見出し画像

「光」を見つける旅 ~「ジョハリの窓」を通じた観光地の再発見~

1.はじめに インバウンドはコロナ前の水準に

 「訪日客1月268万人、コロナ前と同水準 中国は55%回復」と2月21日の日本経済新聞は報じました。

 記事の一部を紹介します。

日本政府観光局(JNTO)は21日、1月の訪日客数が268万8100人だったと発表した。新型コロナウイルス流行前の2019年1月とほぼ同水準だった。能登半島地震の発生で中国や台湾など東アジアを中心に旅行のキャンセルが生じた。中国はコロナ前比で55%の回復だった。

出所:日本経済新聞

 そして、最近の傾向について、「日本を訪れた外国人は商品を買う「モノ消費」からサービスなどを体験する「コト消費」へ消費の動向が変わってきている」ということも定着してきているようです。例えば、食品サンプルや包丁づくりが観光コンテンツになっています。

 外国人観光客の増加がもたらす影響は、予期せぬ形で私たちの前に現れています。こんな現象をみて、私は、心理学の分野では有名な「ジョハリの窓」を思い出しました。今回は「ジョハリの窓」を活用した観光地の魅力の覚知についてまとめてみます。

2.「ジョハリの窓」について

 「ジョハリの窓」は、自己認識と他者からの自己認識を理解するためのモデルであり、人間関係を理解するための心理学的フレームワークです。1955年に心理学者ジョセフ・ルフト(Joseph Luft)とハリー・インガム(Harry Ingham)によって開発されました。名前は二人の名前を組み合わせたものだそうです。このモデルは、個人の自己認識と他者から見た自己の認識を、4つの異なる領域、または「窓」を通じて探ります。

 
ジョハリの窓の4つの領域

・公開領域(Open Area)
 自分自身が自覚していて、他人も認識している特性や情報の領域です。例えば、共有されている個人的な情報や確認可能な行動の掛け合わせ部分がここにあたります。公開領域はコミュニケーションや協力の基礎となります。

・盲点領域(Blind Spot)
 自分では自覚していないが、他人が認識している特性や行動の領域です。その認識のフィードバックを通じて、当人がこれらの盲点を認識し、理解することになります。

・隠れ領域(Hidden Area)
 自分自身は自覚しているが、他人には明らかにしていない情報や感情の領域です。自己開示を通じて、他人との関係を深めることができます。

・未知の領域(Unknown Area)
 自分自身も他人も認識していない潜在的な能力や感情、動機の領域です。新しい経験や相互作用を通じて、未知の領域から新たな洞察や成長が生まれることがあります。
 
 ジョハリの窓モデルは、自己開示やフィードバックのプロセスを通じて、盲点領域や隠れ領域を広げることで、公開領域を拡大していくプロセスの見える化に役立ちます。このプロセスを辿ることで未知の領域が広がっていくことになり、結果として、当人の自己認識も高まり、オープンで信頼のある関係を築く鍵となっていきます。
 

3.「旅のロングテール®」について

 最近、株式会社たびふぁんの代表、西岡貴史さんとお話する機会がありました。たびふぁん社は「旅のロングテール®」というコンセプトで温泉botくんやコンサルティングを通じて観光地経営のご支援、地域創生のご支援をされています。地域アクセラレータプログラムでの採択も複数あり、また、官民での勉強会を開催するなど精力的な活動をしております。

たびふぁん社が考える「旅のロングテール®」は自らの温泉好きが起点になっています。

「インターネットが普及してから、情報が得られやすくなった一方で情報が溢れてしまい、自分に合った情報を選択するのは難しくなってきました。温泉を検索すると、有名どころしか出てこなくて、いつも似たような温泉地ばかりに行き、飽きている人は多いのはないのでしょうか。温泉botくんは、感覚や好みにも寄り添って直感的に温泉を選ぶことができるので、今より温泉を楽しむことができます。」

出所 たびふぁん社 2022年4月28日付プレスリリース

 西岡さんとの話の中で私は、「粒々かもしれないが、それでも「光っている」事柄が観光の重要要素であり、それらは様々な関係性の中で成立しているのではないでしょうか」と質問させていただきました。その時に頭の片隅で前提仮説にしていたのが、「ジョハリの窓」でした。「ジョハリの窓」を用いることで、観光地経営者は自らの地域に対する認識と外部からの見方のギャップを明らかにし、新たな観光資源を発見する手がかりとすることができるのではなかろうか、と。
 地域の観光資源について、私たちが知っていて、かつ地域の方々も資源として見做しているものは、開放領域に該当する資源だと思います。しかし、盲点領域や隠れ領域、そして未知の領域には、まだ発掘されていない魅力や可能性が潜んでいるかもしれません。そこがギャップです。例えば、ほそぼそとでも根付いてきた地域の伝統的な祭りや芸能、郷土料理、文化遺産などは、隠れ領域にあたるかもしれません。これらは地元の人々にとってはお馴染みかもしれませんが、外部の人々にとっては新鮮で魅力的に映ることがあります。重要なことは規模ではないということです。
 昨今ではSNSの普及により、まったく関心が寄せられていなかった地域の魅力が広く伝わるようになりました。これは「ジョハリの窓」でいうところの未知の領域を開放となります。こうした情報の共有により、新たな観光客が訪れることになるでしょう。
 こんな事例もあります。ニューヨーク・タイムズ紙が発表した「2024年に行くべき52カ所」において、世界各地の旅行先の中、山口市が3番目に選ばれましたとのことです。

 そこで紹介されたのは、国宝瑠璃光寺五重塔(香山公園)や陶芸工房、コーヒーショップ、おでんや鍋料理をカウンターで提供する店、湯田温泉、毎年7月に開催され約600年の歴史がある「山口祇園祭」だそうです。「世界」を相手にして盲点領域がググっと広がり始めたかのようです。

4.自己覚知のプロセス、「窓を開く」となれば課題も付いてくる

 自己覚知が広がることは新しい関係づくりがオープンになし得ていくことですが、注意点もあります。例えば、急激な来訪者の増加は、オーバーツーリズムを引き起こします。地域の受け入れ能力を超える観光客が訪れれば、地域社会や地域の環境に負荷がかかります。この状況は、事実として発信していくことが必要になります。これは隠れ領域のさらなる拡大にあたります。この発信により、地域の方々がどのような取り組みに着手していくことになるか、また、引き起こされた状況により新しいフィードバックが起こってくることも、どう受け入れていくか、これら発信とフィードバックの受け入れには様々ありますが、少なくとも地域の新たな価値や可能性が見出される契機になり得ますし、また、していくことが地域の観光経営の見せ所なのかと思います。
 観光地経営においては、ただ単に観光コンテンツを作り出すだけではなく、地域の本質的な魅力を理解し、それを大切にしていくこと行為を通じて持続性を確保していくことが大切なことだと捉えています。そのツールとして「ジョハリの窓」のフレームの活用をお試しいただけたらとお勧めいたいます。

5.本来備わっている恵みや誇りの再確認から「光」の源泉を探る

 資源の規模は大小関係なく、深いところで共感が得られることがあれば、それが粒々だとしても、コアとなる結びつきができ、その熱量が近しい所(場所、アイテム、イベント等を含みます)に伝播していくという消費者の傾向もあります。深いところというのが観光でいうところの「光」の源泉だと捉えています。「光」そのものは照らすものであり、競争を促すものではありません。ジョハリの窓を通じて地域の隠れた魅力を発掘し、それを世界に伝えることが、観光地としての持続可能な成長の鍵であるという提言をさせていただきつつ、「光」の源泉の覚知活動で全国を奔走するたびふぁん社の今後にご活躍に期待を寄せています。

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?