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【読書記録#1】綾崎隼『死にたがりの君に贈る物語』

本書『死にたがりの君に贈る物語』(綾崎隼 【著】)は「読書の秋2021」の企画でポプラ社一般書通信の課題図書であった。開催期間内(2021年10月17日(日)〜11月30日(火))に読み終えることができなかったけど、読みごたえ抜群だったので読書記録として残しておこうと思った。本書はミステリ作品なので、ネタバレしないように注意しつつ感想文を書いてみる。

これまで私は本を執筆したことがないので、「作者」の苦悩をリアルに想像することは難しかったけど、本書を通して、より身近に「作者」の苦悩を感じることができた。また、「作者」「編集者」「読者」の関係性を意識できるようになったのも本書のおかげだと思う。本書では、作品を生み出す過程の一部を「作者」側の視点と「編集者」側の視点から体験することができた。本書で登場する「編集者」の熱意と理解にはただただ感動した。組織の中で働く場合は「事なかれ主義」になってしまうことも多いと思うけど、「編集者」の役割を超えて、「作者」の作品のファンの一人として活動する姿に心揺さぶられた。そして、作品を楽しみにする「読者」の姿が「作者」にとって心の支えになっているのだと改めて感じた。熱烈な「読者」の意思は「作者」のみならず社会全体も動かしていくことができる。「読者」という存在の頼もしさを感じることができた。

本書は「小説家・ミマサカリオリ」という人物のノンフィクション小説を読んでいるような不思議な感覚に陥っていく。小説の中の小説家の物語を読者が俯瞰的な視点から観察するという不思議な体験であった。本書では山中の廃校に七人の男女が集まって物語が展開されていくが、予想できない展開の連続のため、なかなか読書を途中で止めることができなかった。読み始めると続きが気になってしまう作品である。また、多くの人々を魅了したとされる「小説家・ミマサカリオリ」の作品(Swallowtail Waltz)は読んでみたくなった。おそらく本書同様に夢中で読んでしまう作品なんだろうなと想像している。「小説」を生み出し続けるためには作者は様々な葛藤を乗り越えていかなければならないということを本書から痛いほど学んだ。

本書の感想を熱く語ってしまうと、即ネタバレにつながってしまうような稀有な作品であるが、読書後に何だか元気が湧いてくる作品でもある。「本」に宿る多くの可能性に気づくことができた。「編集者の方々が選書された本はやはりおもしろい!」というのが素直な感想である。本書をきっかけとして、「出版」や「編集者」の役割に興味を持つようになったので、次の読書は「出版」や「編集者」をテーマにした本を読んでみようと思った。

最後に著者の綾崎隼先生に感謝するとともに、本書を生み出して頂いた編集者の方々に感謝致します。「本」に関わる多くの人達の想いに気づくことができました。素敵な読書体験をありがとうございました。

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#綾崎隼 #ポプラ社

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