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投資や副業としてサウナ事業は儲かるのか。

今日は少し真面目にお風呂のお話をしていきます。

私は温浴業界、いわゆるお風呂施設の業界で15年になります。
お風呂業界というと、とてもニッチな業界なように思われるかもしれません。
確かに大きな市場があるような業界ではありませんが、数ある業界の中で相対的に見ると、世界トップレベルの品質を誇り、かつ、日本の温浴業界は意外と幅が広いのです。

というのも、お風呂がついている業種を全て温浴業界とするのであれば、ゴルフ場スポーツクラブもそれに該当しますし、旅館ホテルにもお風呂があります。
日本では所謂お風呂屋さん、スーパー銭湯は世界的に見てもけた違いに人口比としての施設数が多いのは間違いなく、そういう意味ではとても安定していて長い歴史を持っているとも言える業界なのです。

その中で昨今、最も注目を集めているのはサウナ事業ではないでしょうか。

さて、今回は

サウナ事業は投資事業として本当に価値のあるものなのか

にピックアップして話を進めていこうと思います。


と、その前に、市場分析の意味を込め、サウナ愛好家について話していこうと思います。
【サウナブーム】などと呼ばれますが、そもそも私たちに最も身近な温浴施設であるスーパー銭湯にも、サウナ愛好家がたくさん存在します。
某温浴コンサル業の方が、良いサウナ施設を作ればスーパー銭湯の経営はうまくいく、と言っているのは有名な話です。

一般的な人からすれば奇妙な話かもしれませんが、平日の日中、サウナ室は人であふれています。
サウナ事業をするということであれば、そもそも論として、サウナブーム以前に、既存の温浴ユーザーの中にも潜在的に相当数のサウナーがいるということは覚えておくべきでしょう。

古くからある銭湯では元よりサウナで場所取りに苦労するほどサウナーが多い。

ところが、このサウナブームを経て、一つ変化が訪れたように思います。
それは、サウナの認知度が高まり、サウナを目的としたヘビーユーザーが増加した点です。

冒頭の通り温浴業界15年の私も当然サウナ好きを公言していましたが、数年前から盛り上がるサウナブームで生まれた真の愛好家たちには、ちょっと敵わないなと思わされます。
適切な表現が見つかりませんが、私が「サウナがあったら入りたい」程度なら、彼らは「サウナがある場所に毎日行く」という感じで、ライクとラブの差とでもいいましょうか。

そんなサウナ愛好家の前で、気軽に「サウナ好き」を公言しようものならば、今の愛好家たちから(良い意味で)変態的なレベルのサウナ知識を披露され、ちょっと私はついていけないなと完膚なきまでにサウナ愛に押しつぶされるのであります。


前置きが長くなりましたが、ブームはいつか過ぎ去りますが、ライトユーザー離れはあったとしても、このような(良い意味で 笑)変態級の愛好家が相当数おり、ある意味ではブームを通り越して、一種の【外せない趣味】として定着した状況にあることにも着目したいところです。
比較的若年層が健康志向としてサウナを選択することも自然な流れであり、ただ単純な流行り廃りのブームではなくなってきたことも大きなポイントです。

もちろんこれは、温浴業界の従事者としては喜ばしいことでもあります。

先述のように既存の温浴施設にもサウナ愛好家がおり、若い方からの支持もあるサウナ業界です。
サウナ事業の事業展望としては、客観的に見ても【かなり根強い市場】だとは思っています。

一方で冷静にこの過熱ぶりを見ていると、さすがに【施設としては多すぎる印象】も受けます。
過去のスーパー銭湯ブームでもそうですが、事業としての見地から言えば、いわゆる過熱ブームが過ぎ去った後(ライトユーザーの減少)に待ち受けるのは、過当競争に打ち勝つ必要性です。
当たり前のことではありますが、「流行ってるし儲かりそうだなあ」という短絡的な思いでは、事業として淘汰されることも間違いありません。


さて、本題です。
どの業界の事業でも同じですが、「流行っている(需要がある)=儲かる」の思考方法は大変安易でしょう。
なぜサウナ事業でその構図が成り立たないかに焦点を当てて話をしていきます。

インフラを侮るなかれ。

設備のプロとして事業をしている私ですが、これからの計画、新規店に参与させていただくような場合、まず最初にお伺いすることがあります。
それがインフラについて、です。

井戸はありますか、熱源は何を使いますか、排水はできますか。

兼ねてから当ブログ内でも口酸っぱく言ってきましたが、あまたあるサービス業の中で温浴業界は特殊性が強く、それがインフラ環境であり、設備もあります。

一般的な家庭で使用する水の量は毎日約400L~800L程度と言われています。
ということは100世帯が住む大きなマンションの水道使用量でも100m3/日を超えることはない程度という計算になります。
ところが一般的なスーパー銭湯で必要な水量は一日で200m3にも300m3にも上ります。

しかもスーパー銭湯の場合は、そのほとんどが【お湯】ということになりますから、上下水道代だけではなく、必然的にそれを温める光熱費も必要になります。
サウナに必須ともいえる水風呂も水道代はもちろん、それを冷やすチラー装置には電気を使用することが多いです。
これが温浴施設を経営する上での最大のキモです。

飲食店では食材費や人件費、それから地代が主な原価、コストになります。

温浴施設、特に浴場をメインとする施設では、上記のような上下水道、光熱費、電気代が運営コストとして大きくのしかかってきます。

ふむふむ確かに食材費の代わりが水光熱費なのだな、と単純に思われるかもしれません。

ただ、この【飲食店の主要原価である食材費は顧客満足度にダイレクトに直結するコスト】であり、客単価とも大きく関連します。
一方、【浴場施設の水光熱費は顧客満足度にも繋がりにくく、コストはかかるクセに客単価とダイレクトに直結するかといえば疑問】のあるコストです。

たとえば40℃のお風呂が42℃になって、浴槽水量が10m3から15m3に増えたからといって、お客さんが満足するか?と言えば、正直微妙ですよね。

飲食店における食材コストと違い、温浴施設の水光熱コストは、集客の程度のいかんによらず、どのような状況下(極端に言えば、たとえお客さんがゼロであったとしても)最低限必要になるコストであることを考える必要があります。

夏場に強い観光地の温浴施設で収集した、集客と水光熱代の相関関係グラフ。

上記のグラフは集客と水光熱費の相関関係を表したものです。

集客数は夏場にピークを迎え、11月には最大値の1/3程度に落ち込みます。
長期休暇のある1月や5月は復調傾向となりますが、実際には損益分岐点、といったように、売上の波があります。
集客数の最低値と最大値の幅はおよそ2~2.8倍です。

一方、水光熱費は10月が最低の275で、最高は8月の420となっています。
(この数値は単純に万円単位ではなく、損益分岐点が分かりやすくなるような特殊な指標を使っています)
繁忙期と閑散期におけるコスト差は、およそ1.5倍です。

夏はビーチの見える景色で繁忙期、冬場は海風があたり決して良い条件とは言えない立地。
しかし、これ自体はどうしようもないこと。

集客幅は3倍近くの差があるのに、水光熱費(コスト)幅は1.5倍程度にとどまることが分かります。
※実際に当該施設では2、3、10、11月はかなりの赤字となっていて、1、7、8、9、12月が黒字となっています。


これが何を表しているかと言うと、温浴施設では、ある一定の集客数を超えれば黒字が最大化して、逆にそれを越えなければ、かなりの赤字となる極端なものであるということです。
そしてその超えるべき集客数(≒売上)の目安となるのが、水光熱コストでもあります。

なぜ、このようなことが起きるかというと、先述の通り、温浴施設を運営するにあたって、特に水道代は必ず一定量が必要になることに起因しているからです。

例えばお風呂屋さんであれば、お客さんが0だろうが100だろうが、40℃の温かいお湯を常に浴槽に湯はりしておかなければなりません。
サウナ施設も同じで、お客さんの人数に関わらず、常にサウナ室の温度は一定を保つ必要がありますし、水風呂は設定した温度に保っておく必要があります。

飲食店であれば予め食品ロスを考慮して仕入れをすることができますが、
温浴施設ではお客さんが少ないことを予想して、
浴槽の水量を減らしたり、お湯の温度を下げる訳にもいかないのです。


客単価が一定値と仮定すると、このグラフにある温浴施設では800~1,000人が損益分岐点となります。
単純に計算をすると、800人を下回るとどうやって運営しても赤字で、1000人を超えると一人集客が増加するごとに約客単価分が黒字になります。
それは、集客の大小関わらず、湯はりをする量も温度も、サウナ室の温度も変わらないからです。

もちろんこれは若干の誤差があり、例えば集客が増えれば使用するシャワーの水量が増え、浴槽に入れば溢れた水が排水(オーバーフロー)される量も増えます。
サウナ室に出入りをする人間が増えれば増えるほど、ドアの開閉が頻繁になることで放熱も頻繁になることも予想されます。
また光熱費で言えば、季節による気温差によって放熱する量も差が出ます。

これは余談ですが、一般的なスーパー銭湯の場合、集客が一定以上を超えると客単価は下がります。
混雑していると、飲食やマッサージに待ち時間が出たり、人込みを避け早めに帰宅してしまう(余計なお金をかけない)からです。

ただ一つハッキリと言えることは、お客さん一人当たりのコストは集客が多くなるにつれて徐々に安価(一人当たりの急激に原価率が下がる)になることです。
この幅は飲食店などのその他のサービス業よりもかなり顕著に現れます。


例えば、湯はりや保温で最低限の運営必要コストを「100」とします。
シャワーなどで一人当たりのコストが「0.1」必要とします。
100人の集客でコストは「110」ですが、200人だと「120」、1000人で「200」となります。

客1人当たりのコストを計算すると、100人の場合は「1.1」、200人の場合は「0.6」、1,000人の場合は「0.2」。(原価率110%~20%)
不思議なことに集客が増えれば増えるほど、一人当たりコストが大きく減少します。

上記は机上の空論ではありますが、集客すればするほど一人当たりのコストが下がることは明らかで、これは大きな魅力と言えば魅力です。
結論を言ってしまうと、水光熱費が安くなるようなインフラが整っていればその温浴施設は絶対の勝ち組だということです。

某施設による集客軸による売上と水光熱コストのグラフ
水光熱の上りが緩やかである一方、売上はどんどん増えていく傾向。

要するに、集客ができる=売上が上がるというのは、どのサービス業でも同じですが、サウナを含めた温浴事業の場合、一定度合いを超えた集客の売上は、基本的に全て儲けになるという現実的な数値がお分かりになると思います。

今回はインフラと売上、利益の関係についてお話をしていきました。

次回以降はどうしたらインフラを抑えられるのか、また、儲かるサウナ施設づくりのちょっとしたポイントをお話しできたらと思います。

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