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人事労務担当者の役割=「個人の成長」と「組織の成長」を一致させること

こんにちは、noteコーディネーターの玉岡です。
本日紹介する書籍はこちら!


「メンタルヘルス」問題は企業にとって根深い問題でもあり、日本でも働き方改革はその克服を目的の一つとしていました。
リモートワークの浸透によってコミュニケーションが希薄になり、メンタル不調を訴える従業員が増加しているという厚生労働省の発表資料もあります。特に人事労務担当者の負担は年々増加していると言えるでしょう。
本書は、人事労務領域においてオンラインカウンセリングを行う法人向けオンライン対人支援サービス「Smart相談室」による書籍。メンタルヘルス問題と向き合う人事労担当者のミッションと、具体的な対処方法を示しています。
本書の目次はこちら。
各項目を眺めるだけで、人事労務担当者の頼りになるオーラが伝わってくるようです。


第1章 新卒が一人退職すると、1104万円損失という現実
・自分ではメンタル不調に気付けない
・医師はメンタル不調になるのを待っている?
・風邪のようには治らないメンタル不調
・「合理的に」悩みを言えない実情

第2章 人事労務担当者の想いとメンタル不調者の〝深いギャップ〟
・悩みを言って欲しい人事労務担当の私
・悩みを言って欲しくない人事労務担当の私
・本当は知っていながら、今日も休職者対応
・会社の代弁者を演じる人事労務担当の私
・人事労務担当者もメンタル不調者

第3章 「モヤモヤ」したら、まずは相談してイイ 
    ─1番やっかいなのは「私傷病」だった!─
・ご存知ですか「私傷病」
・「モヤモヤ」したら、まずは相談してイイ
・「もっと早く相談しておけばよかった」という社員
・「彼氏が浮気しているんです」って上司に言えますか?
・「相談したら給与が下がるかもしれない……」という恐怖
・「何かあったら相談しにきてね」と言われてもできない
・安心して相談できる場とは? 

第4章 メンタル不調は誰にでも起こる 
    ─大きな挫折と成長の機会─
・絵に描いたような猛烈社員だった私
・一緒に働いていた社員が突然メンタル不調に
・鋼のメンタル、メンタル不調になる
・社員として、事業責任者として
・モヤモヤの正体とは
・「価値観や認識」と「事象」の差は個性です
・安易に会社を辞めるより、すべきこと・

第5章 人の数だけ相談がある+カウンセラー問題 
    ─Smart相談室を開設して分かったこと─
・事業責任者の立場から見た社員の心
・「お皿洗い」から「資金調達」まで、相談内容がバラバラ
・「その相談は受けられません」って言ってしまうカウンセラー
・30分話を聴いてもらうだけで、80%の人の霧が晴れる
・カウセリングが有効か? コーチングが有効か?
・鍵は、相談回数を決めないこと
・中間管理職のモヤモヤが一番難しい
・大企業と中小企業の相談から見えてくる組織課題
・月曜日に集中するカウンセリング予約
・徐々に悩みが変わってくるスタートアップ企業から上場前

第6章 Smart相談室の現場から 
   ─人事労務担当者、相談者、カウンセラーの声─
・【相談者の声】聴いてもらえるだけで涙が溢れた
・【相談者の声】65歳、来月15日で定年退職の私を変えたセッション
・【相談者の声】上司には言えないモヤモヤが晴れた
・【相談者の声】相談した方が良いと分かっていても、相談できない
・【人事労務担当者の声】子育てと仕事の両立は想像以上の大変さ
・【人事労務担当者の声】一番必要なのは「相談すること」。何もできなかった人事労務担当だった私ができること
・【カウンセラーの声】労務当事者の私が第三者としてできること
・【カウンセラーの声】人材紹介ではない、キャリアカウンセリングを提供することの尊さ

第7章 今後、求められる人事労務担当者の役割 
    ─人的資本に対する新しいアプローチ─
・会社経営における「社員」の意味合い
・「個人」の中にある「社員」という役
・「個人の成長」と「組織の成長」を一致させる
・個人としての生き方を選択できる仕組み
・人事労務担当者も大切な社員


第1章 新卒が一人退職すると、1104万円損失という現実

本書によると、メンタル不調が原因で1ヶ月以上の休職、または退職をされる方が全事業所の10%以上にのぼるのだそうです。人材採用のコストは大きなものであり、採用後の急な退職は企業にとっての深刻なダメージとなります。メンタル不調はその大きな原因でもあり、下表は近年におけるその推移を示しています。右肩あがりで不調者の数が増えているのが分かります。

19P

メンタル不調は表に出しにくい症状でもあり、企業は年々、退職リスクの増加とともにそれを察知しなければならない負担増に悩まされているというわけですね。

第2章 人事労務担当者の想いとメンタル不調者の〝深いギャップ〟

第2章では、その状況を以下のように説明します。

しかし、現在の日本社会は労働人口の急激な減少、外部環境の著しい変化が顕著になっています。 この競争環境を想定すれば、企業の経営は心身の不調が原因による遅刻や早退、就労が困難な欠勤、 休職など、業務自体が行えない 「アブセンティズム (健康問題による仕事の欠勤=病欠)」の視点だけでなく、勤務しているにも関わらず、心身の健康上の問題が作用して、パフォーマンスが上がらない「プレゼンティズム (従業員が心身の不調を抱えな
がら仕事をしている状態)」にまで目配りする必要があります。

38P

この「目配り」こそが人事労務担当者の重要なミッションでもあり、悩みどころでもあると言えます。本書はプロフェッショナルカウンセリング集団である「Smart相談室」が、その経験と実体験から編まれています。
第2章でも、従業員から悩みを「言ってほしい」「言ってほしくない」という両側面の実情が語られています。

第3章 「モヤモヤ」したら、まずは相談してイイ 

内部通報窓口で「相談件数が少ない」=「問題が少ない」と断定するのが早計なように、人事部門に対しての相談事が少ない=労務関連の問題が少ない、ということにはなりません。
下の一文が第3章で心に残った箇所で、「相談しにくいから相談数が少ない」という状態は会社組織における根深い課題だと思います、

私は、「相談してね」と言うことについて異議を唱えているのではありません。 コミュニケーションの潤滑剤、人事労務担当者の姿勢として、どんどん伝えていくべきです。しかし、忘れてはいけないのが、 「相談してね」と言うことが具体的な社員サポートになっていないこと、そして、相談がないからといって、必ずしも良い状況とは限らないということです。
社員は、「何かあったら相談しにきてね」 「何でも相談してね」と人事労務担当者の方に言ってもらっても、自身の不調の相談先として人事労務担当者を連想するのはハードルが高いのです。つまり、相談することがないから相談数が少ないのではなく、相談しにくいから相談数が少ないのです。

67P

ここに続けて、ではどうすれば相談が寄せられる場を作ることができるのか?が語られます。それは多くの現場事例を知っている、Smart相談室ならではの筆致となっています。

第4章 メンタル不調は誰にでも起こる

 本書の各章末にはコラムがあり、第4章のコラムタイトルは「コーチングの基本 ちょっとしたコツと注意点について」です。
「コーチング」が効果的なのは、正しい基本と使い方を踏まえるからであり、決して人材育成の万能薬ではないことがこのコラムを通して分かります。特になるほど、と思ったのが下の一文です。

コーチングのちょっとしたコツと注意点
会社でコーチングをする際のコツはズバリ1点! 「一緒に始める」です。
上司や先輩のキャラクターが急に変貌するのは、部下・後輩にとっても違和感があり、戸惑いを生んでしまいます。 そこで、「前提条件」を整えるのです。一緒に始めるきっかけは、「研修で学んだから」 や 「勉強会でやってみようと思ったから」と、上司・先輩であるあなたが主体的に自ら取り組む姿勢を示します。 決して、「会社にやれと言われたから」とは言わない
でくださいね。

99P

第5章 人の数だけ相談がある+カウンセラー問題 

第4章のコラムと地続きな章ともいえる第5章。特に「カウンセリングが有効か?コーチングが有効か?」のパートは必読です。
「カウンセリング」と「コーチング」、その違いと目的を皆さんは説明できますか?

カウンセリングは、気分が落ち込んだ時に、本来の水準に戻すことを目的に利用するものです。 心の状態を「マイナスからゼロに戻す」などとも表現されます。 カウンセリングを行うカウンセラーは、相談者の心理的な問題に対応するために、心理学や精神医学、 キャリア開発、 労働関連法の専門的な知識を持っています。それに対し、コーチングは通常の心理状態から、より良い状態へ向上させる目的で利用します。 心の状態を「ゼ口からプラスに上昇させる」などとも表現されます。 コーチングでは、目標設定やアクションの管理、価値観の 確認などを通じて行動変容を実現させます。 また、コーチはコーチングに関する知識を持っていますが、必ずしも心理学や精神医学の専門的な知識を持っているとは限りません。 このように、カウンセリングとコーチングは同じように相談者に伴走しますが、そのアプローチ方法や持っている知識に違いがあります。

110

第6章 Smart相談室の現場から

 第6章は、Smart相談室に寄せられた多数の実例を取り上げます。
この章はぜひ、実際に本書を手に取ってページをめくっていただきたいです。
ここまで読み進め、下の一文こそが人事労務担当者のミッションを的確に言い表しているフレーズだと思いました。

人事労務担当者が社員のキャリアパスを支援することで社会に資源を還元していく

141P

第7章 今後、求められる人事労務担当者の役割 


第6章で掲げられた、人事労務担当者のミッションフレーズは、最終章である第7章の下表に集約されていきます。

176P

人事労務担当者の役割=「個人の成長」と「組織の成長」を一致させること。このnote記事のタイトルにも書いてしまいましたが、これほど腹落ち感のあるフレーズはそうはないと思います。

すべての人事労務担当者、必読の一冊です。

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