見出し画像

次世代リーダー育成塾 第4講 高い志をもつこと

おはようございます。本日は第4講をお届けします。今回のテーマは「高い志をもつこと」です。リーダー育成モデル(下図)でも重要な土台の一つに位置付けているリーダーに必須の修養テーマです。また非常に難解なテーマです。何故なら志は「持った者」にしか理解し難い燃える心、つまり目に見えない着火装置みたいなものだからです。謂わば味の素ならぬ「情熱の素」です。「こうすれば志を持つことが出来る」という具合に論理的に語る対象ですらないのかもしれません。頭の中にはイメージはあります(そのことを何とか表出化したいと思います…)。また、女性の皆さんにとってはこの”志”という言葉自体、「男性のもの、男性が使う言葉」という認識が非常に強いようです。私の知り合いに志保(しほ)さんという素敵な名前をもつ女性もおりますが…。

リーダーモデル2.1

1 「志」の意味

『広辞苑』では次のように説明されます。

①心の向かうところ。心にめざすところ。源氏物語若紫「われにおくれてその―遂げず」。「―を果たす」
②相手が寄せてくれる厚意。親切心。または、情愛。土佐日記「屠蘇・白散・酒加へて持てきたり。―あるに似たり」。源氏物語帚木「―深からん男を置きて」。「折角の―を無にする」
③気持を表して物を贈ること。また、その贈り物。土佐日記「いとはつらくみゆれど―はせむとす」
④死者への追善供養。また、そのしるしとして物を贈ること。また、その物。

多くは①の意味、心の向かうところ、こうありたいと強く思う心といった意味で用います。また、志は持つ前に「立てる」ことが必要です。それを「立志(りっし)」と言います。同じく『広辞苑』では下記の通りです。

【立志(りっし)】
志を立てること。目的を定めて、これをなしとげようと志すこと。        (因みに「志を立てる」とは、「ある目的・信念を実現しようと決意する。」との意です。)

つまり前回までに述べてきたリーダーのもっとも重要な土台である「正しい考え方・信念」を実現しようとする決意、覚悟を持つということです。「何となくこうしたい、こうありたい」というぼんやりとしたものではなく、はっきりとした目的、ありたい姿を思い描くこととも言えます。因みに私が30代後半のときに初めて立志したのですが、それは「残りの人生を通じて1社でも多く”良い会社”を増やすことを通じて次世代に希望ある社会を残す」でした。以降、ずっとこの目的が私の仕事になりライフワークにもなっています。”良い会社”とは①お客さまに喜ばれる商品・サービスを提供して社会に貢献する会社②働く仲間が物心両面で幸せな会社③結果として高収益の会社、です。

2 志は”人間中心主義”の素

この「志」の意味からすれば、志のないあらゆる「ビジョン」や「戦略」は決して人を動かすものにはなり得ないと考えています。つまり数字や理屈ばかりの冷めたビジョン、戦略になってしまうということです。数字はビジネスではとても大切なものです。目的にどれほど近づいているのか、数字で表せないと具体的な計画を立てられません。一方、リーダーは売り上げや利益や経営の様々な指標に「意味」や「意義」を与えられないといけません。なぜ2億やるのか、100億やる必要がるのか、利益率はいくら必要なのか…そこに意味があると仲間が思えなければただの冷めた目標になってしまいます。よくある「上から勝手に降りてきた数字」となってしまいます。そうなると「数字」を追う或いはそれに追われる仕事になります。こうした会社が非常に多いですね。私は数字は「世の中への貢献度」だと考えています。そして仕事とは「どれだけ人を幸せにしたか、喜んでもらえたか」を追求するものだという仕事観ですので、自分自身或いは仲間と喜ぶ時も悲しむ時もこれが軸になっています。

昨今、マーケティングや経営の世界では”人間中心主義”という言葉が多用されています。端的にこの意を示す金言としてマーケティングの神さまの言葉を借りましょう。

われわれは『マーケティング 3・0』で、生産主導のマーケティング(1・0)から顧客中心のマーケティング(2・0)へ、さらには人間中心のマーケティング(3・0)へという大きな変化について論じ た。顧客がマインドとハートと精神(スピリット)を持つ全人的存在へと変化していることを指摘し、したがって、マーケティングの未来は、人間的価値を支持し、表現する製品・サービスや企業文化を生み出すことにあると主張した。【出典】フィリップ・コトラー『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』(朝日新聞出版)

さらに人間中心主義とはどのようなものか、コトラーは競争戦略論で著名な経営学者マイケルポーターのCSV(本業で社会課題を解決する戦略)などが世に提唱されてきている現状を踏まえて次のように言います。

「企業はマネーマシンにとどまらず、思いやりのある 存在に変身しなければならない。 顧客はお金儲けにしか関心がない会社よりも、思いやりのある会社のほうを選択するだろうからである。」               【出典】フィリップ・コトラー『マーケティングの未来と日本 時代に先回りする戦略をどう創るか』(KADOKAWA / 中経出版)

「思いやりのある会社」とはまさに私の志でもある「良い会社を1社でも多く増やす」にシンクロする考え方としてとても共感します。よく実際の次世代リーダー育成塾の課題として「10年後の自社のありたい姿」を1万字程度でレポートして頂く機会があるのですが、分析や数字の積み上げ方は精緻でズボラな私なんかでは到底為し得ない素晴らしい作業をしたと思えるものが多いのですが、その仕事や事業の先に「こういう社会にしたい」「こういう世の中を次の世代に引き継ぎたい」という人物は少ないものです。戦略に精緻は重要ですが、一方何か心動かされるものがないプレゼンテーションが多い気がしてなりません。トップや役員の評価の方を気にしているのかな、と感じることも間々あります。近視眼的な発想に陥ってしまいがちな今の傾向は、結局は世の中を一歩でも良きものにしていく情熱の退化を匂わせていて不安になると同時に、私自身の火種としての力不足も感じるところです(汗)。かつて明治維新を通じて我が国の近代化を成し遂げたリーダーたちを多く生み出した吉田松陰先生はことあるごとに松下村塾の塾生に「君の志は何だね?」と問うていました。

3 志の立て方、磨き方

たいへん不遜な表現かもしれませんが吉田松陰先生は”志界のアイドル”的な存在です。その松陰先生は志は「感化される」ものだとも言っています。その手段について、松陰先生は書物の中で様々示してくれています。次回そのことについて具体的にご提示できればと思います。今回はここまで。お読みいただき有難うございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?