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サウナ施設を作りたい方向けアドバイス2024年完全版。

近年、ありがたいことにサウナ施設をつくりたいというオーナー様からご連絡をいただいたり、繋がらせていただくことが増えました。

弊社はまだ3年目のヒヨッコ会社ですが、こうしてお問い合わせをいただけることはありがたいことです。

さて、弊社では温浴施設のコンサル、設備コンサル、設計、設備やアメニティの販売まで、お風呂やサウナに関する事業を幅広く展開しています。

私自身、温浴業界で15年ほどの経験を積んできました。
特殊なこの業界で、シャンプーから大型設備までの営業マンとして、
時には運営やコンサルの立場で、日本、それから中国を筆頭に海外でも
数多くの温浴施設プロジェクトに参画してきました。

その中で私が感じたこと、今まで書いてきたブログと重複するところがあるかもしれませんが、
完全版?として書いていこうと思います。


今までのサウナ関連のブログはこちら。

投資や副業としてサウナ事業は儲かるのか。|株式会社JNG 江内谷(エナイダニ) (note.com)

インフラとサウナ ~サウナ事業は儲かるのか~|株式会社JNG 江内谷(エナイダニ) (note.com)

ちょっと真面目なサウナ施設の工事費の話。|株式会社JNG 江内谷(エナイダニ) (note.com)

中国製品を輸入してみませんか? ~実践編~|株式会社JNG 江内谷(エナイダニ) (note.com)

中国とサウナ。|株式会社JNG 江内谷(エナイダニ) (note.com)


一、サウナ業界の現状と開業のコツ。

まず、2024年現在、私が思うサウナ施設の市場についてお話をしたいと思います。

正直に言って、サウナ施設は飽和状態に近づいていると私は思います。
首都圏であったり、都市部では既に多くの新旧サウナ施設がしのぎを削っている印象があります。

それに、サウナ施設にとって最大の障壁になるのは、スーパー銭湯がサウナエリアでのイベント等を強化している点ではないでしょうか。

当然のように、スーパー銭湯のほとんどには、サウナ室があります。
サウナブームも相まって、多くのスーパー銭湯で連日のように、サウナイベントが行われています。

話は少し逸れますが、、
サウナ施設に投資しようとするオーナー様の中には、
       「うちのサウナは特別だからスパ銭とは違う!」
と言い切る方が、相当数いらっしゃいます。

私はこれは大きな勘違いだと思っていて、ライバルの定義を、重複する客層の多さとして考えれば、
コンビニはスーパーマーケットのライバルになり得ますし、ラーメン屋と蕎麦屋も近隣にあれば昼食時は明らかなライバルです。

施設の運営形態によっては、ライバルの程度(売上に対する影響度)は違ったとしても、スーパー銭湯とサウナでは、ある一定数の客層の相当数は必ず被ります。

むしろ、サウナ施設側からすれば、スーパー銭湯は10倍以上の客数を誇っています。
運営、経営目線から見ても、これをターゲットにしない手はありません。

主要な客層やコンセプト、客単価も違うかもしれませんが、仮に近隣のスーパー銭湯客の1%を吸収できたとしたら、小規模なサウナ施設の売上は10%上昇すると見ていいでしょう。
規模や運営形態は違えど、軽視してはいけません。

話を元に戻します。
出店立地にもよりますが、お風呂の種類も豊富で、施設も大きく、食事も休憩もできるスーパー銭湯がサウナイベントを強化すれば、サウナ施設にとっての脅威でしかありません。

こうした前提を踏まえると、サウナ施設に投資の対象としてメリットがあるかないかでは、厳しい話、私は簡単ではないと思っています。


一方で、温浴業界の歴史を紐解いていくと、ポジティブな要素もあるとみています。
80年代の健康ランドブーム、2000年のスーパー銭湯ブームが温浴業界の一時代を築いてきました。

ここ数年のサウナブームはこのいずれにも勝るとも劣らない、特大ムーブメントになっています。
特に強調できるのが、若年層のサウナ支持の多さです。

具体的な数値がある訳ではなく、あくまで私の体感ですが、
一昔前であれば、スーパー銭湯のサウナ室は40代~70代まで比較的年齢の高めな客層が8割以上でした。
今では俗にいう平日のアイドルタイムでも40代以前のより若い客層が5割近く、夕方以降は7、8割の客層が若年層で占めるている施設もあります。

若者層にサウナ愛好家が多いこと、そして認知度の高まり方は異常です。

単なる一過性のブームではなく、すでに一般的な趣味として定着しており、さらに若年層の取り込みはブームの長期化を意味します。
これは、サウナ業界の最大の強みです。

そうしたことを踏まえると、サウナ事業への需要自体はまだまだ底を見せていません。

先述の通り、地域によっては若干の供給過多の傾向も見られますが、サウナ施設そのものの強みがあれば、戦いに加わることは十分に可能であるとも指摘できそうです。

また、それでも投資してみたい!自分の店舗を作ってみたい!と思わせるのがサウナ自体の魅力でもあります。


少し話は逸れますが、温浴業界の従事者として、サウナへの盛り上がり方は素直に嬉しいことである反面、心配な面もあります。

それは先ほどから何度か指摘しているように、新規店舗の出店で過当競争になっている傾向です。
この過当競争になっている最大の原因は「参入障壁が低いと思われがち」な点だと強く感じています。

投資計画の段階でオーナーと予算感の話をさせてもらうと、毎回少し甘めの予算を組んでいる傾向が明らかです。
施設を安く作ることは投資面を考えればとても大事ではありますが、ライバルに打ち勝つにはある程度強みを打ち出すための予算も必要です。

また、予算を組む上で「一平米あたり○○円」といった基準が示されることがあります。
ですが、ことサウナ施設においては、休憩スペースの比率であったり、浴場の大きさ、サウナの形態(個室?数量?面積?)、その運営プランニングによって、一概に上記のような予算基準を示すことが難しいです。

これらを踏まえて、もし投資をされるとなれば、やはり計画段階でしっかりとした知識や運営の基礎を作っておくべきです。

どこに予算をかけて、どこの予算を抑えるのか、こうした点でもこれからのアドバイスが少しでもお役に立てればと思います。


二、やっぱり外せない温浴設備。

運営、建築、内装、設備。

この4つは、サウナ施設を経営する上で、大きな柱になるポイントです。

その中でも私が特に強調したいのが、設備について、です。

私自身が得意な部門でもある訳ですが、やはり温浴施設、サウナ施設の中での「設備」は、非常に特殊であると言えます。

ボイラー、ろ過装置、熱交換器、チラーやポンプや電気制御盤。

日常生活ではなかなか関わることのない面々でもあります。

これらの見積書や設計図面を、素人(と、あえて言わせていただきます)が、時間をかけてマジマジと見つめても、なかなかそれを理解することはできません。

実際に私が業界に入ったばかりの時も、設備ってなんか重厚なイメージで、超文系の私は特に「苦手~」って感じでした。


もちろんそれらを学びつつ、開業を目指すことができれば最高です。

ですが、現実問題、オーナー自身がそれを一から学んでいては、時間がいくらあっても足りません。
(本業の関係などで電気や機械などに造詣が深い方もいらっしゃいますが)

実際、様々ある設備にも良し悪しがあり、この設備を使えば間違いない!と、一概には言いにくいものです。

また、開業してからでは変更が難しいのも設備の厄介なところです。

このシステムは複雑すぎる、使い勝手が悪い、取替工事が莫大になってしまう等々、開業後に設備で頭を悩ませるケースは非常に多いです。

そんな設備の選定で、端的に言えることが一つ。
           あまり欲張りすぎないこと。
です。


「よし、サウナ施設をつくるぞ!」となった場合。

オーナーもサウナ好きが多いため、
まず、サウナを3つ作って!
水風呂と広めの熱い温度の浴槽と、、あれもこれも作るぞ!

と、妄想してしまいます。

オーナーにとって、理想のサウナをつくるための一歩。
一番楽しい時間かもしれません。

これ自体、全く当然のことで、実際に「今、こんなイメージで施設を作ろうと思っているんですよ!」とウキウキ顔のオーナー様から相談を受けることが多いです。

中立的、いやむしろ、厳しめの意見を述べさせていただくことが多い私。

なぜなら、サウナだろうがグランピングだろうがラーメン屋だろうが、投資があって、売上があって、利益があってビジネスが成立するからです。

そして、少しでも永く続けてほしいからでもあります。

そんな立場でモノを言わせてもらうので、「これだけ作ると設備だけで○○円くらい予算が必要になると思いますが、ご予算は合いますか?」とお伝えします。

すると多くの相談者さんは、突然顔をビンタで引っ叩かれたように夢から現実世界に戻られます。
不機嫌になられる方もいらっしゃいます。

そりゃそうですよね。
幸せな妄想をしている最中なのに、いきなり現実に強制的に引き戻されるのですから。

先に断っておくと、私はサウナも風呂も大好きですが、あちこちと遠征するほどのマニアではありません。
なので、サウナとお風呂と同じくらいお金も好きです(笑)

要するに、サウナ好きなオーナーこそ、最初は夢見がちなプランニングになりがちな傾向は否めません。

もちろん、他社との差別化は必要ですので、それ自体は決して悪いことではありません。
いくつも体験されたサウナ施設の中で、これは良い!と感じた部分を取り入れることも大事でしょう。

しかし、そのプランニングで莫大な予算が必要になってしまうのが、往々にして設備の部分なのです。


昔ながらの小さな町の銭湯が数多く廃業。
開業時は大盛況だった大型健康ランドも続々と閉店。

こうしたニュースを目にしたことがあると思います。

以前に比べてお客さんが減った、売上が減った、という前提の原因はあります。

ただし、
                                   廃業や閉店の決定的な原因となる、
                           そのほとんどは、
         設備の老朽化を立て直すための資金確保
が、難しくなるからです。

売上が減れば人件費や経費を削減したり、売上を上げるために宣伝広告に力を注ぐでしょう。

しかし、毎日(もしくは毎年)の売上の何十倍もの資金投資が突如として必要になったとき、再投資することができる施設は限られています。

また、単純な資金的な問題だけではなく、
今と比べて昔の設備にはアナログなシステムも多い、
利便性が悪く改造が難しい、
担当者が高齢化し引継ぎが難しい、
設備搬入経路が確保できない、など
現実的に更新が難しいといった、問題点も多くみられます。


三、設備に関連するコスト。

設備のイニシャルコストは、「浴槽の数」「サウナ室の数」等に大きく関わってきます。
ランニングコストは、主に「浴槽水量」や「サウナ室の大きさ」等に関係します。

少しだけ簡単に解説をします。

イニシャルコストは浴槽の種類分だけ、ろ過設備の台数が増えます。

例えば、
・シングルの水風呂1つ
・17℃の水風呂1つ
・40℃の温浴風呂1つ。

ろ過ポンプ、ろ過装置、熱交換器といったろ過循環システムが1つの浴槽に1つずつ必要になります。
この場合は3台(3セット)のろ過設備が必要になります。

ということは、スーパー銭湯は相当な台数のろ過設備があるんだなあ。と、頭の良い方なら思われるかもしれません。

が、実はこのろ過設備は、「同温度、同水位、同水質」であれば、連結させて1台にすることが(一般的には)可能です。

例えば、スーパー銭湯で、男性と女性の浴場に、
・水風呂
・シルク風呂
・炭酸風呂
・岩風呂
・壺風呂
5種類✕各2(男女)で10個の浴槽があったとします。

男女の浴槽が上記の条件で連結できるとすれば、単純にろ過システムは5セットにできます。

また岩風呂と壺湯が「同温度、同水位、同水質」であった場合、連結させることもできます。
パッと見た感じでは、たくさん浴槽がありますが、実は4セットのろ過設備で間に合ってしまう可能性さえもあるのです。


それに対し、男性専用サウナなどでは、各浴槽が同じ温度ではあまりに味気がありませんから、基本的にはそれぞれの浴槽がそれぞれの温度であることが多いと思います。

すなわち、パッと見た浴槽数も水量も多いスーパー銭湯ですが、ろ過設備に対する投資は見た目よりは大きくなりません。

サウナ施設の場合、上記の条件も相まって、浴槽数=ろ過設備台数になりやすく、比較して投資割合が大きくなります。

ちなみに浴槽水量はイニシャルコストにそこまで大きな影響を与えません。
なぜなら、5m3用の浴槽でも20m3用の浴槽でも、必要なろ過設備台数は変わらず、設備の能力が大きくなるだけだからです。

設備が一回り大きくなることよりも、一台増えた方がイニシャルコストの増加率が高いです。

設備の業界では
      「設備が一つ増えると、運営の手間が一つ増える。」
     「設備が一つ増えるとイニシャルコストが一つ増える。」

と言われます。

もちろん理想のためにはコストが必要になることも必然です。

大事なのは、それがどのくらいのコスト差に繋がるのかを把握し、コストと売上の天秤に掛けること。
そして、どこかにコストを削減できるようなポイントがないかを専門的見地で探ることです。

宣伝ではありませんが、是非弊社のような専門家にご相談ください。

ただただ理想を追い求めるだけでは、ビジネスとして欠陥が出てくるかもしれないということは、少なくともご理解いただけるかとは思います。


四、インフラについて。

サウナ施設にとって、設備投資は大きなイニシャルコストに繋がります。

しかし、予算が合わなければ計画段階でそれを変更するが可能ですから、それによって計画の根本が完全にとん挫するということは少ないでしょう。

一方でインフラ環境については、それが原因で計画自体がとん挫してしまうことも少なくありません。

ここで言うインフラというのは、
水、電気、ガス、それから耐荷重です。

これについても以前から触れていますので、それぞれ簡単に話をしていきます。

日本のスーパー銭湯の8割以上は、井戸水を使っています。
その理由は単純で、水道代コストが温浴施設を運営する上で大きなランニングコストに繋がるからです。

温浴施設やビジネスホテルなどで、蛇口部分に「飲用不可」などと注意書きを見たことはないでしょうか。
これらのケースでは井戸水を使用していることの証左です。

大浴場があったり、客室が多いなどの場合、使用水量が大きいので、ランニングコストを鑑みて井戸水を使用します。

しかし、井戸水を使用するためには、井戸を掘ったり、井戸を浄化する設備が必要で、少なくないイニシャルコスト(1,000万円前後)となります。

それらの投資を考慮しても、ランニングコストを削減するメリットがあるため井戸水を使用します。

逆に言えば、水道代のランニングコストは、ビジネスホテル、スーパー銭湯、そしてサウナ施設において、主要なコストであるということです。

最初から井戸があって、浴槽に適した水質が確保されているような物件の確保ができれば、サウナ施設の計画地としては、これ以上ないインフラ条件であると言えるでしょう。


電気はサウナヒーター、また水風呂のチラーに関連するインフラです。

例えば民家を改装してサウナ施設をつくります!といったような場合、その建物自体が大きな電気容量を有していないことが多いです。

そうなると、
小さい面積のサウナや水風呂しかつくれない、
水風呂を冷やすことができない、

といった可能性が出てきます。

電気容量の増幅工事は電力会社に依頼をすれば不可能でこそありません。
ただ、一般家庭用とは比べ物にならない増幅工事なので、申請コスト自体が莫大になる可能性が高いです。

もちろんランニングコストにも大きく影響する電気使用量ですが、電気容量が足りない場合は、そもそもサウナ施設が開業できない可能性さえある重要なインフラです。


それからインフラとして区分すべきかは微妙ですが、
サウナ施設を作るにあたって重要な基盤であるのが、
建物の耐荷重(積載荷重、床荷重)です。

この耐荷重の問題が大きなネックになるケースが、ビルインのサウナ施設でよくみられます。

サウナ施設で耐荷重が必要になるのは、密集エリアになるサウナ室もそうですが、特に要注意なのが水風呂などの浴槽です。

たとえば60㎝の水深の水風呂を作る場合、
単純計算で水だけで一平米あたり600㎏の荷重がかかることになります。
さらに、そこに人が出入りし、浴槽の石材など重みが加わります。

こうした構造計算は梁の位置など専門的な計算が必要となりますので、私では全く判断ができません。
構造設計士や、建築設計士に相談されるのが一番です。

耐荷重に関しては私は専門家ではありませんが、あくまでも、よく起こるトラブル、計画が頓挫してしまう部分として取り上げました。

この他にも、特にビルイン施設の場合、
・チラー設備(チラー設備はエアコンの室外機のように室外に配置する必要あり)の配置場所がない
・ポンプなど機械の騒音で上下階とのトラブルになる
・万一の漏水問題など
設備計画との折り合いに気を付けなければならない条件が多く存在します。

耐荷重にしても、水道電気光熱ライフラインについても、物件選定やプラン計画時の早期に適しているのかどうかを判断しておくべきインフラだと思われます。


五、設計プラン。

先ほど、運営、建築、内装、設備が4本の柱だと書きました。

パッと見た感じ、それぞれにどんな印象を思い浮かべるでしょうか?

運営は努力していけば何とかなると思われるかもしれません。
建築内装もインターネットで情報は溢れています。

近年はDIYも流行していますから、
「専門家に頼まずに内装は我流でやるぞ!」
「設備もアマゾンやネットで買えば安く仕上がる!」
などと考えられる方も少なくありません。

これらの発想は一概に否定はしません。
苦労はありますが、実際に安価で済むはずですし、創意工夫で仕上げていくことが、また施設の魅力に繋がるかもしれません。

いずれにしても、これらの柱、重要なだけあってアウトソーシングで専門会社に頼むと高くつきそうなイメージはあります。
できる限りの部分を自社ないしはご自身で対応することはコストカットとしては大事な取り組みだと思います。

しかし、私自身を驕って言うわけではありませんが、私とて15年もこの業界に携わってきました。
そうそう苦労なく温浴施設を作られては困ります(笑)

やはりそれぞれの専門性はそれなりに価値の高いものでもあります。


ここからは私の経験値での感覚ですが、設計プランを軽視されているオーナー様が少なくないように感じられます。

私は建築の専門家ではありませんが、温浴施設の専門家ではあります。

たくさんのプロジェクトに参画させてもらいましたが、今計画中です!というオーナー様から提出された平面プランを見て、失礼ながら
「これは、、素人が書いた漫画絵だな」
と思わせられることが、数えきれないほど多くあります。

サウナの壁が薄かったり、更衣室が小さすぎたり、シャワーブースが狭かったり、従業員や顧客導線、倉庫の大きさに至るまで。
枚挙にいとまがありませんが、私のような専門家の端くれでも一発で専門家が書いたかどうか分かります。

実際、サウナ施設の平面プランならば、サウナ好きの方なら何となく書けちゃうかもしれません。
ただ、それはやっぱり何となく、であって、実現性や合理性を意識したプランを表現するのは、かなり高い専門性が必要なものです。

多くのサウナ施設に出入りしているだけあって、オーナー様から、あれこれと専門知識っぽいものを披露されることも少なくありません。
ただ、やっぱり内から見るものと外から見るものの感覚は圧倒的に違うというのが、私の結論です。


何がどう違うのか説明しろ!と言われても困ってしまいますが、私の場合平面プランをザっと確認して見ているのが、、

・滞在時間と同時入館者数にあった浴場や更衣室の広さかどうか。
・従業員導線が考えられているか。
・機械室の大きさは適当か。
・リネンや清掃外注の有無、倉庫の大きさや配置。

まずこのあたりで判断します。
平面プランで大事なのは施設の考え方とかコンセプトとかではなく、一般的な温浴施設の常識と運営上の合理性の有無です。

たとえば、スーパー銭湯の更衣室。
入口がくねくねと2段階くらい曲がらなければならなくなっていませんか?
暖簾をくぐってすぐにロッカーが見えるようにはなっていないと思います。

平面上は一見すると無駄なスペースなのですが、誤進入や隙間から中が簡単に覗けないようにする、ちょっとした工夫であり、常識です。

それからありがちなのが、浴場付近にバックヤードや倉庫がないプラン
清掃やアメニティの補充といった煩雑な業務時短のカギになるのはバックヤード(倉庫)です。

温浴施設では少しでも簡潔にしたい業務の一つで、必ず浴場付近に配置すべきものです。

設備機械室も浴槽が複数もあればそれなりの面積が必要ですし、意外なことに、運営中にも頻繁に出入りします。

それらの合理性がパッと見て専門家のものか、素人のものかはすぐに分かるんです。

なぜこの平面プランが大事なのかというと、計画途中における少しの調整から、大規模な変更になってしまう事態があるからです。

たとえばバックヤードを配置するのを忘れた、となって、5m2のバックヤードを作ったとします。
すると当然、そのスペースをサウナ室だったり、浴場通路だったりを削る必要が出てきます。

そもそも5m2(1.5坪)のバックヤードでは人の出入りもままならない不十分なものですが、浴槽を5m2、サウナを5m2小さくするのは大規模な変更です。

どんな完璧な平面プランでも、その後にいくつかの調整や変更は生じます。
ですが、根幹が変わってしまうようなプランでは、イニシャルコストもランニングコストも大きく変わってしまいます。
投資額も変わってしまっては、そもそも計画に大きな影響を与えます。

施設の理念はプランの後からいくらでも追加することができます。
自己満足や理想ではなく、常識と合理性を平面プランの段階からきちんと取り入れておく重要性は強くお伝えしたい点です。


六、建築申請、消防や保健所への申請。

ここまで書き連ねすぎてしまったので、複雑なこのパートは簡単に触れておこうと思います。

サウナ施設は一般的に「その他の公衆浴場」という扱いになります。

同業種の居抜き物件で改装のみ、であったり、民家を改装した小規模な施設であれば別ですが、それなりの面積を保有した施設を作るには建築申請が必要になります。

サウナ室は防火区画をきちんと確保した施工が必要で、お風呂に絡んで設備や運営の指針を保健所に申請したり、講習を受ける必要があります。

それぞれの申請には専門的な設計図面が必要になります。

申請などと聞くと、窓口に行って話さえすればいいんじゃないの?と思われるかもしれませんが、実はそうそう簡単なものではありません。

法律や条例に照らし合わせて、役所側からは様々な要望が出されます。
それら一つ一つをクリアしなければ営業許可を得ることはできません。

そして、そのやり取りは専門的な応対になるため、建築設計会社であってもそれらの申請の担当者がいたりするほどです。

設計会社やコンサル会社にお願いすると高くつくだろうからと敬遠するのではなく、開業前後で許可が下りなかった、では大惨事になります。

専門家に動いてもらうでも、用意してある資料によっては安価に済むことも十分にあります。
重要なポイントでは、できる限り実績豊富な専門家にお任せすることをお勧めします。


七、ランニングコストの考え方。

さて、設備やインフラ条件を確認していくと、初期計画がおおよそ固まってきます。

そこで、ようやく見直してもらいたい部分がランニングコストについて、です。

またまたお金の話でウンザリしないでください(笑)

サウナ施設や温浴施設もサービス業ですので、家賃やスタッフの人件費が主要なランニングコストです。
それに加えて、大きなコストを占めるのが水光熱コストです。

サウナ施設にとって、この水光熱コストは他業種と比べてもかなり特殊な扱いになるので、特に注意が必要です。


運営コストを2つの分類に仕分けをすると、
毎月一定額になる固定的なコスト(固定費)
売上に比例する変動的なコスト(変動費)
に、分類することができます。

たとえばラーメン屋さん。
家賃と人件費、それから食材の材料費。
スープや麺を煮るためのガス代や、食器を洗ったりするのに必要な水道代。
細かい部分であればレジであったり、通信費などのコストもあります。

家賃、人件費、通信費などは基本的には固定費であり、材料費やガスや水道代などは基本的に客数(売上)に比例する変動費です。

一方でサウナ施設。
家賃や人件費は同じように固定費で、ラーメン屋さんと違って材料費はありません。

サウナ施設にとってラーメン屋さんの材料費に相当するのは、サウナ室や水風呂を構成するための水光熱費と言えるかもしれません。

が、しかし、この水光熱費は基本的に固定費に近い扱いになるので、要注意なのです。

シャワーによる消費水量や、人が入ることによって溢れる水、サウナ室の開閉による熱損失など、一定の水準以降のコストは客数に比例する部分はあります。

しかし、お客さんの人数に関係なく、設定温度通りの冷水、サウナ室の高温状態を保つためのコスト、サウナ施設にとってこれらのコストはほぼほぼ固定費です。


設備には欲張りすぎるな!と注意喚起をしましたが、ランニングコストに関連しても同様のことが言えます。

水深の深い水風呂には水道代、電気代が必要になります。
ポンプが動けば電気代がかかります。
大きなサウナ室にもヒーターの電気代(あるいはガス代)が必要になります。

そして、これらのコストは売上(客数)によって変動するのではなく、極端な話をすれば客数がゼロでもオープンさえしていれば必要なコストになるのです。
こう考えると大変恐ろしいモノです。

もう一つ恐ろしい話をブッコんでおくと、サウナ施設の固定費はなかなか削減することが難しいのが特徴です。

ラーメン屋さんであれば、スープを煮込む時間を減らしたり、メンマの数を減らしたり、少し値段の安い材料に変えたりすることも可能と言えば可能です。

しかし、サウナ施設の場合、今日はお客さんが少ないから、と言って水風呂を中止したり、サウナ室を生ぬるくする訳にはいきません。
もちろん少しでも固定費を抑える運営のコツはありますが、それが半減したりというまではなかなかいきません。

平面プランが大事だよーと前項で説明をしましたが、プランニング通りに、ある程度の固定費が必要になるのは避けようがありません。


一方で、この固定費ランニングコストを超える売上が確保できると、即ちそれが利益に直結しやすいのは、サウナ施設の良いところです。

例えば

家賃30万円
人件費30万円
水光熱費が毎月50万円
その他経費で20万円、
合計で130万円が毎月の固定コストだと仮定します。

この130万円が損益分岐点となります。
そして、損益分岐点を超えた売上の大部分が利益になります。

当たり前ではありますが、毎月当然のように損益分岐点を超えられる店舗が作れれば、安定した利益を確保することができます。

また、コンビニや飲食店などと違ってライバル店がひっきりなしに開業するような業種でもありません。
良くも悪くも、いったん開業さえしてしまえば、収益が比較的安定している事業でもあります。

宣伝広告や燃料費の高騰もあったり、設備のメンテナンス費用もあるので、ここまで単純ではないものの、比較的分かりやすく目標を定めることができ、損益勘定することが可能とも言えます。

したがって、この損益分岐点をきちんと見極めておくことは、サウナ施設を経営するにあたって何よりも重要な部分と言えます。


八、さいごに。

やはり書き出したら止まらなくなってしまいました。

冒頭の話に戻りますが、サウナ施設や温浴施設は参入障壁が低そうに見られがちです。

しかし、実際には開業に至るまでには幅広い専門的な知識が必要とされ、投資にも運営にも大きく関わっています。
電気や水道といったインフラに関しても、その他のサービス業と比べ特殊な扱いのコストになります。

簡単そうに思えても、なかなか開業できないのがサウナ施設なのです。

逆に言えば、ライバル店が続々と近隣にオープンするようなこともあまり想定しにくい事業です。
一方で、開業時が100%の客入りとして、その後特に何の運営努力もしないと自然と売上が落ち続けていく右肩下がりの業種でもあります。

理想の施設づくりの範囲内で、イニシャルコストを抑え、ランニングコストを綿密に計算し、損益分岐点を明確にしておくこと。
そして、いざ必要になる改装やメンテナンス費も考慮して、慎重な経営をしていければ10年も20年も続く施設を作ることが可能です。


最後に、私が様々な形でプロジェクトに参画させていただく中で、思わず悔しい思いをさせられることがあります。
それは、計画がすでに固まっていたり、進行中のプロジェクトに入り込むことです。

私は基本的にどんな立場でプロジェクトに参入するでも、少しでも施設をよくするために、あーだこーだと口を挟みます。
それはオーナー目線であり続けるからだ、と自負しています。

計画がすでに固まっていて、あなたはこれだけやっといてね、といった仕事の場合、正直な話、少しトーンダウンしてしまいます(笑)

ああ、私だったらもっとこうしたのになあ!とか夜空に向かって呟いても、後の祭りです。

ですので、もしこれからサウナ施設、温浴施設を作りたい!
というオーナー様がいらっしゃれば、少しでも早く出会いたい
と切に願っています。
鬱陶しくて細かいお金の現実的な話ばかりで、嫌がられることも少なくありませんが(笑)
熱意だけは誰にも負けません。

計画前に、こっそりご相談していただければ、舞い上がって一生懸命取り組ませていただきます。

是非、お気軽にお問い合わせください!
お問い合わせフォーム – JNG (jng-chenqin.com)

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