麦刈る人




 僕はこの手紙を絵の仕事に疲れた合間に少しずつ書いている。ーー仕事はかなり順調に進んでいるーー僕は発作の何日か前に始めた絵、『麦刈る人』と格闘している。(中略)そのとき僕がこの麦刈る人のなかに見たのはーー自分の仕事をやり遂げようとして炎暑のさなかものすごく奮闘している漠とした人影ーーそこにそのとき見たのは、人類は刈り取られる小麦かもしれぬという意味での死のイメージだ。これはだから、言うなれば以前僕が試みたあの種まく人の対極をなすものだ。しかし、この死には悲しいものはなにもない。ことはすべてのものを純金の光でみなぎらせる太陽のもとに公然と進行する。

「ゴッホの手紙(604)」







麦刈りて我を絵に見る不作かな






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