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コロナストレスはいつまで続く? ーこれからのストレスとの付き合い方(2/3)

第1弾はこちら

疲労には3つの段階がある

今、ワクチンなどができはじめていますが、それで収まったとしても、ここ1年分の疲れがあるわけです。

この疲労が解消されるまで、脆弱な傷つきやすい状態が、少なくとも1年は続くでしょう。

これは転職者によくあるケースですが、前職でとても疲れたから、新しい職場に転職しました、と。

嫌な上司、嫌な仕事がなくなりました。それでオッケーかというと、そうではありません。新しい職場でうつがぶり返す人が多いのです。

身体的な疲れは、抜けるまでにかなりの時間がかかるのです。

『ストレスとうまく付き合う100の法則』に詳しく書いていますが、疲労には3つの段階があります

何らかの仕事や精神的苦痛などで、疲れる日々が続いたとしましょう。
すると、まず不眠や食欲不振など、身体の不調が現れます。この状態は蓄積疲労の第1段階(通常疲労)です。
疲れを感じても、翌日には結構元気に活動できます。

しかしこの忙しさが数ヶ月続くと、あなたの疲労は第2段階に進みます。
この時傷つきやすさ、疲れやすさは、元気な時の2倍

寝ても朝すっきりしない。以前ほど仕事のやる気が出ない、いろいろなことを面倒くさく感じる。いらいらして、他人のちょっとした言動にも過敏になっています。

でも、「人に心配をかけたくない」「弱みを見せたくない」と自分で不調を否定し、ことさらに元気をアピールしてがんばって仕事をしてしまう傾向が出てきます。

何とか取り繕って仕事をしているうちに、いよいよ疲労は深まり疲労蓄積の第3段階へ。

いつもより3倍傷つきやすく、3倍疲れやすい。いわゆる「うつの症状」として、過剰な自責間、不安感、無力感、負担感が現れます。

一般的に、うつ状態の人が回復するまでには半年から1年かかるといわれますが、それは時間をかけて蓄積疲労を回復していく必要があるからです。

完全に回復するまでの間は、少しの刺激でも疲れやすくなるし、反応しやすくなるので、できるだけ穏やかに過ごしたい。
これを「喪の儀式」と言っているわけです。

身内の人が亡くなった場合、大きなショックを受けてうつ状態になり、前後のやり取りで非常に消耗してしまいますよね。

そうしたら、回復するのにやっぱり1年間ぐらいかかってしまう。
だから昔から、1年間はいろいろことをするなと言ったのです。

新しいことや、にぎやかなことをすると失敗するぞ、という戒めであり、人間というのはそういうものなんですよ、という先人の知恵ですね。

価値観や概念ではなく「感じて」行動する

昔の人はちゃんと「自分」を感じながら生きていたのです。

現代を生きる私たちは、人間はこういうものだという「概念(思い込み)」で動いているんですね。感じていない。

例えば、「お腹がすいたら食べる」のではなくて、「12時だから食べる」んです。

「結婚したいから結婚する」のではなく、「適齢期だから結婚する」。就職したくなくても「大学を卒業したら就職する」。全部価値観なのです。

だから「感じて何かをする」っていうことが、できなくなっている。

つらい、悲しいというときに「どうするか?」ではなく、「どうしたらいいですか?」ってカウンセラーに聞く人が多い(笑)。

「ストレスがあったときにどう対処すればいいですか?」って正解を聞きたがるんですよ。

でも、正解なんてその人次第なのではないでしょうか。

その人の置かれている問題や状況、年齢や性別、体力、能力など、いろいろなもので正解は変わってくるのです。
それなのに、皆さんネットや本に「正解」を求めてしまう。

今、特に多くの人がストレスを感じているからストレス関連の書籍が注目されています。

「エビデンスがある」「科学的な」というのが出てくると、皆さんそっちに流されてしまいますが、本来そこに「あなたの正解」はないのです。

自分が感じていることを感じられないと、ストレスとうまく付き合うことは難しいということなんです。

何が嫌かを上手に感じて、嫌だったらその原因から離れるとか、自分自身で試行錯誤していかなければならないのに、ネットで調べると、「3年間は仕事を辞めたら駄目です」といった答えが出てくると、それを盲目的に信奉しちゃうわけです(笑)。

その人の実力も知らない、自分の状況も何も知らない人が言ったことを、正解だと思ってしまうんですよね。 

大切なのは「ストレスを感じない」ことではない

下園さんの言うことは、ある意味厳しいなと思います。外に答えを求めるのではなく、自分でストレスや疲労を感じて、それを自分なりにコントロールしましょう、ということですよね。

皆さん、疲労やストレスを感じずに過ごしたいわけですよね(笑)。

感じないことで自信をキープしながら生活していきたいと思っているのだと思いますが、それでは駄目なのです。中程度まではそれでごまかせても、それ以上のストレスになった時、ガクンと落ちてしまう。

だから、疲労やストレスをしっかり感じて、それでも自分を崩さずにやっていける「バランス感覚」を身につけることがとても重要なのです。

生きるということは、そういうトレーニングを重ねていくことなのではないかと思います。

そういう意味では、このコロナ禍は私たちが本当に生きるための試練として与えられているかもしれないですね。

本当にそのとおりだと思います。
今まで、順風満帆だったところに、今回は、いろいろ思うようにならないことにたくさん遭遇している。

僕はこのコロナ禍は、実はとってもいい刺激と言えるのではないかと思っています。

なぜかというと、「もう超えられない」というようなむちゃくちゃな刺激ではないんですよね。

今の状態はつらいけれど、対処すればなんとかなるかもしれない。
だから今の自分を、ちょっと変えることができるような「いい刺激」。

普段は「リモートワーク嫌だな」と避けていても全然問題なかったのが、「いや、本当にやらなきゃいけない」とか。そして、「もうちょっとやるぞ」と思える、対応可能な刺激。

特に日本人は、戦後の復興もそうだったように、苦難があった後に大きく成長するのが大好きなんですよ(笑)。
だから、いい刺激ではないかと思うのです。

コロナ禍は生き方を見直すチャンスでもある

コロナ禍を機に、私たち日本人はどうなっていくんだろう、私たちはどんなふうに成長していくのか? と問われているということですね。

もう1つ、すごくいいタイミングだったと思っているのは、AIの時代がもうすぐ到来するんですね。

AIの時代がきたらわれわれの生活は、ほんとにガラッと変わっていくでしょう。
皆さんの仕事もなくなってしまうかもしれません。

社会のシステムや財産についても、以前はお金があることがステータスだと思われていましたよね。

だけど今重要視されているのはフォロワー数です。価値観も変わっていく。

ひと昔前まで、「末は博士か大臣か」とか言っていたのが、今や一流企業の人やインフルエンサーの方が、世の中動かしているような感じがする。
もうほんとうに何が起こるかわからないんです。

そうしたときに、コロナ禍のような自分をもう1度振り返る、「自分の軸って何なんだろうか」「何を大切にすべきなのか」と考えさせられるようなことが起こった。

順風満帆だった時には、何が大切かもわからないまま毎日が過ぎていたんですよね。

だけど、スパッと流れが止まって、自分自身で次に進み出す方向を選ばなきゃいけないときに、必ず1回振り返るんですよね。

これからAIの時代に入ると、自分をしっかり見つめて、自分の感性といったものに合う生き方をしていかないと、延長線上で生きている人は、必ずストレスが大きくなってくると思います。不満だらけになっていくと思う。

「やってくれない、やってくれない、やってくれない」
「以前はこうだった」
「昔はよかった」
というように。そんな人は、置いていかれてしまいます。

そういう意味でも、コロナ禍はいい刺激とも言えるのではないでしょうか(笑)。

ストレス対処に必要な2つのポイント

コロナ禍を「いい刺激」と捉えるためにも、やっぱり自分が疲労していない状態じゃないといけませんね。

疲労の3段階のうち、変化を前向きに捉えられるのは1段階だけなんです。
だからほんとうに、何はともあれ疲労対策なんです。コロナ禍が長期にわたってきているから。

そして、疲労を回復するための第一番目の方法は「嫌な人、嫌なものから離れる」
だから、転職などで嫌な状況から離れられる人は、ストレス対処能力がある人なんです。

ストレス対処能力が低い人は、「慣れる」ことがストレス対処能力だと思っています。
ストレスに対して、それをこなして何とか慣れていくことだけがストレス対処能力だと思っている方がいますが、それは全く違います

確かに慣れることは、ストレスに対処する重要なポイントのうちの1つではあるのですが、もう1つ重要なのがストレス対象を避けるということなんです。

でも、皆さんストレスを避けるのが下手なんですね。避ければ簡単に解決するんですよ。

避けたらいいものをずっと避けないでいるのは、暴風に自ら当たっていながら、「何でこんなふうに髪の毛が?!」と言っているようなものです(笑)。

髪質のせいにしたり、トリートメントを使ったり……。
避けたらそんな悩みはなくなって笑っていられます(笑)。


下園 壮太(しもぞの そうた)
陸上自衛隊初の心理幹部として多数のカウンセリングを経験。
その後、自衛隊の衛生科隊員(医師、看護師、救急救命士等)やレンジャー隊員等に、メンタルヘルス、 カウンセリング、コンバットストレス(惨事ストレス)対策を教育。
本邦初の試みである「自殺・事故のアフターケアチーム」のメンバーとして、約 300 件以上の自殺や事故にかかわる。平成 27 年 8 月退職。
現在は NPO 法人メンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会、県や市、企業、大学院などで、メンタ ルヘルス、カウンセリング、感情のケアプログラム(ストレスコントロール)などについての講演・講義・トレーニングを提供。
著書 30 冊以上(『自衛隊メンタル教官が教える 折れないリーダーの仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)等)。海上保安庁パワハラ予防委員。

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