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ヒッチハイクで大阪から博多まで行った話

10年ほど前、思いつきでヒッチハイク旅をしたことがある。
大阪発博多着、男2人で三日間の行程であった。
ただの思い出話だが、ヒッチハイクという行為に興味がある酔狂な人の参考になればと思い、
当時の記憶を掘り起こしながら書いてみよう。

【ヒッチハイクを敢行したきっかけ】
自分は決してアクティブなタイプではなかった。
意識が高かったわけではないし、海外どころか国内旅行もろくにしないものぐさだった。
変革より現状維持、イノベーションよりステイブル(同じことを英語で言い換えただけですね)。
そんなごく普通の大学生だった自分にも、就活というイベントが迫ってきていた。
特にアピール出来る題材も無く、
「何かネタになるエピソードを用意しないとな〜」と芸人のような悩みを抱えて過ごしていたある日、
クラスの友人から、ヒッチハイク旅を持ちかけられた。
今にして思うと、ヒッチハイクをしたからといってそれが就活に役立つわけもないのだが、
なぜか自分にはそれが天へと続く蜘蛛の糸に思えたのだ。
二つ返事で参加を表明した。

【ヒッチハイクレースのルール】
思いつきで立ち上がったイベントだが、賛同者は意外に多く、企画者の友人含め6人の馬鹿が集まった。
気を良くした企画者は、ヒッチハイクにゲーム性を持たせる提案をしてきた。
ルールはざっくり下記。

・チームは2人一組の計3チーム
・スタートから3日後の夜、博多駅で集合
・集合時の各チームの持ちポイントによって勝敗を決める
・最初に博多に着いたチームに100ポイント加算
・ヒッチハイクの車を乗り換える度に10ポイント加算
・各都道府県に1つスポットを設け、そこに行けば30ポイント加算(ex. 福岡なら太宰府天満宮)

今にして思うと、なかなか良くできたルールだ。
一位のチームは最下位のチームに、博多の夜での飲み代を出してもらうとか、そんな取り決めだったと思う。
実に学生らしい見返りだ。

【ヒッチハイク初日】〜スタート編〜
大学のキャンパスがスタート地点だった。
3チームが集まり、大学の広場で記念撮影。
普段何気なく通ってるキャンパスが、まるでゲームの始まりの町のようでワクワクしたのを覚えてる。
サンタローズ大学だ。

チームのメンバーは、準備段階でくじ引きで決めていた。
自分の相方は、大学生にしてはかっこつけたところのない、穏やかで物静かな男だった。
長旅を一緒にするにはうってつけの相手と言えた。
(ちなみに、本イベントに参加を希望していた女の子がいたが、安全面を考慮しお断りとした。
これも今にして思えば実に賢明な判断だった。)

RPG気分で意気揚々と大学を出て、比較的車が多く通る道へ移る。
そしてそこで疑問が湧いた。
ヒッチハイクってどうやるんだ?
テレビや映画では、親指を立ててアピールしているが、そんなので車は停ってくれるのか?
砂漠沿いのハイウェイや人通りの少ない山道ならまだしも、一般道でヒッチハイクをして大丈夫なのか?
やばい人間だと思われるだけではないのか?

ヒッチハイク、言うは易し、するは難しなのである。

相方と相談し、まずはコンビニで画用紙とサインペンを購入した。
画用紙に「博多」と書き、歩道から車に見えるように高々と掲げる。
人生初ヒッチハイクである。
これだけで気分が高揚したのを覚えている。

しかしなかなか車が停まってくれない。
当たり前だ。
自分がドライバーでも、一般道でヒッチハイクをしている若い男なんて無視するに決まってる。
初ヒッチハイクの高揚感も束の間、早くも心が折れそうになっていたが…

画用紙を掲げてから30分後、なんと一台の車が停まってくれた!
ドライバーはナイスミドルのおじさまで、奥様とご一緒だった。
「にいちゃん達、何してるの?テレビ?」
そう聞かれ、相方と顔を見合わせる。
たしかにテレビ企画か何かだと思うのが普通の感覚だろう。
自分たちが平凡な大学生であること、思いつきでヒッチハイクでの博多行きを目指していることを丁寧に伝え、
不審者でないことを示す意味で学生証も提示した。
「画用紙の文字が小さくて読めんわ。あと、いきなり博多って言われても皆んな敬遠しちまうから、行き先を刻んだ方がいいんじゃないか?」
至極ごもっともかつ貴重なアドバイスを頂く。
「まあええわ。高速のサービスエリアの近くで良かったら連れてってあげるよ」
やった!ヒッチハイク初成功の瞬間だ!
何度も頭を下げ、2人で車に乗せさせて頂く。
車中では、乗せて頂いたお礼と共に、自分たちの身元の説明や、ヒッチハイクレースであることをお伝えした。
学生の拙い話を面白がって聞いてくれたお二人の優しさが実に染みた車中だった。
吹田SAの裏で降ろしてもらい、頭を下げて車を見送る。
初ヒッチハイク完了の瞬間だ。

無事吹田SAの裏に着いたものの、SAは基本的に車で行く場所である。
歩行者がSAに入るルートが当時は無かったため、そこで立ち往生となった。
フェンスの向こうに見えるSA。

しばし相方と思案したが、そこは学生である。
「フェンスをよじ登ろうぜ。そこまで高くもないし」
幸い、フェンスの周りには誰もおらず、監視カメラも無さそうだった。
この歳になってフェンスをよじ登る経験をするとは思わなかったが、そんなところもまた楽しかった。
フェンスを越えながら、いよいよ旅が始まったのだと実感した。

※思いの外長くなりそうなので、また気が向いた時に続編を書くかもしれないし書かないかもしれない。
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やる気が出ます。

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