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『黄昏』

南伸坊さんと糸井重里さんの対談、というか雑談。なんだけど、これが面白い!

本を読んでいて声を出して笑ったのは久しぶり。なんなんでしょう、ただのムダ話がこんなに面白いって。活き活きしていて「黄昏」感はゼロ。

気の合う、そして話題の尽きないおふたり。糸井さんが唐突に(ご本人の中では脈絡があるらしい)新しい話題を繰り出し、伸坊さんが受け止めたり流したり正したり広げたり。かと思えば、伸坊さんから出てくるエピソードがまた面白く、そこに糸井さんがチャチャを入れながらウンチクとかデタラメを乗せていく。こういう会話ができる関係って羨ましい。

読み始めからニヤニヤしちゃって、妻に変な顔をされたよ。

思わず、妻に読み聞かせをしてみた。面白さを共有したくなって。だって、すべてこんな会話なんですよ、声に出したくなりません?

南:あ、なんか、そこ、おもしろいもの売ってる店だね。
糸:なんだろうね、マキビシ?
南:そうだね、手裏剣と。
糸:「……おじい、熊がいる。手裏剣投げていいか?」
南:え?
糸:で、思いついてことがあって。
南:うん。
糸:見るからに、どじょうすくいに行く人っていうのがいたらどうだろうかと。
南:ははははははは。日曜の朝の電車に。
糸:日曜の朝の電車に(笑)

こんな会話がひたすら続く。読み聞かせなんて息子が小さい頃以来だけど、大人の読み聞かせっていうのも悪くないかも。※それは朗読という。

糸井さんと伸坊さんの口調を真似ていたつもりだったけど、自分の耳に届いた音はぜんぜん違った。当たり前か。


この雑談、時期と場所を変えながら何回か実施したものを収録してある。回を重ねるごとに会話の中身が変化していくのも興味深かった。

初回は、もうとにかくナンセンス。けど、グチとか他人の悪口は一切ないんですよね。だから心地良い。

数ヶ月後の二回目は3日連続の旅になる。最初は同じナンセンス路線なんだけど、一緒にいる時間が長くなると次第に共通の思い出や、過去の出来事に話題が広がっていくのである。しまいには、うっかり為になる話題になったのに気づいて、慌ててナンセンス路線に修正したりなんてのも。

学生時代の友人としばらくぶりにあった時も、こんな感じかもしれないな。身近な話題や近況から、一緒に過ごす時間のなかで次第に過去の出来事を思い出していくような。


あと、糸井さんの「なんの話、してたんだっけ?」に対する、伸坊さんの軌道修正力は素晴らしかったです。


これ、私は文庫で楽しみましたが、最後の「東京編」を除いて、ほぼ全て「ほぼ日」で読めると知りました。気前がいいな、ほぼ日。

ほぼ日のサイトは写真が多いので、その場の雰囲気がわかっていいですね。

なお、私は紙の本でないと読まなかったと思います。縦読みっていうのもいいですね。寝っ転がりながらのんびり読むのにちょうどいい本でした。おススメ。

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