『ジョニーぶらり旅』グアム編③
二日目。心地よく朝日と共に目覚め、前日にスーパーマーケットで買っておいた、即席うどんを食べる。
一口食べたところで、食欲を無くした。スープの味が日本のうどんではなかったのだ。パッケージには日本語でうどんと書かれている。具材も、わかめが入っていて日本と変わらない。なのに、スープがチキンの味なのだ。しかも美味しくないチキンの味だ。
「昨日道ばたでみかけた鶏のほうがうまいぞ」
もう一度パッケージを見てみると、「チキン風味」と書かれている。
決めた。
もう二度と日本の味を外国で求めない。
映画館のあるショッピングモールを目指して、いざ出陣!
日本の夏のように暑く、汗がでてくる。
空港を迂回して歩かなければならないので、片道7キロあった。
道中、どうも横断歩道のシステムが分からなかった。ひたすら待っても信号が変わらない。すると車のお兄さんが、渡っていいよと合図をくれた。
どうやら信号が変わるまで待つ必要がないみたいだ。
しかし何度横断歩道を通っても、しっくりこない。タイミングを見計らって通るなんて、危ない。そもそもグアムでは歩いている人をあまり見かけない。自転車すら、数える程しかすれ違っていない。なので、他の人の渡り方を見ることができない。
悩みながら歩いていると、交通量の多い繁華街へ出た。ここなら歩いている人を見つけることができる。
一人だけ歩行者を見つけ、その人が渡るまで待つことにした。
ボタンを押していた。
ボタンがあるのか…。さっぱり気が付かなかった。信号の柱を注意深く見ると、確かにボタンがある。しかしそのボタンは日本のような黄色いボックスなのではなく、本当の金属のボタンだけだった。色が同化して分かりにくいの極みだ。
誰が道を歩きながらボタン探しゲームをしたいんだ。一目みてわかるようにしてくれなきゃ困るだろ。
ショッピングモールまであと数キロのところで、熱中症になりそうなくらい体調が悪くなってしまった。汗もかなりかいていたので、このままでは脱水症状を起こしてしまう。急いでガソリンスタンドの売店に駆け込み、毒みたいな青い液体のスポーツドリンクを買って飲んだ。
砂糖の味しかしない。甘すぎて気分が悪くなる。なんて美味しくないんだ。グアムに来てから、美味しいものに出会っていない。
そうこうしているうちに、衝撃的に大便がしたくなってきた。もうヤツは出撃用意ができている。満州事変を起こした関東軍のように、歯止めがきかなくなっている。
私の脳内大本営は、この非常事態に対処しきれず、パンクしてしまった。腹が痛くなり道端に座り込んでしまい、冷や汗が止まらない。呼吸が乱れ、パニックになった。熱中症でこのまま体調が悪化し、この先どうなるかわからない。自分は誰にも頼ることができずに、このままだめになるのか。そう考えるとなおさら呼吸が荒くなった。
顔をあげると、目の前に高級そうなホテルがあるではないか。
「よぉし、ここで借りよう」
私はその高級ホテルで排出することを決めた。
被弾しないよう、中腰でホテルのフロントに助けを求めた。
「Could I use restroom?」
英語で話しかけるも、コロナ対策でパーテーションが設置されているため、私の発音が遮断され聞き返されてしまった。
「Restroom! Toilet!!!!!!!」
人生で初めて英語で叫んだかもしれない。
「トイレ?あの、このカギで開けてください。終わったら、あの、カギしめてください」
まさかの日本語が分かるフロントの人がいた。
特別軍事作戦を個室で完遂することができた。あのホテルマンには勲章を授与しなければ。
「日本語上手ですね」
「日本大好き」
「ありがとう、嬉しいです」
「でも全然日本語わからない」
「うそ、そんなことないですよ。うまいですよ」
「うまいって何?」
「ええ、うまいってのは…つまり…」
「うそうそ、ジョーダンだよ」
そのホテルマンはかなり日本語が達者だった。面と向かって日本大好きと言われると、少し照れる。
そして、タクシーも呼んでもらった。タクシーが到着するまでも、とても親切に対応してくれたので、しっかりとチップを払おうとしたところ、
「No no no, just have fun!」と断られてしまった。
とても助かったのでチップを渡したかったのだが、受け取ってもらえない。となると、ここは日本人としてしっかりとお礼をするしかない。
私は帽子を脱ぎ、深々と頭を下げ
「Thank you so much. ありがとうございました」
と伝えた。
日本人として綺麗なお辞儀に見えていたら幸いだ。
こうして、紆余曲折しながらショッピングモールにたどり着くことができた。
暑さで体調が悪化しそうだった私にとって、冷房の効いたタクシーはとても快適だった。タクシードライバーにチップを払うととても喜んでくれた。
ショッピングモールに入ると、匂いが全く違った。南国の匂いというか、アメリカンな匂い。売っているものはアメリカンなものだらけ。とても心地が良い。最高だ。
一周してから、映画館に行きチケットを取った。店員さんがとても美人な黒人の方だったので口説きたくなったが、仕事中だったのでやめた(びびったのではない…)
そして
上映まで時間があるので
私の人生で一番好きな
タコスを食べることにした。
タコス
タコス
タコス🌮万歳
次回 タコス大先生を頭から食らう。
つづく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?