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インフラとサウナ ~サウナ事業は儲かるのか~

先回は、サウナ事業を展開するにあたってインフラが大変重要ですよ、という話をしました。

サウナ事業だけではなく、お風呂を伴う温浴事業を運営するにあたっては、水光熱費コストが主要コストとなります。
これからサウナ事業をやってみたい!と思われている方のほとんどが、この重要性を軽視、もしくはご理解されていないことも多いように思います。

インフラコストは開業後では削減が難しい部分でもあり(お風呂のレイアウトは改装費が高額)、客数に関係なく最低限一定のコストがかかるので、損益分岐点を大きく左右する要素であることは、前回の記事でも書かせていただきました。
投資や副業としてサウナ事業は儲かるのか。|jng_enaidani|note

大好きなサウナで事業を始める前から、あれもこれもダメだと言われてしまっては、投資家さんご自身もユーザーであるサウナーさんにとっても、理想の施設ができなくなってしまいます。
ここでは理想を追い求めつつ、どうしたら削減、現実的な施設にできるのかにフォーカスしていきます。


今回も、温浴経験はないものの、新たな事業として大好きなサウナ事業をやってみたい!と思われている方へ向けての内容となっています。

まずは、「井戸水」について、です。

先回もお話をしましたが、一般的な水道から出る水を使用する場合、上下水道代なる費用が掛かります。
一方、井戸水を使用すれば、下水道代は必要ですが、上水道代は必要ありません。

簡単に言うと、上水とは蛇口をひねった際に必要な費用で、下水とは水を排水する際の費用となります。
大雑把に言うと、上水量と下水量はほぼイコールになるため、井戸水を使用することによって、単純に、水道コストが半分ほどに収まります。
 ※各市町村などで費用が異なるため事前調査必須。

ただし、なんでもかんでも井戸を掘れば、清潔な水が出てくる、というものではありません。
そもそも水脈がなく井戸水が出ない(湧出量が少ない)場合もありますし、仮に湧出したとしても、鉄分などの不純物が含まれており、温浴施設の衛生基準を満たした井戸水でなければ、そのまま使用することができません。

例えば鉄分が多く含まれている井戸水の場合、浴槽水が茶褐色に変色したり、設備を腐食したり、と、掘ったそのままの状態では使い物になりません。

天然温泉を使用した熱交換器の内部。
そのままで使用することもできるが、メンテナンスで費用が掛かりすぎてしまうケースも。

そこで必要になるのが、それらの不純物を除去するための浄化設備(ろ過や消毒など)です。
こうした設備にはイニシャルコストが必要になるだけではなく、装置の運転に必要な電気代や、修繕費などが後々のランニングコストともなります。

また、設備のコンサルをしておいてナンですが、温浴施設でもそうでなくとも、施設内に設備が増えた場合、コスト面でいいことってほとんどないんです。
運転コストもかかれば、後々にはメンテナンスや交換も必要になります。

施設に必要な水量などと照らし合わせ、井戸水の水質やそれによる必要な設備コストと比較してどちらがお得になるのかという点を十分に検証する必要があります。

何百トンと水を利用するようなスーパー銭湯では、たとえ複雑な処理が必要となっても、10年、20年の運営を見越した場合、井戸水の使用はほぼ必須条件といっても過言ではありません。
サウナ施設の場合は、それと比べて使用水量は少なくなることが一般的なので、上記のように損得を計算しておかないと後の運営が大変なことになります。


さて、続いて、井戸仕様の有無ではなく、その使用水量に焦点を当てて書いていきます。
※シャワーについては、基本的には入浴者数に単純に比例するものでもあり、ここでは省略します。

施設の使用水量については、先に書いたように、特に入浴することをメインとしたスーパー銭湯のような場合、避けようがないコストでもありますが、一方、サウナを主体とした施設の場合は、スーパー銭湯のように何種類もお風呂を用意しておく必要はないかもしれません。

しかし、いくらサウナ施設とはいえ、水風呂一個では若干物足りませんから、どうしても計画段階では2種類、3種類と浴槽を用意したくなるものです。

いくらサウナ施設でも温かいお風呂に入りたいと
思ってしまうのは、日本人独特かもしれない。

ここで注意をしたいのが、浴槽(に対するろ過設備)の系統数です。

公衆浴場の定めにおいては、不特定多数の人間が利用する温浴施設においては、一定能力を有したろ過設備を導入し、常時、ろ過循環をしなければなりません。

簡単に言うと、一つの浴槽に対して数百万円のろ過設備が1台必要になり、それに付随するポンプや殺菌消毒装置、熱交換器、それに配管の敷設費用といったイニシャルコストだけではなく、ランニングコストとしての電気代も必要になります。
これは小規模のサウナ施設にとっては、かなり大きな投資になります。

例えば、
 ・シングルの水風呂
 ・17℃の水風呂
 ・40℃のバイブラバス

と、3つの浴槽ラインナップを計画した場合は、3台のろ過装置が必要になります。

処理水量やスペックによってろ過設備への投資額は異なる。
しかし、ポンプや熱交換器といった部材は必要になる。

水量やシステムによっても異なりますが、この場合、1,000~2,000万円以上の設備投資となります。

浴槽をつくれば躯体工事や防水工事といった建築や内装工事費も必要となります。

躯体工事や防水工事。
ウエットエリアでもある浴室の改装は簡単ではない。

では、スーパー銭湯では男女合わせて10も20もある浴槽に対して1台のろ過装置があるかというと、実は、答えはNOです。
循環ろ過系統は(一般的に)水面、水質、温度が同一の場合、連結をすることが可能なのです。

しかし、先に挙げた例のような場合、シングルと17℃と40℃の3つの浴槽は温度が異なるため、基本的にはろ過系統を連結させることができません(浴槽水が混在し温度が一緒になってしまうため)。

実は弊社にいただくお問い合わせでも、特に水温が異なる浴槽をいくつも設置したい、というご希望を持ったサウナオーナー様が圧倒的に多いです。

これは非常に難しいところです。

一般的にサウナを主とした施設は、スーパー銭湯と比べ来客数が少なく、浴槽の種類を増やすことで「一人当たりのコスト負担がより高額」になりがちです。
かと言って、水風呂一つではさすがに味気ないようにも思えます。

ですので、投資と回収の概念を最優先に考えた場合、非常に根本的な話なのですが、それらのコストを上回るだけの売上を確保できるかどうかだと思うのです。
計画の通り設備投資、インフラコストやメンテナンス費用を試算し、シングルの水風呂、17℃の水風呂、温水風呂があることで、満足度が高まって、多くの集客が見込めるのかどうか、天秤にかける他ありません。

それは簡単なようでとても難しいことです。
もし贅沢に多くの浴槽を準備したい、サウナ室を多く設けたいというのであれば、それだけの施設にしなければならないということでもあります。


正直に言うと、思っている以上にインフラコストは大きな負担になります。
そのことを事前に理解した上で理想を追って、それだけの売上を上げることができるのか。
それは決して根性論や理想論ではなく、現実的な計画が必要であることを声を大にしてお伝えしたいところです。

ちなみに、浴槽の水量もコストに関係しています。

浴槽水量が増えれば、それだけろ過処理する水量が増えます(大きな設備が必要)し、温める(冷やす)べき対象が増えます。
当然給排水量も増えます。

1mを超える水深の水風呂が話題になることがありますが、実際にそれを設けるのはかなりコストが必要になることを覚悟しなければなりません。

設備のイニシャルコストだけに焦点を当てると、浴槽水量が多少変わっただけでは、大きな差が出ることはありません。
設備イニシャルコストは、どちらかと言えば、浴槽の系統数(浴槽の種類)に大きく関わってきますので、その点は注意が必要です。

井戸処理などの原水処理には、そのろ過すべき水量が多くなるため
必然的に大型の設備が必要になることが多い。

いずれにせよ、それらのコスト計算は専門家から意見を収集したほうが、より正確性が増すことは是非覚えておいていただきたいところです。


それから、もし、計画に迷ったらという視点で。

現在、以前よりも若干大型のスーパー銭湯が流行の兆しを見せていますが、オーナーらは20年、30年の経営を見越した計画を立てます。
そこで温浴施設の特徴として指摘できるのが、右肩下がりになりがちな経営に合わせた計画づくりです。

安近短でブームを巻き起こしたスーパー銭湯で、昨今のサウナブームもスーパー銭湯よりも客単価が高くなりがちですが、ブームや流行という意味では少し似ています。

どういうことかというと、変更が可能な余白を残した計画でもいいのじゃないか?という提言です。
例えば機械室を余分に設けておく、とか、浴槽がもう一つ増やせるようなスペースを確保しておく、とかです。

これは、なかなか簡単なことではないのですが、実際には複数店展開している大手スーパー銭湯経営者では、事前にこれら(以後の改装案)が計画されていることが多いです。

次回は、もし私がサウナ施設、温浴施設のオーナーになったら、というテーマで惜しみなくアイデアを書いていこうと思います。

~~これから温浴施設、サウナ施設を計画されるオーナー様へ~~
ぜひ一度お問い合わせ、アイデアを出させてください!
お問い合わせは下記から!!
お問い合わせフォーム – JNG (jng-chenqin.com)

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