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CEC TOKYO イベントレポート #1

2020年1月22日、東京渋谷のヒカリエホールで開催されたRepro社主催のイベント「Customer Engagement Conference Tokyo」(以下「CEC Tokyo」)に参加してきた。期待値を超える素敵なセッションがガンガン続いた。レポートを3回くらいに分けて書く予定。

「カスタマーエンゲージメント」に込められたメッセージ

「カスタマーエンゲージメント」を冠したイベント名にしたのはRepro社のweb接客ツールのタグラインから? と、オープニングのプロモ動画を見て邪推。ところがイベントを通しで振り返ってみると、カスタマーエンゲージメント(=顧客と企業との心理的なつながり)を大切にするマーケティング施策の好事例共有会であった。邪推をお詫びしなくてはならない。

↑イベントのオープニングで上映された動画。一番最後のシーンに次の言葉が表示されている。
Customer Engagement Platform Repro

「カスタマーエンゲージメント」という言葉、オンラインマーケティング文脈では「いいね」やリツイート(リブログ)・コメントなどを指し、一般的なマーケティング文脈では、顧客とブランドとの間に構築される心理的接続=愛着・共感、またはブランドにまつわる体験(ブランドコミュニケーション)全てを指すとされるがCEC TOKYO公式Webには「現在の顧客との対話が短期志向にしているなら、それを変えなくては!」とのメッセージがある。──オンラインに限定しているわけではないのだ。アツい。

(引用)
もし、現在の対話が短期志向にとらわれているならば、あるいはそう感じているのならば、その意識を根底から変えていかなければならない。
探求しよう。これからのコミュニケーションの在り方を。

基調講演:バーガーキングのモバイルキャンペーン施策

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基調講演は「世界のCustomer Engagementの潮流」というタイトルのパネルディスカッション。米国からのゲストがおふたり含まれているという豪華さ!

● ファシリテーター: Repro CEOの平田氏
● パネル: 米国バーガーキングのモバイルアプリ運用の責任者 Nix氏
● パネル: Amplitudeの共同創業者兼チーフアーキテクトのWang氏
● パネル: Amplitudeの日本のカントリーマネージャー米田氏

Amplitudeはバーガーキングのモバイルアプリで利用されているユーザー行動分析ツールである(日本ではロケーションバリュー社が総合代理店)。

それぞれの自己紹介のあと、バーガーキングのモバイルアプリキャンペーンの話が紹介された。2019年のカンヌライオンズ広告賞でTitanium/ Direct/ Mobileの3グランプリ+複数賞を受賞した「The Whopper Detour(寄り道ワッパー)」。

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● 全米のマクドナルド(14000店)にジオフェンスを設定
● Burger Kingアプリのワッパーが¢1で買えるクーポンがそこでアンロック

というのがキャンペーン概要だ。「なぜわざわざライバル店に足を運ばせるの?」という疑問が湧くが、Googleによると2014年時点のバーガーキングの米国内店舗数はおよそ7400店。およそ2倍の店舗を持つライバルをモバイルアプリを通じて、まるでバーガーキングの支店のように使うという「煽り行為」に顧客を参加させるという仕掛けになっている。「共犯者体験」が面白いのだ。

しかもこのキャンペーン、意図的なのか偶然なのか、誤解が面白さを倍加させた。

● 「マクドナルドでワッパーが¢1で買える」という誤解口コミが流布
● 客がマクドナルド殺到。ワッパーを注文する人も大量発生
● 店員とのやりとりの様子が動画になって拡散して
● 中には「ぶっちゃけバーガーキングの方が好き」という店員まで出現

・・・とまあ、日本だと問題になりそうだけど、これがカンヌの広告賞3部門のグランプリを獲得! 上の動画見ると笑えるのだけど、単なる面白さだけじゃなくて、叩き出した数字にも一因があるのかもしれない(ここは未確認)。

その後のケアも奏功して↑この数字に注目。「ROI、37倍」!!

バーガーキングの施策設計プロセス公開

ReproのCEO平田さんがグイグイとNix氏に「売り上げの実数字教えて」などと入っていったのはすごくよかった(シナリオ通りなのかもしれないけど)。秘密情報をみんなで聞き出している感覚。イベントの満足度2割増くらいにしていただいた感覚。そしてどん、どん、と、すごいスライドが連続して登場した。

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バーガーキングアプリの施策設計のプロセスがつまびらかに。

ここでわたしを含む参加者多数が「ほおお!」と反応してしまったのがスライド上からふたつめの「NSM」=North Star Metrix(北極星指標)という概念。「ほかの星が動いても北極星は止まっているように、これだけは動かない、という指標」と説明されていた。

↑ググって見つけたこの記事は概念の説明だけでなく、どう設定するかまで書かれていて参考になりそう。なんとAmplitude社のNSMについて記述がある。

まったく同意。

そしてそのNSMを向上させる運用についてはこんなスライドが登場。

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バーガーキングモバイルが利用しているAmplitudeの画面

上のスライドにある1−3の手順をAmplitudeのデモ画面で説明してくれた。悪戯っぽさ丸出しの「Whopper Detourキャンペーン」の背景にこんな緻密なユーザー行動分析していた、というギャップに萌えた。

1.NSMを向上させているユーザー行動の特徴を分析
Cluster1やCluster2とあるグループは例えば「プッシュ通知をよろこぶユーザー」「プッシュ通知をうざいと感じるユーザー」といった感じのペルソナなのだそう。最左列に「Events Greater than Average(平均値以上のイベント)」という見出しと各ユーザーアクションが並ぶ。アクションの項目はモバイルアプリに特化されているから一般的な「カスタマージャーニー」項目よりも解像度高い。

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そして、

2. NSMを向上させる「マジックナンバー」を求める

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おそらく、下のような分析をしているように見える。

● 「音楽やビデオをシェアする」というアクションについての分析
● 「購買に意欲的」NSMとの相関係数 0.905(信頼度99%以上極めて高い)
● 2回以上実施している
● 一般的なリテンションレートとの比較コホートが右下にある

この画面からは「購買に意欲的」というNSMを向上させるユーザーアクションのマジックナンバーは「音楽や動画のシェア回数が2以上」となるのではないだろうか。しらんけど・・・。

Amplitudeはユーザーアクションからこうした「ペルソナ」を見つけるツールのようだ。見つけたユーザーをグルーピングし、それぞれのグループの特徴に応じた体験を(Reproのようなweb接客ツールなどを利用して)提供してゆく、というのが一連の流れになっている。

3.カスタマージャーニーから施策実行箇所を求める

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って・・・、おい。

激しく同感した! 使ってみたい。。。

広告キャンペーン企画するプランナーさんたちはこういう顧客分析の背景や課題などを理解した上で「どんだけバズらせるか?」を考ねばならない時代になってゆくのだろう。、、、という裏まで知った上で「Whopper Detourキャンペーン」を再度見てみるとまた印象変が変わってくる。

#2と #3に続く。


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