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[pmconf登壇資料]今こそ直観で跳ぶ、多様性時代のプロダクトマネジメント

2022年11月2日開催のpmconf2022で僕が登壇したセッションのスライドを説明とともにここにアップします。

「今こそ直観で跳ぶ、多様性時代のプロダクトマネジメント」の発表スライド

発表当日に口頭で話した内容も後日追記予定です。
※各スライドの下に追記しました。合わせて参考資料のリンクも追記しました。(2022/11/07)

noteの松下と申します。よろしくお願いいたします。

はじめにお伝えしたいことがございまして、本セッションのスライドはすでにnoteで公開中です(本記事のことです)。発表を聞きながらお手元でご覧になりたいかたはそちらをお使いください。
大変申し訳ないことに、話したいことと時間の都合上noteの事例が少なくなっています。Ask the Speakerやオフサイト(※正しくは「オンサイト」)でお話できると嬉しいです。

僕が携わっているサービスは『note』です。テキストのイメージが強いと思うのですが、画像・音声・動画など多様な創作を支えるサービスです。

プロダクトマネジメントは6年ほどやっているので、年数的には中堅と言えるかなと思います。noteには入社してちょうど半年が経ちました。これまで『REALITY』や『SUZURI』などクリエイター向けのサービスのプロダクトマネジメントをやってきました。加えてマーケティング系の出自なので、toC, グロースが得意領域です。

今日のセッションを通じてたどりつくべきゴールといえる集団はこの4つの図のうちどれでしょうか。四角は課題領域、丸は個人が解決できる領域を示しています。

「賢い」とか書いてあるのですぐおわかりになったかと思いますが、左下図3の「賢い集団」です。今回はプロダクトマネジメントの文脈で「直観」と「多様性」をキーワードにして、「賢い集団」に至るための道筋を新たな視点とともにご提供できればと思います。

課題解決の領域をプロダクト、それを解決する個人の領域を「直観」としたのが本セッションのコンセプト図です。課題解決は直観でおこなう、その直観は鍛えることができる、1人じゃなくてみんなで直観することでより課題解決の範囲を拡げることができる、と大きく3つの章に分けてお話します。


まず「プロダクトは直観でつくられる」の話の前に、今回のセッションは公募だったのですが、公募するに至った想いをお話させてください。

日本で2016年頃から続く「プロダクトマネジメントとは何か」「プロダクトマネージャーとは何か」、という定義論はもう終わりにしていいかなと思っています。かつて僕はWebディレクターという職種でした。それが今やプロダクトマネージャーとして働いたり、転職したり、採用したりができています。職種として定着させるという意味では、プロダクトマネージャーの定義は必要なだけ進んだと言えるのではないでしょうか。もちろんこれはpmconfをはじめ、発信や組織づくりなど様々な取り組みの成果です。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます!
そして、今こそ次のステージに進みましょう。pmconf2022のテーマでもある「回帰と進化」の「進化」を目指したいと思います。

話を戻します。今からは「回帰」のほうのお話をします。「プロダクトは直観でつくられているよね」という確認をさせてください。直観でつくられていると言うと荒唐無稽に聞こえるかもしれません。またはちゃんと考えてやっている、フレームワークなんかも使っている、というお言葉があるかもしれません。それらを否定するわけではなく、それって突き詰めれば直観と言えるのでは?という話です。

みんな大好きNetflix。創業者のリード・ヘイスティングスがNetflixを思いついたエピソードで有名なものがあります。『アポロ13』をレンタルビデオ店でレンタルしたのですがなんやかんやあって延滞金を40ドルも払うことになってしまいました。
これに対して対症療法的な仮説では、Netflixのような偉大なプロダクトをつくることはできません。

Netflixはみなさんご存知のように、そもそも店舗を設けず郵送で完結するようにしたり、金額をコミコミのいわゆるサブスクにしたり、DVDを送るのではなくインターネットでストリーミングするようになりました。これは対症療法的な仮説ではなく、論理的な跳躍がある仮説と言えるでしょう。

つまり、良いプロダクトをつくるには良い仮説が必要です。そして良い跳躍した仮説を生み出すにはバネが必要です。筋肉や体幹など土台が必要です。それを「直観」として説明していきます。

僕たちが跳躍するバネとしての「直観」です。

直観というのは定義が色々ある言葉なので、ここで扱う定義を明らかにしておきます。それは二番目の「創発的直観」です。プロダクトづくりなど複雑な問題解決の際に行われる思考様式のことです。くわしくは次の章で見ていきましょう。

ここまでのお話をまとめるとスライドの通りです。

なんと!直観は鍛えることができます!直観というのはともすれば天才だけに許された特殊技能のように思われるかもしれません。それは全くの誤解で、直観は誰もがおこなう思考様式で、鍛えることすら可能です。認知科学ではかなりメカニズムがわかってきたりしています。

直観を鍛えると、個人が解決できる領域が広くなります。

「創発的直観」についてお話を進めると先ほど言いました。創発的直観という複雑な状況に対する素早い判断のための思考はモデル化されています。そのうちの1つでRPDモデルというものがあるのでご紹介します。

消防士が現場の状況を素早く判断して解決策を実行するような場面を分析したものです。大きくわけて3つあります。ちょっと見づらいですので日本語で簡単にまとめます。

状況と行動方針、どちらがわからないかによってパターンが変わります。

ここから得られる示唆は「いま問題解決に足りないのは何か?」という問いを細分化できることです。状況なのか行動方針なのかゴールなのか。直観の構造を知って活用できるための糸口となります。

直観は複数の情報を総合して行動を導き出すので、事前の情報を増やすことは良い直観につながります。それも、同じ領域ではなく多角的に増やすことが有効です。PMだと上の2つに集中すると思いますが、そもそも人間はどういう性質があるのかという哲学や心理学について知識を深めるのもプロダクトマネジメントのために有効でしょう。実際に行動経済学が流行ったりしてますよね。

課題について考えたあと、シャワーを浴びたりベッドに入ったときに解決策を思いつくことがありませんか?それは認知科学的には「あたため」と呼ばれる直観のために重要な過程だったりします。現在の認知科学ではいくつかの研究によって、直観されやすい環境がつくれることがわかっています。自分のnoteで「創造性に効く11のルール」としてまとめているものを抜粋しました。一番のおすすめは「スマホは別室に置け」です。どのルールも脳の計算リソースをいかに課題に集中させるかが大事で、スマホは特に脳のリソースを食うので、今すぐ窓から投げ捨てましょう。うそです。別室に置くくらいにしましょう。

ここまでのまとめです。直観を鍛えるための考えや情報をお伝えしました。

最後の章になります。

プロダクトは直観によってつくられ、その直観は鍛えることができる、というところまでお話しました。しかし、1人では課題領域のカバーには限界があります。ここで大事になるのが多様性をもったみんなで直観することです。

多様性が無いゆえに失敗した組織の例としてCIAが挙げられます。『多様性の科学』ではこれがメインテーマとなっています。9.11はアフガニスタンのイスラム原理主義組織が起こしたテロですが、CIAはアフガニスタンの文化やイスラム原理主義に刺さるメッセージなどについて敏感な人が居なかったんですね。そのため色々な動きは把握していたけれども、たくさんのやるべきことの中で優先順位が上がらなかった。重要性をそもそも認知できていなかったので。反対に多様性があるがゆえに成功した組織は何が挙げられるでしょうか?

それは映画『シン・ゴジラ』に出てくる「巨災対」という組織です。みなさんご覧になったことはありますか?僕は大好きな映画です。劇中ではゴジラという未知の生物を止めるためにニッポンの優秀な人達が奔走します。

ネタバレになってしまってごめんなさい。結果として「巨災対」はゴジラを止めることができました。これの一因として、多様性がある組織だったことが挙げられます。問題の特定や解決のためにニッポンの優秀な人材が集まったのです。一匹狼やひねくれ者と呼ばれた人ですら一致団結して「ゴジラを止める」という激ヤバな課題解決に向かって自由に行動ができました。

「CIA vs 巨災対」と書くと新しいゴジラ映画のタイトルのようですね。両者を分けた違いはたった1つ、「課題領域をカバーできる多様性を持っていたかどうか」です。どちらも優秀な人の集まりですので実行に関しては問題がなかったはずです。

冒頭の図で言うと、CIAと巨災対はそれぞれどれに当てはまるでしょう?ここまでのお話を経てすぐにピンと来る方も多いのではないでしょうか。

このようになります。CIAは国際テロという課題に対して多様性が足りませんでした。一方で巨災対はゴジラを止めるという課題に対して多様性を持って十分にカバーできていた状態です。

繰り返しになりますが、大事なのは課題領域を正しくカバーする多様性です。現代はニュースなどでも「多様性」についてよく語られます。女性の権利やLGBTQなどのマイノリティの権利などの文脈として重要な多様性ではなく、あくまでも課題解決のための多様性です。そこはどちらも大事ながら全く別問題です。
あなたの組織で課題領域をカバーしきれていない場所(視点)はどこでしょう?決済システムだったらセキュリティスペシャリストや法律上の縛りが多いので法務が重要だったりシますよね。

多様性は実は活用しやすいタイミングがあります。それは発散期です。アイディエーションの時間です。ブレストなどやるときは課題の解決法までは決まっていないでしょう。そういう段階では意識して多様性をもたらすと、よりより課題解決につながります。Amazonがやっていて、noteでも一部導入している最初に仮想プレスリリースを書くWorking Backwardsも有効です。
もう1つは、ブレストなど標準化されているフローのように、多様性が入り込む場所を意図的につくると活用できる幅が広がります。noteでは、最近僕のチームで施策の優先順位決定を標準化しました。今まではプロダクトマネージャーの僕が1人で決めていました。これにより、施策の評価においてもデザインやエンジニアリングの観点を補充でき、精度の高いものになっていくと期待しています。(先日やりたてなのでまだ結果どうかがわかっていない)

この章でのまとめはこちらです。それではこのセッション全体のまとめに移りましょう。

最初に僕たちが目指した理想状態は次の図です。

この、多様性をもって課題領域を正しくカバーしている「賢い集団」を理想としたのでした。

コンセプト図にもどるとこのようなステップです。「直観」というものを個人の解決能力(領域)と捉えたのでした。一番右の状態に至るイメージがみなさんのなかで育ったならば嬉しいです。これでおしまい!と思ったら実はそうではありません。

1つのプロダクトが課題領域のすべてをカバーできているわけではありません。noteを例にとると、noteはテキストの分野において問題解決を進めましたが、それだけを目指しているわけではありません。音楽・映像・料理など、あらゆる創作を支えたいのです。そう考えると、賢い集団だったプロダクトチームもあっという間に無知な集団になってしまいます。この意味でも課題領域の設定は大事なのです。

noteは先ほどお伝えしたとおり、とても大きな課題領域を相手にしています。そのためには課題領域をカバーするための新たな直観が必要です。ぜひ、あなたの直観をお待ちしています。採用エンドになっちゃって恐縮ですがこれで僕の発表を終わりとさせていただきます。聴いていただいたみなさん、ありがとうございました!

SpeakerDeckにも同じスライドをアップしています。

pmconf運営のみなさん、最高の舞台とオペレーションをありがとうございました!公募に応募してから充実した約3ヶ月間でした!

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