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『椎名桔平とジョディ・フォスター』(エピソード3・終幕)

こんにちは。

いち編集部のリアルです。

椎名桔平とジョディ・フォスター。今回で終幕です。

2018年末から2019年の春にかけて『極めに・究める・リハ』シリーズは、4冊立て続けにリリースしました。PT(physical therapist)/ OT(occupational therapist)学生向けの臨床指南本として、春先にはきちんと4冊ラインアップをそろえ、PT/OT養成校入学後の学生さん、あるいは卒業と就職を控えた最終学年の学生さんに

「少なくとも世の中には、こんな本もありますよ」,あるいは「先輩の中には,こんなカッコイイ兄貴や姉貴がいる」

とお見せしたかったからです。「脳卒中」編オレンジ、「内部障害」編レッド、「運動器疾患」編ブルー、「神経筋疾患」編グリーン、5冊目はまたオレンジに戻り、ゆくゆくは12巻目までというシリーズ。この4つの色味のカラフルな展開を上手にもじってくださったのが、POSTさんの【書評】極める戦隊!キワメンジャーです。

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(出典:POST)

そして5冊目は監修者自らが執筆の極めに・究める・スポーツリハ』(相澤純也監修・著、塩田琴美共著)となったのは、皆さんもご存じのとおり(第1部「スポーツリハ」第2部「障がい者スポーツリハ」)。当初案では「障がい者スポーツリハ」は13巻目を予定していたのですが、5冊目の企画検討の際、椎名桔平(相澤先生、今回も呼称お許しください)よりお声がかかり

ジョディ・フォスターにも共演してほしいのだが、どうだろうか…

となったのです。本シリーズ編集担当のやり手のHによると、「今、『オリンピックとパラリンピックを1つの大会で行おう』という国際的な動きがあり、この流れを受け,『健常者・障害者両方のスポーツリハを1冊で解説する本』があってもよいと考えている」とのご提案だったそうです。

さすがですね。もちろん編集部としては、このような監修者からのありがたい提案には、基本「YES」の構え。2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控える前の年に、physical therapistがスポーツリハと障がい者スポーツリハに医療専門職としてコミットし、多職種連携ケアのキーマンとしてアプローチする,その重要性をメッセージとして打ち出すことは、編集部としても大変意義深いことと思いました。

しかもです。通常スポーツリハというと、プロのアスリート向けのリハビリを想像するかもしれませんが、椎名桔平の考えるスポーツリハとは、

アスリートも対象とするけれども、素人のスポーツ、もっといえば高齢者の身体機能の予防医学的なアプローチ、そして高齢者でなくても一般の方のスポーツ外傷や機能回復(例えば、週末のテニスで手首痛めたとか…)、そのトレーニング方法やスポーツ復帰など、つまり、①プロアスリート、②素人アスリート(健常者)、③高齢者スポーツ、、④障がい者スポーツ、この4つのPTリハの本を1冊に…というお考えだったのです。これは画期的、もちろんそんな本はこれまでありませんてしたから、そのお考えを聞いた途端に

御意でございます。

となったのです。

但し、アスリートの外傷やスポーツ復帰に対して整形外科医やリハビリ専門医、physical therapistが介入する様子(風景)というのはなんとなくイメージできるのですが、障がい者スポーツの世界となると、義手義足の製作や調整を行う義肢装具士の存在は真っ先に思い浮かびますが、具体的に「PTがどう介入するのか…?」のイメージが今ひとつ掴めず、そこで和製ジョディ・フォスターこと、塩田琴美先生にお会いして直接お話を伺うことにしたのです(塩田先生、「和製」としたので、なんとかお許しください)。

塩田先生は、一般社団法人 こみゅスポ研究所の所長、同研究所のホームページから想像される活動は多岐にわたり、なんと申しますか、障がい者スポーツだけでなく、障がい者やそのご家族、地域や自治体といった当事者とその周縁の人たちも含め、すべての関係者に寄り添い・ともに考える姿勢というのが、こちらに波動として伝わってくる感じでして、お会いする前からどのような方なのか、そんな期待感を抱いてしまう存在でした。論文も多数発表され、論文テーマも斬新な視点があり、でもかといって居丈高な主張をされるというよりは、やっぱり障がい者に

「寄り添い・ともに考える姿勢」

が研究テーマからも感じられるのです。同ホームページにもこんなメッセージがあります。

本研究所の名前である「こみゅ」は英語の接頭語として活用される”co-“(共同,共通),”com” (共に, 一緒に)から由来をし、この接頭語は下に言葉をつなげることで、cooperation、connect, communication, communityなど多様な意味合いを持つ言葉に変化が出来ます。

というわけで、面談は神保町の弊社オフィスの会議室にご足労いただきました。やり手のHが先に挨拶を交わし、「塩田先生がお見えになられました」というので、編集部のあるオフィスからエレベーターを降り会議室へ。会議室の前で呼吸を整え扉を開けると、上下のスーツ姿でしゃっきと決め込んだジョディ・フォスター演じる

クラリス・スターリングが

そこにいらしたのでした。

(お~~~~~~~)。心の中でどよめきが生じます。次の瞬間、

(オッケー! イケル! マチガイナイ!)

とこちらのFirst Impressionが瞬時に言語化されたのでした。でもですね(ふふふ)、お話を伺うと、

本当に、イキのいいお姉ちゃん

なのです(笑)。もうちゃっきちゃっきの江戸娘といいますか、軽妙でノリがよく、「先生、〇〇〇なんですけど、原稿の際は、このようなこともお願いしてもよろしいでしょうか」と丁重に申し上げると、

「いいっすよ、いいっすよ」「大丈夫、大丈夫」「はははは!」

みたいな感じで、もう初対面なのに話やすい話やすい。それから「日頃はどんな活動をしていらっしゃるのですか…?」と聞くと、鞄からパンフレットがでるわでるわ、

「こんなこともやってます」

「これは、〇〇県の取り組みでしてね」

「ボッチャとか、知ってます?」

「この競技は一緒にやると、結構楽しいんですよ(ははは!)」。

あれやこれやといろいろお話を伺っていると、どうやら障がい者スポーツの世界においては、リハビリテーションといってもまだ日本では体系化された学問としてきちんとカテゴライズされていないようでして、国内の障がい者スポーツ団体やリハビリ活動を見渡しても、例えば「AAA団体」「BBB協会」「CCC研究会」といった支援団体や研究グループがここ数年、雨後の竹の子のように林立し始めてはいるものの、各団体間のつながりは、まだ統一的なアクションやプログラムとしての気運が整理されていない情勢らしいのです(当方の主観です)。加えて、こと障がい者スポーツの試みとなりますと、行政側もそのニーズと支援の大切さは理解しつつも、いざ具現化となると、どうしてよいのかわからず、そこで

クラリス・スターリングに相談する

という関係性がお話から垣間見えたのです。もちろんクラリス・スターリングもアメリカに研究留学したり,博士号を取得したり,さまざまな経験や研鑽の紆余曲折の末、今のお仕事やネットワークを開拓されてきたわけですから、まだお若いに、すごい。

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(出典:一般社団法人こみゅスポ研究所ホームページ)

彼女には、常に前向きな考究心と行動力、持ち前の気さくさとフレンドリーがおありのようですので、団体間や行政の間を、まだ整備されていない未知の海を独特の嗅覚で自在に泳ぎ、障がい者の方と障がい者スポーツ関係者をその人的魅力で磁力のように結びつけてしまうのでしょう。かようなたぐいまれなるパーソナリティがおありになる人物(!)と、そのときお見受けしたのでした。まさに、

「障がい者スポーツリハ」のこれからのキーマン。

余談ですが、エピソード3(終幕)は、和製ジョディ・フォスターのお話と決めていたので、noteタイトルのヘッダーの背景画像を何にしようかずっと考えていたのですが(『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスター像とか、クラリス・スターリング風のスーツ姿の女性のシルエットとか)、あれやこれや試したもののどうしてもしっくりこず、最終的に選んだのが水の中の気泡のイメージ。なぜかは…わかりませんが、透明な澄んだ青の海の中を自在に泳ぐイルカが吐く気泡のようなイメージでした。でも塩田琴美という存在を表すイメージとしては、とてもぴったりきます。不思議です。

さて、そのときいち編集部のリアルが発したコトバを今でも覚えています。

ゆくゆくは『情熱大陸』とかに、出演されるのではないですか…

まぁ初対面なのに、こちらもよくもずけずけといえたものです。ですが、それほどこの方のFirst Impression(「イキのいいお姉ちゃん」ぷり)は爽快だったのです。


さて極めに・究める・スポーツリハは、第1部は相澤先生が担当、第2部が塩田先生が担当(ようやく本名に戻りましたね)。先ほども申しましたが、健常者、アスリート、高齢者、障がい者のスポーツリハが1冊になった画期的な内容です。第1部はやり手のH、第2部は当方が原稿整理を担当しましたが、その作業はとても楽しく意義深いものでした。

詳しくは本書をご覧いただきたいのですが、スポーツ・リハに関する新しい知見、新しい試み、新しい考え方が随所にあって、まさに黎明期の学問(もちろん運動生理学という学問は昔からありますが、それをわが国の臨床や地域に活かされている最善線のレポートという意味で)、出来立てほやほやの新しい臨床知や実践知が随所にあふれ、それを言語空間に整理する作業はとても有意義だったからだと思います。

また、本書の172頁にあるコラム「電気椅子サッカー元日本代表選手の声(リハ専門職へのメッセージ)」は、目次案になかった予定外の挿入記事ですが、吉沢祐輔さん(こみゅスポ研究所理事)との原稿のやりとりは、障がい者の方の痛切な想いと祈りの一端に触れた初めての原稿でしたので、いち編集部のリアルの中でも「とても大切なもの(メッセージ)」という実感があり、M善出版の社訓『知を燈す』という作業とは「こういうことなのか…」と勉強させていただいた次第です。ひと様の経験や想い、それを紙の本の形にし、出版というプロセスを通じて読者の方にお届けする、この活動に改めて意義を見出した瞬間でもありました。吉沢さん、本当にありがとうございました。

そうそう、オリパラを控えていますので、塩田先生の原稿の中で、当方が特に印象に残ったお話を披露してお開きにします(「コラム 障がい者スポーツは,まだまだ面白い!!」189頁)。

オリンピックスポーツでも,柔道やレスリングに階級制度があるように,そのような制度の1 つとして,障害者アスリートの枠が設けられたり,男女混合チームと同じ扱いでオリンピック選手とパラリンピック選手の混合チームやミックスリレーでバトンをつなぐ競技などが,今後は出てくるかもしれません.

将来、オリンピックの混合400mリレーなどで、第1走者男性の健常者、第2走者女性の義足アスリート、第3走者男性レーサー(レース用車いす).第4走者〇〇というように、本当の意味での混合リレーの種目が実現するかもしれません。

この一文には、未来を感じます。

そんな楽しい未来が実現するといいな。いいえ、必ず実現します。世の中は確実に前進しているのですから。と、そんなことを文章にしていたら,2019年12月21日に開催された「新国立競技場オープニングイベント~HELLO, OUR STADIUM~」で,本当にそのような混合リレーが実現していたのです! テレビでしかと見ましたよ.未来は、本当にすぐそこまでやってきているのですね.

販促用


椎名桔平とジョディ・フォスター」3回に分けて紹介させていただきましたが、『極めに・究める・リハ』シリーズが多くの方に手を取っていただければうれしい限りです。

キャンパス

PT、OT、STだけでなく、ドクター、ナース、ソーシャルワーカー、管理栄養士などリハ関連専門職の方、障がい者を支えるワークをされている方、それから本書のメッセージは将来リハの各専門の進まれる学生の皆さんに贈られる

志あるイキのいい兄貴らからのメッセージ、お手紙

ですので、どうぞこのお手紙を手にされ、楽しみながら未来を構想いただけたら、これに勝る喜びはありません。

ご清聴(読)ありがとうございました。

2019.12.27

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