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【法律】司法試験を受験せずに弁護士になる方法?!

5月といえば、、、そうですね、司法試験のシーズンです!
今年も5月11日から4日間にわたり司法試験が実施される予定です。
「弁護士になるには司法試験に合格しなければならない!」と思われがちですが、今回は、司法試験を受験せずとも合法的に弁護士になることができる方法をご紹介します!

弁護士になるための一般的な方法

今年度は3,339名の猛者が司法試験を受験します。
https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00062.html
受験生のほとんどは、弁護士、検察官、裁判官になることを夢見て過酷な試験に挑戦しています(私も平成31年度の司法試験を受験しました)。

当然ですが、法律的にも、弁護士になるためには「原則として」司法試験に合格しなければならないとされています。
※正確には、司法試験に合格した者のみが司法修習生の修習(司法修習)を受講することができ、司法修習を修了した者のみが弁護士になる資格を得るとされています。

■裁判所法  第66条(採用)
司法修習生は、司法試験に合格した者の中から、最高裁判所がこれを命ずる。
■弁護士法 第4条(弁護士の資格)
司法修習生の修習を終えた者は、弁護士となる資格を有する。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000059
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC1000000205


司法試験を受験せずに弁護士になる方法

しかし、一般的には知られていませんが、司法試験を受験せずとも、いわゆる「特任検事」になれば、弁護士になることが可能です。
その根拠となる法律が弁護士法第5条第1項第3号です。

■弁護士法 第5条第1項
(法務大臣の認定を受けた者についての弁護士の資格の特例)
法務大臣が、次の各号のいずれかに該当し、その後に弁護士業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了したと認定した者は、前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有する。

■弁護士法 第5条第1項第3号
検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)第十八条第三項に規定する考試を経た後に検察官(副検事を除く。)の職に在つた期間が通算して五年以上になること。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC1000000205

何のことやら良く分からない条文ですが、かみ砕くと、「検察官特別考試」と呼ばれるテストに合格したうえで「特任検事」の仕事を5年以上続けた者は「弁護士資格認定」を受けることができることとなっています。

「特任検事」になる方法

「特任検事」とは、3年以上「副検事」を務めた者で、検察庁法第18条第3項に定める考試(「検察官特別考試」)に合格した者を指します。
そして「副検事」とは、裁判所書記官のほか、検察事務官や(警部以上の)警察官など特定の公務員を3年以上務めた者で検察庁第18条第2項に定める選考(いわゆる「副検事試験」)に合格した者を指します。
(難しくてすみません。。。)

なお、実際に副検事試験を受験するのは検察事務官という、検察官の仕事をサポートし、犯罪の捜査や裁判の遂行、刑の執行など一連の刑事手続を任務とする公務員であることがほとんどのようです。

■検察庁法 第18条
二級の検察官の任命及び叙級は、左の資格の一を有する者に就いてこれを行う。
 司法修習生の修習を終えた者
 裁判官の職に在つた者
 三年以上政令で定める大学において法律学の教授又は准教授の職に在つた者
 副検事は、前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者で政令で定める審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)の選考を経たものの中からもこれを任命することができる。
 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第六十六条第一項の試験に合格した者
 三年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職に在つた者
 三年以上副検事の職に在つて政令で定める考試を経た者は、第一項の規定にかかわらず、これを二級の検事に任命及び叙級することができる。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000061

まとめると、
①検察事務官を3年以上勤め「副検事試験」に合格して「副検事」になる。
②「副検事」を3年以上勤め「検察官特別考試」に合格して「特任検事」になる。
③「特任検事」を5年以上勤め「弁護士資格認定」を受ける。

ことにより、司法試験を受験せずとも、弁護士になることができるということになります!遠い道のりですね。。。

この制度を利用して弁護士認定を受けた特任検事は、令和3年度で6人、令和2年度で1人、令和元年度では0人とのこと。
実際にかなり狭き門となっています。
https://www.moj.go.jp/housei/hourei-shiryou-hanrei/toukei_nenkan.html

昔はいろいろあった弁護士になる方法 ①教授・准教授

平成20年3月31日までは、通算して5年以上、法学部又は法学の大学院の教授または准教授を務めた者は、司法試験に合格せずとも弁護士になることができていました。
大学の先生方は、専門分野については弁護士よりも何倍も法律に詳しいですし、研究の一環として法律実務に触れる必要があるので、このような制度が存在したようです(実際に大学の先生が司法試験を真面目に受験したらみんな合格しそうな気もする、、、)。
しかし、この制度については「特権的だ!」との批判があったそうで、現在では廃止されています。

■平成16年改正前弁護士法 第5条第3号(弁護士の資格の特例)
左に掲げる者は、前条の規定にか かわらず、弁護士となる資格を有する。
三 五年以上別に法律で定める大学の学 部、専攻科又は大学院において法律学の教授又は助教授の職に在つた者。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/00519490610205.htm

昔はいろいろあった弁護士になる方法 ②帝大・旧東大卒

法律を遡ってみると、なんと、戦前では、帝国大学の法律科卒業生と旧東京大学(1877年に設立されてから1886年に「東京帝国大学」に改編されるまで)法学部の卒業生は、司法試験を受験せずとも弁護士になることができたようです(私も知りませんでした、、、驚き!)。
旧帝国大学の法学部生はエリートとして尊重されていたんですね。
ここでも特別扱いされている(旧)東京大学はやはりすごいです^^;

■旧弁護士法 第4条 
左に掲げる者は試験を要せずして弁護士たることを得。
第一 判事検事たる資格を有する者又は弁護士にして其の請求に因り登録を取消したる者
第二 法律学を修めたる法学博士、帝国大学法律科卒業生、旧東京大学法学部卒業生、司法省旧法学校正則部卒業生及司法官試補たりし者
https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E6%B3%95%EF%BC%881893%E5%B9%B4%EF%BC%89

また、戦前は、法学博士を取得していた者についても、試験が免除されていたようです。

まとめ

現在では、唯一、検察事務官から特任検事になることで弁護士認定を受けるというルートを辿ることにより、司法試験を受験せずとも弁護士になることが可能です。
もっとも、実際に特任検事から弁護士認定を受けることができる方は非常に限られているので、司法試験を受験するより過酷な道のりと言っても過言ではないですね。
今回は、司法試験に関するプチ雑学でした。

おわり

追伸
早稲田大学法務研究科でゼミを持たせていただいた皆さん、精一杯頑張ってください!
皆さんの実力と努力が正当に評価されることを期待します。
応援しています!!!

2019年9月10日司法試験合格発表の図(法務省)

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