
大切な人も
欲望も希望も
命すらも

本当に本当の
持っているすべてを
手放してしまえば

苦しさというものからは
解き放たれるのだろう

でも
そこまでして手に入れる
全く苦しみのない
自分の人生を想像したところで

それが
良いものとは
俺には思えないのだ

しがみついて
藻掻いているほうが

人から見れば
どうでもいいような
重い宝物を
後生大事に背負っているほうが

ひねくれた
俺の性には合っている

そして

あなたも
きっと
そうなんだろ

辛くないに
越したことはないが

辛いのは
諦めていないからだろ

そのことを
あなたは
あなたの肯定につなげてほしい

俺もそうするから

ていうか
俺の未練がましさは
筋金入りだからな

どうせそのうち
死ぬんだから
そしたら全部
手放せるんだから

それまでは何も諦めない

崖に
握力全開でしがみついて
くだらないことを
ずっとずっと
叫び続けるから

あなたは
泣くのをやめて
笑って
俺の足首に
しがみついていてくれ