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建物コンバージョンが繰り返される社会の到来に期待を寄せて

 先日、建築デザイン会社の代表の方と話す機会があり、建物コンバージョンに関する彼らの基本スタンスに共感しました。建物コンバージョンは地域の特性を深く理解し、地域の将来像を形作る上で重要な役割を果たします。特に、中古ビルの活用は意義深い取り組みであると感じています。以下、建物コンバージョンについて要点をまとめました。

 私は、建物コンバージョンのプロセスを、人体の細胞が定期的に入れ替わるような自然なリニューアルになぞらえてみています。建物が時代や利用者のニーズに応じて変化し、進化する様子は、生物が環境変化に適応するプロセスにも似ています。コンクリートの建物を生き物として捉えることで、より興味深く建物を見ることができます。

 新築と比較して、建物コンバージョンはコスト削減と時間節約の面で有利です。既存の構造を利用することで、建設コストと資源の浪費を減らすことが可能です。建築デザイン会社では、企画段階や改修工事でのバリューアップにより、投資家の関心を引くことができています。建物の仕入れから販売までの回転期間は新築の時間の目線の比ではありません。結果、古い空きビルを活用することで、新築に比べてコストを抑えることができます。

 勿論、テナントリーシングにかかわる企画は大事だと思っています。時代にフィットした企画力のある建物コンバージョンによって既存の建物の寿命が延びている事例があります。たとえば、古い工場をアートスペースに変えることで、新たな社会的価値が創造されています。最近流行りのサウナの企画もみかけました。

産後ケアホテルへのコンバージョン事例も面白いです。

 建物コンバージョンは、建物の外観だけでなく、地域の生活様式にも適応し、提案することも可能だと思います。使用されなくなった建物を新しいスペースに変えることは、商業ベースのみならず地域コミュニティのデザイン力もますます重要になっていくでしょう。

 歴史的建造物の保存にも有効です。文化的価値を保ちながら現代のニーズに適応させることもできます。例えば、京都の町家リノベーションや廃校の再利用などが挙げられます。また漁具倉庫がコワーキングスペースに再利用されている事例もあります。

 これらの事例は、建物コンバージョンが持続可能性、適応性、地域コミュニティとの調和も重視された「作品」でもあります。

 建物コンバージョンが都市空間を持続可能で魅力的なものに変え、不動産マーケットの安定的な発展に寄与するためには、技術改良の進歩も不可欠です。例えば、エネルギー効率の向上や耐震性、安全性の維持に関する研究がさらに進むことが期待されます。コンクリートは適切な管理のもとで非常に耐久性があり、適切な防水処理や定期的な点検・修繕により、100年以上持続することもあります。

 最後になりますが、私としては、新築を否定するわけではなく、新築と共に、建物コンバージョンが時代の要請に応え、都市空間を持続可能で魅力的なものに変え、不動産市場の安定的な維持や発展に寄与することを期待しています。


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