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キャリア形成の不平等~能力開発と雇用形態~

こんにちは。

ネットや書店の多くで、キャリア形成とかキャリアデザインなどの言葉が多くみられるようになって、もはや違和感なく当たり前のようにキャリアが世間に浸透してきました。私自身も、このnote内で多くのキャリアに関する記事を書いていますし、多くのキャリアコンサルタントがキャリアについての記事を書いています。そこで、本記事では、キャリアというものをいくつかの視点からみて、現在の日本社会における私たちの働き方や将来のキャリアにかんする見通しについて考えを述べてみたいと思います。今回もよろしくお願いいたします。

リスキリング

まず、リスキリングについて考えてみます。リスキリングについて経済産業省は次のように述べています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

学び直しを意味するリカレントやスキルアップとは違い、これからの新しい挑戦のため、すなわち自身のキャリア形成のために必要なのがリスキリングであると私は見ています。同じ転職を目指すのでも、同職種同業種への転職というよりも、異職種異業種への転職を促す目的が含意されているようにも思います。つまり、労働力の流動化に必要なことのひとつにリスキリングが挙げられているとみてとれます。


能力開発の不平等

厚生労働省の、令和3年度「能力開発基本計画」における事業所調査では、計画的なOJTを正社員に対して行った事業所は59.1%で、非正規社員に対しては25.2%となっています。つまり、事業所の多くは正社員に対しては能力開発のためのOJTを推進していますが、非正規社員に対しての能力開発を実施している事業所は3割にも満たない状況です。

また、同調査ではキャリアコンサルティングのしくみを、正社員に実施している事業所は6割近くにのぼりますが、非正規社員に対してキャリアコンサルティングのしくみを実施している事業所は3割に届いていません。

これらのデータが指し示す意味は何でしょうか。総務省の「労働力調査」では、2020年の非正規雇用労働者が、役員を除く雇用者の4割近くの2090万人にのぼり、そのうちの230万人が正社員として働く機会を得られず不本意ながら非正規雇用を選択したとしています。

このようにみると、問題の輪郭がなんとなく見えてきます。確かに、これからの産業構造の変化や目まぐるしく変わる雇用・労働環境、急激に乱高下する経済状況から身を守るためにはリスキリングやリカレントといった能力開発が重要であります。しかし、現在就労している人でさえ、自身が勤めている企業や自分の雇用の状況によって、能力開発の可能性に差ができてしまっている現状があります。

確かに、雇用の不平等を減少させるための施策を政府がとっていることも理解できます。できるだけ、スキルアップやリカレントを実施しやすくする環境整備がなされているのも事実です。そのような努力がなされているのも認識しています。

しかしながら、現状では、多くの人が、自分が置かれている環境や状況いかんによって、自身の能力開発の促進について不平等さを感じています。特に、不本意ながら非正規雇用についている人は、正規雇用の人よりも多くのハンデキャップを背負っていることでもあります。

キャリアコンサルティングの不平等

やや古い資料ですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「労働政策研究報告書No.200キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」では、キャリアコンサルタント登録者の約4割が企業内において活動しているとしています。その多くが都市部の大企業において活動をしています。

適切かつ効果的なキャリアコンサルティングが受けられる環境もまた、大きな偏りがみられます。都市部以外では、多くの人がキャリアコンサルティングが受けられない状況であり、またキャリアコンサルタント登録者も都市部以外ではなかなか活動が行えないという状況でもあります。

現在多くの人がキャリアコンサルタント資格の取得を目指しています。その理由や状況はともかく、多くの人がキャリア支援の専門的知識とスキルを身につけ、それを必要としている人に自身の能力を活用したいと努力しています。しかし実際は、せっかく努力して、大金を支払って資格を取得しても多くの人がキャリア支援の職に就けていません。これは何を意味するのでしょうか。この問題の本質はどこにあり、この課題を克服する対策はあるのでしょうか。


今後に向けて

確かに、これからの産業構造の変化や働き方の変化に即応するためには能力開発は欠かせません。急激な経済・社会状況の変化に適応するために企業と個人双方の能力開発を促進する必要があります。

今年になってようやく、コロナ禍も回復の兆しが見えてはきましたが、いつまた、あのような世界的な不安定な社会情勢に見舞われるかしれません。私は、職業能力開発の促進やキャリア形成推進の社会的環境整備の醸成には、正規雇用と非正規雇用それぞれに、より適応的な施策を実施することが必要に思います。現状正規雇用も非正規雇用も横並びでリカレントやリスキリングなどの能力開発が推進されていますが、現状では無理があるのではないでしょうか。

全体の約4割が非正規雇用として就労している現状をみて、この時点でキャリア形成のための土台に不平等さが生じています。非正規雇用者をいかに減らし、いかにして正規雇用者を増やすかといった政策やマインドも確かに重要ではありますが、それと併行して、いかにして非正規雇用者に能力開発の環境を整え、その機会を増やすことができるかが喫緊の課題のように思います。

もっといえば、労働力人口における完全失業者を減らし、就業者をいかにして増やすかも重要です。ここでは、よりもっと基礎的な能力開発をすすめるこことはもちろん、その環境整備とともに一人ひとりの動機づけの向上のための施策も必要ではないでしょうか。いかに転職するか、いかに能力を高め、ワークライフバランスを向上させるかという視点の他に、いかにして就業、就労できるかという視点も重要になってきます。

今回の記事では、私なりの労働環境や雇用形態、能力開発の促進に関するっ施策について、私なりの考えを述べました。ちまたではリスキリングという言葉が多くみられるようになり、キャリア形成という言葉ももはや当たり前のようになじみが出てきました。しかし、私の肌感覚では、その実施状況はまだまだ道半ばであると感じています。その問題の背景には、人々が置かれている環境や社会から受ける影響に差があり、不平等さが根深く横たわっているように見えます。そのような状況を鑑みて、いくつかの調査のデータを用いて私なりの見解といいますか、自分なりの考えをまとめてみました。


今回の記事はここまでとします。

ご意見等ございましたらコメントいただければと思います。
本記事はあくまで私見であることもご了承ください。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
それではまた次回、よろしくお願いいたします。

(資料)

  • 厚生労働省の、令和3年度「能力開発基本計画」

  • 独立行政法人労働政策研究・研修機構の「労働政策研究報告書No.200キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」


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