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持続可能なオフィスの未来像~サステナブルオフィスに関する提言「SXWP」~

1.はじめに ~サステナブルオフィスについて~

 サステナブルオフィスは、一般的には地球環境に配慮しつつ、社員の生産性やウェルビーイングを向上させるオフィス空間を指します。 そして、単に環境に配慮したデザインに留まらず、働く方々、企業、そして社会にとって持続可能な価値を提供する場として捉えられています。

 具体例としては、エネルギー効率の向上(例:LED照明や省エネ機器の導入)、廃棄物削減(例:リサイクルプログラムやゼロウェイスト施策)、持続可能な資材の利用(例:リサイクル材や自然素材の採用)などが挙げられます。また、従業員の健康やウェルビーイング向上を図る施策として、快適な温度・湿度管理や自然光の利用なども含まれます。これらの要素を統合することで、企業の長期的な成長を支える基盤が築かれます。

 とはいえ、サステナブルオフィスを実現することは簡単なことではなさそうです。環境負荷を軽減するためには、初期のコストが高くつく場合もありますし、さらにサステナブルな取り組みを行うための専門知識やノウハウも必要となります。

 それでも、多くの企業がこの方向に舵を切り始めているのは、単なる環境対策としての価値を超えて、企業の社会的責任として、また、将来社会からみた現在のオフィス形態の模索というところに意識が向いていることの現れなのでしょう。

 10月3日にCICのVenture Café Tokyoで行われたトークイベント「サステナブルオフィスのウソとホント~業界の本音ぶっちゃけます~」に参加してきました。このイベントは、サステナブルオフィスを提案する、コクヨ、船場、ソーシャルインテリアのお取組みと率直なお話として伺いました。その大枠での内容を感想を交えて記します。


2. コクヨ株式会社のビジョンの深層

 コクヨ株式会社の武田雄次さんからは同社の目指す方向性をお示しいただきました。その中で触れた「インクルーシブデザイン」や「循環型ワークプレイス」は、単なる環境配慮を超えた、共創の仕掛けとしてのワークプレイスと位置づけるところと理解しました。

 例えば、インクルーシブデザインにより、全ての社員が快適に働ける空間を設計し、バリアフリーや多様な働き方に対応したレイアウトを取り入れていく中、こうしたデザインを検討する中で「共感」と「対話」の大切さが再確認されます。様々な社員のニーズを満たしていこうとアイデアを出し合う中で、仲間づくり、コンソーシアム的な場所づくりを形にしてく魅力をお伝えいただきました。

 また、単にコスト削減やエコロジカルな配慮だけではなく、長期的な企業価値を高める鍵となりそうです。コクヨはリサイクル可能な素材を多用し、循環型のビジネスモデルの確立と深化を試みています。例えば、家具のリメイクや再利用を進めるにあたってワークショップを行うにあたって、その時に、今、そして将来の使いやすさややさしさなどにも配慮を及ぼすような意識醸成の効果がありそうです。

 このような取り組みを「気づく」と「築く」というコンセプトで表現されています。


3. 株式会社船場の「エシカルデザイン」の意義

 株式会社船場の成富法仁さんの説明の中であった「エシカルデザイン」。空間づくりのみならず、使う、捨てるというライフサイクルを想定した空間をデザインを行うというスタンスが印象に残りました。具体的な取り組みとして、未利用財の活用や施工でのゼロウェイストの実践が挙げられます。従来の消費型の設計プロセスからの脱却、より未来に優しい空間づくりを目指している姿勢に敬服します。そこには、単に見た目が良いということを超えて、未来までを見据えた空間への想いが込められています。

 例えば、建設時に廃棄物を出さないゼロウェイストを推進しています。「廃棄物は資源であることの理解、工事現場での確実な分別、分別努力の見える化」に注力しています。

 成富さんらは、5年から10年で壊されるような短命なオフィスの空間設計に対する疑問から、「次の100年をつくるワークプレイスの在り方」が必要とのことで、コクヨとのSXWPに向けた提言をまとめました(詳細後述)。  

 また、2021年に船場本社オフィスのリニューアルを実施するにあたって「「解体」を想定した設計で、オフィスや現場で不要になったもののリユース・リサイクルに取り組み、廃棄物リサイクル率99%を達成」したとのことです。

 同社では、オフィスや商業施設を長期的に利用できるよう設計することで、建物のライフサイクル全体を見直し、資源の最適利用と環境負荷の軽減を図る提案をされています。


4.サブスク家具による循環型経済への貢献

 株式会社ソーシャルインテリアの直井洋文さんと倉林梓さんは本イベントの進行とともに同社が提供する「サブスク家具」の事業紹介をしました。従来のリースやレンタルとの差別化として、サブスク家具は物理的な資源の循環を通じて、新しい価値を創り出しています。

 その仕組みは、家具を顧客に提供した後、不要になった際には回収し、新たにクリーニングや修理を施して再販やリースとして次の顧客に提供します。この循環の中で、廃棄物を削減し、持続可能な家具利用を促進するモデルが成り立っています。さらに、顧客が利用した家具に対する感情的なつながりも意識しており、リメイクや再利用を通じて、その家具に対する愛着を高め、長期的な消費行動を促しています。


5. サステナブルオフィスについての実情など

 このトークイベントを通じてわかったことは、サステナブルオフィスの良さは認識されているものの、実際に導入するプロセスには多くの課題があるというリアルな現実です。

 例えば、多くの企業がどのようにサステナブルな取り組みを導入すれば良いのか、具体的な計画や実行段階での困難に直面しています。ここで、サステナブルオフィスを実現するには、コンサルタントや専門家の協力、さらに企業間での知識共有が重要となります。コクヨや船場が進めるSXWP(Sustainability Transformation Workplace)では、企業が共に学び合いながら計画を立て、徐々に実行していくという新しいアプローチが推奨されています。これにより、導入にかかる様々な負担を軽減し、前向きに取り組んでいけるような土壌が整えられます。 詳しくは、SXWPについての詳細を以下のリンクで確認することができます。


6.仲間作りと共創による未来

 サステナブルオフィスの実現に向けた「仲間作り」の重要性を、登壇者の皆さんは口にしていました。今後の環境や社会へ向かう取り組みには、多くの企業や地域社会、行政機関、研究機関等との協力が欠かせません。武田さんや成富さんが指摘するように、業界全体としての連携が求められています。

 例えば、循環型経済を推進するには、家具メーカー、設計会社、リサイクル業者が密に連携し、廃棄物の再利用やリメイクを効率的に進めるためのインフラが必要です。また、サステナブルな建築やオフィス空間の実現には、各ステークホルダーの立場を超えたところでのゴール設定が必要になってきます。

7. 最後に 

 今回の学びを共有することからになりますが、サステナブルなデザインや循環型ビジネスモデルへの社会的要請は強まっていきます。具体的な取り組みは始まっています。身近な活動からも「作る」「使う」「捨てる」を見据えて、アイデアを出し合える仲間づくりをしていきます。


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