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オフライン企画からオンラインコンテンツをつくり、ターゲット企業のリード獲得を2倍以上に増やした「AOO」戦略

こんにちは、FORCAS(ユーザベース)の酒居です。

今回は、マーケティングチームで「ターゲット企業のアカウント獲得最大化」のために実践している「AOO」戦略についてご紹介したいと思います。

ABM体制によるターゲットリストへの集中

別の記事でも紹介していますが、ぼくたちFORCASではABM(アカウント・ベースド・マーケティング)というマーケティング戦略に基づき、マーケティングからインサイドセールス、セールス、CS、開発にいたるまで、組織づくりを進めています。

ABMでは、通常のリードベースのマーケティングと異なり、まず最初にマーケ、IS、セールス、CSが連携して、「自分たちがターゲットとする企業」を特定し、バイネームでのターゲットリスト(企業リスト)を作成します。そして、そのターゲットリストに基づき、いかにその企業とのつながりをつくり、アプローチして成約、ユーザーになっていただくかを考えて、マーケティング活動やセールス活動を行っています。

ターゲットリストは四半期で見直しや更新をしていますが、現在は約1,500社にターゲット企業を絞ってマーケティング戦略を考えています。

全国数百万の企業がある中で、1,500社のみにターゲットを絞っているので、とにかくリードをたくさん集まることが目的ではなく、「いかにターゲット企業のアカウント(リード)を獲得し、つながりをつくるか」が重要です。

ABMでよくいただくご質問として、「ターゲットリストを作成したあとは、アウトバウンドでコールするんですよね?」というものがあるんですが、効率が悪く、かつブランド毀損になりかねないアウトバウンドコールは、ぼくたちは行っていません。

ターゲットを絞っているということは、逆を言えば、そのターゲット層からの信用を失ってしまうと、ビジネスとして成立しません。そのため、アウトバウンドで一方的にアプローチをするのではなく、ターゲット対象のお客さんが本当に価値を感じて興味をもってくれるようなつながり方(インバウンド)を意識したマーケティング施策を実施しています。

オフラインイベントの効能と限界

ターゲットリスト1,500社に特化して、リードジェネレーション、見込み顧客とのつながりをつくっていくためには、どうするか。

ぼくらのマーケティング活動はひたすらバイネームでのターゲットリストを見つめながらの逆算のマーケティング思考で行っています。

そして、特定したターゲットを集客するために、ぼくたちはこれまでイベントやセミナーを中心としたオフラインマーケティングに力を入れてきました。オフラインは、「絶対に参加したい」とターゲットが思ってくれるコンテンツをつくることができれば、インバウンドで効率的かつ生産的に集客をすることが可能です。

また、当日は参加者へコンテンツをお伝えするとともに、興味をもっていただいた方へインサイドセールスが直接アプローチすることも可能となり、その後の商談化プロセスを加速することもできます。そのため、ぼくたちのマーケティング戦略は自社イベントによるオフラインマーケティングに軸をおき、数十人から数百人規模のイベントを年間100本程実施してきました。

一方で、オフライン施策にも限界があると感じていました。特に「定員数」というキャパシティと「来れる方が限られる」というお客さん都合の点が挙げられます。

例えば、ぼくたちのイベントでは100〜200名規模で開催することが多いのですが、ありがたいことに集客すれば、毎回満席いただき、途中で申込みを締め切っています。すると、歩留まりを考慮しても、一度のイベントで集客できるのは200〜300名程度になります。もちろんそれを月間で2,3回開催するので、ある程度のリード数にはなりますが、ターゲットに絞ったアカウントカバレッジを見ると、他にもターゲットアカウントを獲得できる施策が必要だと感じていました。

また、オフラインだとどうしても物理的に来ていただく必要があるため、その時間を空けて来社してくれることが必要になります。仕事上、どうしても時間を割けない方とはなかなかつながれないという面もありました。

「AOO」戦略のカタチ

そこで、考えたのが「オフラインを起点にしたオンラインへの拡張」です。

最初に「バイネームでの明確なターゲティング」から「オフライン」施策を手段としてターゲットアカウントの獲得を実施し、さらに「オフライン企画を起点にしてオンラインに展開する」流れをつくることができれば、オフラインのメリットを活かしながら、その欠点であるキャパシティや物理的時間的制約を解消できます。

これを「Augmented Offline with Online」と名付け、略して「AOO」と呼んでいます。

これは「O2O(Online to Offline)」などの概念とは異なり、単にオフラインの顧客をオンラインへつなげていくというものではなく、オフラインで企画したコンテンツを元に、オンライン上でターゲティングを拡張させるというものとして考えています。

AOOで具体的に実施しているのが、オフライン企画を元にしたオンラインコンテンツの作成と集客です。具体的にはイベントレポートやセミナーを元にしたホワイトペーパーを作成し、SNSによるターゲティング配信をメインに集客しています。プロセスでいうとこんな感じです。

つまり、フェーズ1でオフラインでイベントを企画し、フェーズ2でオンライン上で集客を実施する(1度目のリードジェネレーション)、フェーズ3でイベントを開催し、フェーズ4ではイベントをレポート化し再度オンライン上で配信する(2度目のリードジェネレーション)という流れになります。

このプロセスについて、フェーズごとの取り組みをご紹介していきます。

フェーズ1:ターゲット企業を集客するためのオフラインイベント企画

「AOO」戦略を実施する上で、最も重要なのがこのフェーズ。

まずは我々が特定しているターゲットアカウントの集客を行うにあたって、基軸になるのが「オフラインイベント」です。

ターゲット企業の狙った部門の方が「絶対に参加したい」と思ってくれるようなイベントを企画し、そこで1度目リードジェネレーションの施策を回します。

ここで大切なことは、何より「明確なターゲティング」です。ターゲティングをする際には、「ペルソナではなく、具体的な誰か」を想定し、その方にアプローチするにはどういう企画が必要なのかを施策ベースに落とし込んでいます。

オフラインイベントの企画方法については、別記事↓で詳しく書いてるので、そちらをご覧ください。

フェーズ2:Facebook含むSNSでのイベント集客

イベントの企画が完了したら、イベントLPを作成し、集客を開始します。ぼくたちのイベントの集客は、主にオンライン上で行っています。

中でも圧倒的に力を入れているのが「FacebookやTwitterによるSNSからの集客」です。

最近はありがたいことに、Facebook及びTwitterのシェアから、オーガニックで多くの方にお申込みいただいています。たとえば、ぼくたちは月に2〜3回のペースで100〜200名のイベントを行っていますが、その半数はSNSのオーガニックによる自然流入で申込みいただけています。

ここの方法については今回は詳しく触れませんが、昨年マーケ予算がほとんどない中で、いかにターゲット企業を効率的かつ最大限集客できるかを考え、PDCAを繰り返しながら、このカタチができてきました。

今年からはSNS広告も開始しました。イベントの企画内容によりますが、安いものではCPA1,000円〜2,000円で集客できています。ターゲットを明確に定義し、そのターゲットに向けたコンテンツをつくることで、広告予算をかけることなく、効率的かつ生産的にアカウントの集客が可能となっています。

FORCASのマーケ立ち上げ時から、オフラインをまわしてくる中で、「ABM×オフラインマーケ」はめちゃくちゃ相性の良いマーケティング戦略だと考えています。

フェーズ3:イベントを開催し、インサイドセールスアプローチによる商談獲得

3つ目のフェーズでは、ついにイベントを開催します。

当日はとにかく来場者の方々に満足いただけるコンテンツと空間づくりを徹底しています。たとえば、アドビシステムズ(元マルケト)さんと開催させていただいた「THE MODEL」イベントでは、スマートLEDを取り入れ、会場の照明をMarketoカラーにして装飾し、重厚感とともにエンタメ性も体感できる空間をつくったりしました。

当たり前ですが、イベントやセミナーは集客がゴールではないので、当日の「体験」をどうつくるか、そこが一番肝だと思っていて、当日の運営オペレーションは事前準備からリハーサルまで徹底的に行っています。ここのオペレーションやスタッフも、マーケやインサイドセールスメンバーが中心になって動いてくれています。

イベントのオペレーションを回す方法については、別記事でご紹介しています。ご興味あれば↓からどうぞー。

また、来場者に対して満足感を感じていただくとともに、ぼくたちの動きとして重要視しているのが「インサイドセールスメンバーによる来場者アプローチ」です。

インサイドセールスメンバーには、事前に申込者リストをSalesforceにて共有しており、そこから自分たちがアプローチしたい方をピックアップしてもらっています。そして、当日はその方が分かる仕掛けをつくって、それぞれが声掛け等でアプローチしています。(長くなるのでここはまた別で記事書きます)

フェーズ4:イベントをレポート化し、ホワイトペーパーとしてWeb配信

オフラインマーケティングによるリードジェネレーションは、上記のフェーズ3までが一般的だと思います。ぼくたちも、その3ステップをこれまで回すことでマーケ施策を進めてきましたが、昨年末から新たなリード獲得施策としてスタートしたのが、この「フェーズ4」です。

フェーズ4は再び「Online」のフェーズになります。イベント終了後、イベントで実施したセッションを元にした「イベントレポート」を作成します。

これはセッション内容の書き起こしがメインになります。イベントセッションの内容を編集し、レポートとして当日参加いただけなかった方でも参考になる内容にまとめています。

そしてレポート化した内容は、デザイナーチームの助けを借りて、ホワイトペーパー化します。そこから再びマーケティングチームにて、SNSを中心としたターゲティング広告配信を行います。

このレポートコンテンツの配信により、オフライン企画のリード獲得効果は、単純に倍化します。というのも、オフラインイベントでは物理的な定員(キャパシティ)があり、集客に限界があります。しかし、そのコンテンツが本当に顧客に求められるものであれば、その定員以上のリードの集客が可能です。

もちろん当日の温度感や言葉の外で伝わる登壇者の姿勢については、テキストでは伝えることは難しいですし、やはりその場でしか体感できないことだと思います。しかし、コンパクトに情報を知りたい、当日参加できなかったがどうしても内容を知りたい、という方々に読んでいただけることは価値があることだと思っています。

レポートだけでなくセミナーコンテンツのホワイトペーパー化も有効

今回の「オフライン企画からオンラインコンテンツをつくり、ターゲット企業のリード獲得を倍以上に増やす施策」において、特にイベントレポートについてご紹介していますが、実はこれはイベントの書き起こしレポート以外のオンラインコンテンツ制作にも有効です。

ぼくたちは週1,2回のペースでセミナーやイベントを開催していますが、そこでは自分たちの実践に基づく新たなコンテンツをつくり、共有しています。そこで生まれたオフラインコンテンツを元に、オンライン上で配信するホワイトペーパーの制作も行っています。

たとえば、マーケ部門を立ち上げてセミナー開始した当初からご好評いただいている「ABMターゲティングワークショップ」というセミナーがあります。このセミナーでは「ターゲティングの考え方と実践方法」についてお話していますが、そこから生まれたホワイトペーパーとして、『実は知られていない良いターゲティングと悪いターゲティングの違い』というものがあります。

上記でもメリットとして挙げましたが、オフラインイベントでは直にお客さんの反応を見ることができます。これはめちゃくちゃ有効なユーザビリティテストです。その反応や声を伺いながら、どのようなコンテンツがお客さんに求められているのかを考え、作成していくことが可能となります。

イベントレポートコンテンツの3つのメリット

オンラインコンテンツとしては、資料請求や導入事例、サービスにつながるようなホワイトペーパー等さまざまなものがあります。

もちろんそれらのコンテンツもとても大切ですが、イベントレポートを作成することには2つのメリットがあります。

① ターゲット企業向けのコンテンツをそのままオンライン化することにより、オフラインイベントに興味がある層と同じターゲット層をオンライン上でも効率的かつ低コストで獲得可能

② イベント参加者の反応を直に見ることができるので、そのコンテンツの有効性を肌で感じ、コンテンツ化するかどうかの選定が可能

③オフラインイベントの書き起こしからの編集レポートのため、コンテンツ制作負荷が軽減しコンテンツ制作が加速

コンテンツ制作で重要となるのは、「クオリティ」と「制作リソース」だと思います。「クオリティ」とは、「自社がターゲットとしている見込み顧客がいかに満足し、行動喚起につながるコンテンツをつくれるか」ということになります。また、「制作リソース」は、実際にそのコンテンツをどうやってつくるのか、誰がいつつくるのか、という制作の実現可能性に直結します。

この3つのメリットにおいて、イベントレポートは非常に有効な手段であり、実際にぼくたちのマーケティング活動において、これまでのリード獲得の成果を大幅に拡大することにつながっています。

イベントレポート制作の工数が課題。そこにヒーロー登場

とは言うものの、イベントレポートを制作すること自体、結構大変な作業です。単に書き起こしをそのまま掲載すれば良いというわけではなく、セッションの書き起こしを編集し、レポートとして読みやすく、かつ読み応えがある内容のものをつくる必要があります。

イベントレポート化の施策を始めた当初のプロセスでは、まずセッション実施中にセッションを録音し、その録音データをクラウドワークスなどのアウトソースで書き起こしてもらい、その書き起こし内容をぼくが編集していく、という流れで進めていました。

しかし、このプロセスは意外と結構な工数がかかりました。アウトソースのやりとりもさることながら、出来上がってきた書き起こしは本当の文字起こしなので、会話ベースだと成立している内容も文字に直すと意味が読み取りづらい、前後関係がわかりづらいなどの課題があり、編集作業がまずは文の意味を理解し、構成を整え直す作業から始まるので、結構な時間がかかります。本当は毎回のイベントをレポートにしたいと思いながらも、他の仕事もある中でのコンテンツづくりは実現ベースでは難しいところもありました。

そこに現れたのが、我らがマーケティングチームメンバーである西脇さんです。元々コンサルティング会社で働いていた彼は、即時の内容整理能力、構成能力がめちゃくちゃ高く、MTGの議事録はMTG終了のタイミングでわかりやすい内容のレポートをその場でみんなに共有する、という能力を持っています。

その西脇さんの匠の技をイベントレポートでフル活用してもらうことになりました。イベント当日、西脇さんはセッションの最中は一切の運営タスクを外れてもらい、「セッション内容の即席書き起こしレポート」の作成に特化してくれています。

この西脇氏によるレポート制作プロセスが生まれてから、イベントレポートの制作が一気に加速。イベントのレポートコンテンツ化の体制が敷けました。

他のプロセスも含め、ぼくたちは属人的な組織体制であり、仕組み化されているとは言えませんが、FORCASはそれぞれのもつエッジ・偏愛を活かしながら、新しいカタチをつくっていく組織なので、まずは徹底的な属人化による体制づくりを進め、そこから仕組み化やオペレーション化に落とし込みをしていっています。この制作プロセスも今後仕組み化していきたいと思います。

協力してくださるユーザーさんや登壇者の方々に本当に感謝

そして何より、「AOO」戦略を実践するにあたり、ぼくたちのイベントにご登壇いただき、かつイベントレポートの作成にご協力くださっている、FORCASユーザーの方々や登壇者いただく方々に本当に感謝です。

セミナーで自社の取組みをご紹介している講演コンテンツのホワイトペーパー化であれば、自社で完結しますが、パネルセッションや講演登壇などでご協力いただいた内容のイベントレポート化は、ご登壇いただく方々のご協力があってこそ実現できています。特にレポートは、お忙しい中にもかかわらず、ご自身の登壇した内容をチェックしていただき、社内の確認などもとってくださっているので、本当にありがたいです。

だからこそ、ご協力いただいた方々が、「イベント登壇してよかった」「レポートに協力してよかった」と思っていただけるコンテンツや場づくりをしていくことが本当に大切だと考えています。それがぼくたちができる一つのご恩返しのカタチだと思っています。

おわりに:顧客に対していかにナチュラルな流れをマーケでつくれるか

今回ご紹介した「AOO」は、実は特に目新しい施策ではないと思います。オフライン企画をつくった上で、それを書き起こしてレポート化する、という流れは多くの企業で実践されていると思います。しかし、ブログでの紹介に留まっていたり、リード施策としては機能していないケースが多く、本格的にリードジェネレーション施策としてマーケティング活動に落とし込んでいることは意外と少ないのかもしれません。

ぼくたちはFORCASのビジョンである「未来のマーケティングを共創する」のもと、自分たちも「未来のマーケティングをつくる」ことにコミットし、新たなマーケティングの取り組みを繰り返していっています。

しかし、それは特に奇をてらったことをしているわけではなく、「当たり前のことを当たり前にやる」ことを前提として、「マーケティングを通して、見込み顧客に対していかにナチュラルな流れをつくれるか」を考えています。そのためには「コンテンツ」を徹底的に考えることが大切で、それをカタチにして伝えていくことが不可欠だと思います。

ぼくらもまだまだ暗中模索しながらPDCAを回してマーケティング活動を進めていますが、「ABM×オンラインマーケティング」の成功事例はまだ世界的にも少なく、そのユースケースをつくることはとても意義があることだとも考えています。

今回は、その一環として実践している「AOO」戦略についてご紹介しました。少しでも日頃のマーケティング活動のご参考になったのであれば幸いです。では今回はこの辺りで。長文読んでいただき、ありがとうございましたー!

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読んでくださってありがとうございます。まだまだ試行錯誤の連続ながら、自分たちの日々の取組みから得た気づきをシェアしていきたいと思っています。