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(雑だが少しは身がある話 3)保育園時代の息子に死ぬほど励まされた話


私の息子は現在15歳で、あと5年もすれば一緒にお酒が飲めるほどまでに成長した。私は彼を生んだおかげで、それまで全く意味不明の存在だった「男という生物」をまあまあ理解できた気がする。

女の子は生んでないので比較は出来ないけど、私自身が女だから、だいたい女の脳はわかる。特に際立つ男子脳の特徴としては、「本気で人を助けたい騎士道精神」ではないかと思う。

息子は小さい頃から戦闘ヒーローにハマっていたので(タロウやレオが好きだった)その影響もあるとは思うが、私は若い頃から、彼のこの騎士道精神に助けられてきた。

例えば虫が苦手な私に変わって退治してくれるとか、ザリガニ釣りが好きな私に何時間も付き合ってくれるとか、方向音痴なわたしと出かけるときは絶対息子が先に歩いてくれるとかだ。15歳の今となってはあまり一緒に行動すること自体が少なくなってしまったが、それでも私が生理痛のときはいたわってくれ、二日酔いで吐いているときは静かに水を持ってきてくれる。

そんな彼に死ぬほど励まされたときの話。


私は当時35歳位で、息子は3つか4つだった。
会社ですごく嫌なことがあった私は、その気持を引っ張ったまま彼を保育園に迎えに行き、食事の支度をし、お風呂に入れ、寝かしつけに入った。
いつもはいろんな局面で好き勝手する彼が、今日はえらく聞き分けが良いな、と思っていたら、布団に入った瞬間に小さい声で「ごめんなさい」と言う。
「え?なんで?なんか悪い事したの?」と聞くと、
「だってお母さん怒ってるから…」。
そう、私は会社での出来事を引きずって、その事が頭から離れず、よってずっと怒りを背負って家事をしていたのだった。何も知らない息子は、「お母さんが怒っているのは自分になにか非があったに違いない」と思ってたらしく、できるだけおとなしく静かにしていたというわけだ。

私は、私の一方的な不機嫌を収めようとしなかったことで、幼い息子に萎縮させてしまったことを恥じ、彼に謝った。

「ごめんね、お母さん会社で嫌なことがあって、それに怒ってたの。いーたん(彼の幼少時の呼び名)が悪いわけじゃないんだよ。」

すると息子はぱあっと顔を上げ、そして「どんな嫌なことがあったの?」と聞いてきた。息子にはまだよくわからないだろうと思いながら、事の詳細を述べると、彼は「それは、お母さんは悪くない!僕が、歌を歌ってあげる!」と言って、当時保育園で習っていた歌を高らかに歌ってくれたのだった。

この、騎士道精神み。
私はその歌にしみじみと励まされ、また、彼の持つ美点に静かに感動したのでした。

それから仕事で辛いことがあったときは、あの布団の中での彼の歌声を思い出し、その根幹の騎士道精神に励まされている。幼い彼の精一杯の騎士道っぷりを思い出すだけで、もうこの人生なんの見返りもいらないとすら思う。
また、それ以降、私が不機嫌を抑えきれない場合は、理由を息子に話し、息子とは無関係であることを伝えるようにしている。不機嫌を撒き散らすほど、愚かなことはないしね。

男子脳の最大の長所、騎士道精神を伸ばすことはモテにつながると、今から息子にしっかり教えていきたいと思う。


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