『シチリアーノ 裏切りの美学』

赤い旅団を取り上げた『夜よ、こんにちは』や第二次世界大戦時代のイタリアの独裁者ムッソリーニを取り上げた『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』など社会派作品を手掛けた巨匠マルコ・ベロッキオによる実在のイタリアン・マフィア組織の抗争とそのボスであるトンマーゾ・ブシェッタの半生を描いた『シチリアーノ 裏切りの美学』。音楽や家族・血族の団結が強いイタリアン・マフィアの様子などそこここに『ゴッドファーザー』の香りが立ち込めているが、長い法廷シーンでペースが鈍り、間延びがあり、バランスが悪い仕上がりになってしまった。

 

前半のトンマーゾの親族が対抗勢力に次々と襲われるシーンは『ゴッドファーザー』シリーズ並にシャープ且つ残酷。車から襲われるシーンは中から映したり、ヘリコプターを使った拷問や突如片腕を切り落とすシーンなど凶暴さにインパクトもある。

 

が、トンマーゾがブラジルで逮捕され、イタリアに強制送還される辺りから映画のテンポが著しく低下し、絵的に退屈な法廷シーンがだらだら続いてしまう。冒頭こそはまるで『ゴッドファーザー』の1作目のような空気があるが、以降は回想を挟みつつも大半はトンマーゾが老いてからのストーリーなので、『ゴッドファーザー』3作目のような口当たりになってしまっている。確かに捜査協力依頼からの裁判のシーンの重要さは分からなくもないが、主人公が若ければ成り上がり・かちこみシーンが見られただろう。

 

 

社会派作品が得意なベロッキオでもラディカルなジャンル映画は不慣れと見た。中盤がだれなければ『ゴッドファーザー』シリーズや『スカーフェイス』に並ぶマフィア映画になっただろうに。イタリアと『ゴッドファーザー PART III』が好きならとりあえずは見た方がいい。

 

評価:★★★

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