芥川賞「選評」の感想

芥川賞の選評を読むのがだいすきです。

このノートは、160回芥川賞の選評についての、とても偏りのある個人的な感想です。

あくまで選評のみ。芥川賞受賞作、ならびに候補作の感想ではありません。

そもそも、今回の受賞作も候補作も、私まだ読んでませんしね……。読みます。

芥川賞の選評、すきなんです。
作家陣の個性が際立ってて、おもしろいなって、いつも思うんですよね。
たとえば、前回、159回芥川賞の選評タイトル、一部抜粋。


川上弘美『連れてゆかれる』


はあん、どこの本屋行ったら売ってるんですかああ、その本!!

あと小川洋子は、芥川賞にいちばんに推した作品から抜粋または総評して、選評のタイトルをつけたりすることが多いんですけど、その抜粋する言葉の感性が、まさに小川洋子って感じで、もう、すき、だいすき。159回のタイトルは『豊かな沈黙』でした。すき。

小川洋子も川上弘美も、私の推し作家です。
10代の頃からずっと推してます。
どうしても推しの話が多いです。
偏りのある読書歴である自覚はあります。
そんなことより、日本のどこかで推しが生きてて文章書いてる。平成すごい。

両名が選考委員になったのって、同じ139回からなんですよね。
芥川賞選考委員になる基準って、芥川賞受賞してる以外はよく知りませんけど、おかげで私は芥川賞の選評がすきになりました。

あと、タイトルでいえば、山田詠美はいつも一貫して『選評』がタイトルです。いさぎよさを感じて、それはそれでよいなって思います。ウェル・ダンって表現した又吉直樹の『花火』のときの選評、すきです。

前回の159回は、引用問題で不穏でしたが、選評に関しては名言が頻出した回でした。

いや、名言がでない選評はないんです。毎回、誰かしら名言を残すのが、芥川賞選評なんです。

書くとはどういうことか。芥川賞を通して、現代を生きる文豪の、小説に対する姿勢を垣間見ることができるのが選評だって思ってます。



**以下、160回選評のネタバレを含みます。 **


『居た場所』すっごくよさそう!

『居た場所』に対しての小川洋子の選評、もうほんと小川洋子ワールドやんか!
こんなん感情高ぶって方言もでるわ!

あああ、受賞作含めた候補作の中で、『居た場所』が、いちばんわくわくする!

選評タイトルのタッタは、無くなっていくものとそれでもその手元に残るものの象徴みたいなものなんですかね。
小川洋子の書くテーマもそれだって思ってるんです。『居た場所』の作者は、違う意図で出したのかもしれないけど、小川洋子はこの小説を読んで、それを感じとっている。そこに、私は悶えてしまうんです。

とにもかくにも、私が好きそうなやつ。ああいうの多分すき。居た場所は読みたい。




『居た場所』とは、別のベクトルで気になって読もうって思ったのは、『平成くん、さようなら』

選評内における評価。あれ、どうした。

私は、選評読むまで、この本にまったく興味なくて、文庫になっても買わないだろうなって思っていました。
たんに、私の趣味じゃなさそうだからです。

私、この作者と同い年くらいだと思うんですが、トレンドの固有名詞が頻出するときいて、手出しにくそうだなあ、と思ってしまって……。
香水はほんのり薫らせるくらいが好感度高いです。小説もそういうものが私の性癖にささります。これはたんなる好みの問題です。

でも選評読んで、読んでみたくなりました。
web小説の手触りに似ている気がしたからです。

正直、どの選評も手厳しかったです。
特に山田詠美の選評がいちばん目につくでしょうが、私は内容より、宮本輝の選評の文量の少なさが、厳しいなと感じました。
選評って、厳しいこと書かれていても、文体のすきまから、あたたかさがもれていることがあります。159回とかそうでした(前回の比較ばかりですみません)
小説を書く、読むことの愛を感じる。

平成くんに関しては、それを鑑みても、手厳しい印象でした。

山田詠美が選評でキレていたワイドショーは、私も見ていました。
多少なりとも純文学を読んだことあるなら、「純文学はうじうじ」発言に違和感ある人多いのではないでしょうか。
冗談でも、自尊心のためでも、深く考えてなくても、それを貶めるようなことは言っちゃいけない。
多分、『平成くん、さようなら』の作者も、こんな発言しながら、本当はちゃんとわかってんじゃないですかね。
山田詠美もそれを感じとり、あえて、ああいう選評にしたのかなって思いました。

と、いうように、作者を先に知ってしまうと、どうしても読者は、その作品に先入観を持ってしまいます。

これは、高樹のぶ子の選評が的確なので、いろんな人に読んでもらいたいです。有名人だからこそ、先入観は小説の足枷になってしまう。

でも、その先入観は、TwitterとかFacebookで自分の作品を宣伝するweb小説には、有効だと思います。
ネット上での発言のセンスはいるでしょうけれど。例えば、作品と作者の発言に、不協和音がないよう気をつける、とか。
炎上がどうこうっていうのでなくて、作品と作者の親和性が高い方が、web小説向きだと思うんです。
読み手は、作者も作品の一部として捉えてしまうからです。

そういう意味で、『平成くん、さようなら』には、不協和音はなさそうです。
読みやすそうなのも、web小説向き。
私は、web小説に憧れをもつ純文学オタク(偏り有)という、屈折した人間なんです。
ふたつが橋渡しになるような作品、屈折だと思ってしまう心を矯正してくれそうな作品、web小説向きの作品は、お金出して読みたいです。

それに批判をそのまま鵜呑みにするのは、居心地わるいですしね。

現状読んでいない私は、本来は語る権利ないんです。


だから、読む。まずは、ニムロッドから、がんばって読む。次に町屋良平の読んで、居た場所読んで、平成くん、かな。

芥川賞の選評について、語ったりできる場がいままでなかったので、noteに吐き出せて、とりあえず、すっきりしました。
絶賛発売中なので、あまり書いてないですが、今回の選評も名言多いです! 文藝春秋ぜひ読んでほしいよー!


#芥川賞 #選評 #日記 #レビュー #エッセイ #純文学 #小説

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?