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ウミガメの孵化と私

ある時、訳あって沖縄で数日過ごすことになり、せっかくだからいい景色を見ながらのんびりしようということで、海沿いのホテルを予約。

小さな庭には南国の植物に、何種類もの蝶が舞っていてのんびりとした雰囲気。
ホテルから直結でビーチまで行けて、景色も良い。
昼間、透き通った海には小さく色彩豊かな魚達の姿が。

最高。
と思っていたのもつかの間。

夜になり、バルコニーからビーチに目をやると、大勢の人がライトを持って何かを探しているような様子が見えたので気になってフロントに聞いてみると

「ウミガメの卵が孵化したみたいで、皆さん見に行かれているようです。珍しいことなので、よかったら見てきてはいかがでしょうか?」

と、教えてくれた。
産卵ではなく、孵化。
産卵は見れても、孵化するところは中々見られないことだと後から知った。
そして、このビーチに毎年産卵に来るわけではないみたい。

着いた当日でのこのニュースはとても嬉しく、すぐさまビーチへ。

足元をライトで照らしながら歩いていると、すぐに生まれたばかりの子亀がよちよち歩いているのが目に入る。

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(眩しかったよね…ごめんね。)

が、
次の瞬間私の頭は一瞬パニックに。

何十(百?)といるこの子亀たちは、そろいもそろって海ではなく、ホテルの方向に向かって歩いていたから。

”えーっと、ウミガメって浜から生まれ出て、海へ向かうんだよね?”

とパニックな頭を一旦整理して、とりあえず捕獲して海へ。

その間に違う子亀が浜へ上がってくるのでまた捕獲して海へ。

….海へ。
….海へ…..海へ…..

キリがない!笑

という作業を延々としながら、私達よりも先に集まっていた地元の方が教えてくださった内容で納得。

ウミガメは生まれてすぐ海へ向かうわけですが、光の方向へ向かう習性があるとのこと。(真っ暗な中だと海の方が陸地よりも明るく見えるらしいことは後でネットで調べて知りました)

ところが、このビーチはホテルが決めた時間までライトアップをしていた為、子亀たちはその明かりを頼りに間違えて浜へ上がってきてしまっているらしい。

すでに集まっていた方が、ホテルに掛け合って明かりを消すようにお願いしてくださっていて、その後30分程で亀の姿も見えなくなり、明かりも消え、ようやく終了。

その後、卵の孵化した場所を見ながら、丁寧に色々なことを教えて下ったこの地元の方にはとても感謝しています。

いち早く産卵に気づいた彼は、杭を打ってロープで囲み、観光客に間違って荒らされたりしないように対策して、2ヶ月以上もの長い間、見守ってきたそう。

そして、もう一箇所同じようにロープで囲ってある別の産場も教えてくれて、たぶんあと1ヶ月後くらいに生まれると思うと話されていた。

これは、珍しい瞬間に立ち会えてラッキーだったね、などという話ではない。

こういう時に、私はいつも、
"あぁ、これまで知らなくてごめんなさい"
と思う。

このわずか1時間足らずの偶然の出来事で、私は今まで結びつくことのなかったウミガメと私の生活を結ぶ事ができた。

海沿いのホテルに泊まる事なんて、そんなにしょっちゅうある訳ではないし、ましてやウミガメの孵化に立ち会うことも滅多にない。

だけど、実際に私達人間が生活したり、人生を豊かにする為の選択をすることによって、知らずのうちに何かを狂わせている事がある。

もちろん、このホテルが悪だなんて思ってもいないし、ホテルはお客の時間を良いものにする為に最善を尽くしているだけ。時間はかかったけど消灯もしてくれた。

今回、このビーチに産卵したのも初めてのことらしく、知識が無かったというだけ。

今回のことを機に、この時期にはライトの時間を変更したりと対策もしてくれる気がする。

そもそも、これまで産卵した事がない場所で、明かりのある場所で産卵をしたのも、安全な場所がなくなってきているという証でもあると思う。(親亀もなるべく明かりのないところを選んで産卵する修正がある)

ホテルを運営する側も、ホテルを利用する私達も、一緒になって理解や知識を深める事が大切だと強く感じた。

都心部ではなく、こうした自然の近くで非日常を味わう、というのはとても贅沢な事だと思う。
だからこそ、最低限の知識と自然への尊敬を持つ事が大切だと改めて気づかせてくれた。

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