見出し画像

僕らをつなぐもの

なかなか人を好きにならないのか。
好きになっても実らないものをすぐ消去してきたのかは、分からない。

ただこんな自分にも思い出せるいくつかの恋がある。
少し背伸びしてしまうような。
後ろから見る襟足をとても愛おしく思うような。

その人は、友達の友達だった。
友達のアップする写真によくいたり、話を聞いていて優しそうだし、雰囲気がいいなあと思っていた。

インスタで繋がっていて、やり取りをしていて会えることになった。
新宿三丁目のカウンターのある居酒屋だったと思う。

初めまして。
やっと会えたねなんて話をしながら、お店に入る。
お互い共通の友人がいるという時点で、話が合わない訳が無いし、
ラフな感じの初めましてだった。
一つだけ年上のお兄さん。

実際に会うと分かるものがあると思う。
空気感。写真との誤差。服のセレクト。声色。

あ。違う。とか。
あ。好き。とか。

まあ、どちらかなのだけど。

この時は、あ。好き。と思った。

お店の人に2人ですと伝えると、カウンターを案内される。
横に座って、嫌いなもの何かある?など話をしながら
とりあえずの生で乾杯。

いくつか料理も頼み、仕事の事やタイプの話、休みの日何をしているかなど、リアルした時にする当たり障りのない話をする。

本当に興味がある人との会話は楽しい。
もっと知りたい話したい、触れたいと思うから。

カウンターの横並びという事もあって、段々打ち解けて
ちょっとHな話なども小声で織り交ぜて、耳元で話すようになっていたり
お酒も進んでほろ酔いで、またまた〜と肩を触ったりするようになってた。

お互いとても楽しかったと思う。

そんな中、ふとした沈黙の後にカウンターのしたで、ぎゅーっと手を握られた。
驚いて横を見ると、恥ずかしそうに笑っていた。
カウンター横並びの正しい使い方を知った夜だった。

手と手って不思議なもので、言葉ではない気持ちが伝わることがある。
体と体をつなぐものじゃなく、手は心と心が繋がるような。

もっと話たい、一緒にいたいと思いながらも、少し遠くに住んでいたので、
1件目のみでバイバイした。これは長くいることで、ボロが出るからというのもある。楽しいうちに解散。

100点満点のリアルだった。完全に好きになっていた。

好きな曲を聞いて、その曲を何度も何度も繰り返し聞きながら歩いてゆっくり噛みしめながら帰った。

リアルの後に、もう一つこれはいいリアルだったのではないかと思うことがある。

同じタイミングで、ラインなり、DMなりが(送って)届いた時。
相手も同じ気持ちだったのだなあと。

帰り道もずっとラインのやりとりは続いた。
次は何しようねと。

それから何度も会うようになり、彼の家でも
自分の家でもセックスもした。とても優しいセックスだった。

交際の前の性交渉パターンである。



答え合わせなんて永遠にできるわけないけど、
結果的にお付き合いは出来なかった。

好きすぎても良くないんだと思った。

自分の体調面の不調がきっかけではあったけど、連絡も少なくなっていった。相手の仕事が大変だったのもある。
そんな中いつも時間を作ってくれていたわけだけど。
それは気持ちがあってこそだろうし、タイミングもあったのだろう。

最初が出来すぎていたから、あとは下がる一方だった。


それから、何年かたってから、1回だけ江ノ島デートをした。
カメラ教えてと言われて写真を撮りに。

この人が好きだったのかと不思議な感覚で。
ご飯を食べて話して、とても穏やかな日だった。

昔のように、好きが先走ってしまうような感じではなく。
あれから新しい恋を経て、自分も見え方が変わったんだと思った。

ちゃんと過去になっていて安心もした。
写真も撮らせてもらった。
すごくいい写真が撮れた。

当時は撮ることができなかった写真。



叶わなかった恋が永遠に輝き続けるのは、自分の中でどんどん美化されて
いい思い出だけが残るからだろうか。

それでも好きという気持ちになれたことに感謝したい。

そしてあの頃、付き合えなかった後に心に誓ったことがある。

やっぱり交際してから性交渉だなと。
大切な出会いであればあるほど。
大事にしなければいけないと。

まあ、全てはタイミングなのだろうけど。


まともな人間になってまた恋したい。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?