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【水俣被害と原発被害】映画「MINAMATA]上映アイリーン・スミスさんと語る

脱被ばく実現ネット 宮口 高枝

6月11日、池袋の立教大学タッカーホールで「「映画「MINAMATA」上映&トーク 被ばくと子どもたちの甲状腺がん水俣と福島・アイリーン・美緒子・スミスさんと語ろう」と題した集会が開催された。主催は、3・11甲状腺がん子ども支援ネットワーク、脱被ばく実現ネット、立教大学社会学部砂川ゼミ。後援は、OurPlaneto—TV、メディア総合研究所、JCJ(日本ジャーナリスト会議)、放送を語る会、NHKとメディアの今を考える会。このイベントは、立教大学の砂川浩慶教授(社会学部・メディア社会学科)の協力があって実現にこぎつけた。

東京電力福島第一原発爆発事故から11年。「原子力緊急事態宣言」は発令中のままだ。病院の放射線撮影室のような高い線量の地域に子どもを持つ親たちは、帰りたくとも帰れない! 放射能被ばくの疑問を口にすればバッシングを受け、被ばくの被害を語れる場所はない。
 水俣と福島は共通点がある。国や企業が事故をなかったかのように隠し続け、マスコミも事故や被害の現実を伝えない。
 水俣病発症から半世紀以上が過ぎるが、未だ裁判が続き被害者への補償は済んでいない。被害者を分断し、偏見にさらし、補償の色分けをしてきた。
 映画の中で、フォトジャーナリスト、ユージン・スミスさんが水俣病患者被害者たちに「写真を撮らせてほしい」と依頼してもなかなか撮らせてもらえなかった。信頼関係の中で、一人の母親が娘の被害の現実の撮影を承諾する。ユージン・スミスさんの撮った写真は、さまざまな人々に衝撃を与え、世界は水俣病被害者の現実を知った。
 アイリーン・美緒子・スミスさんは映画について語り、「水俣と福島に共通する10の手口」を報告した。普遍的で市民の権利、意識を揺さぶる提言なので紹介する。

政府・加害企業の手口
①誰も責任を取らない/縦割り組織を利用する。
②被害者や世論を混乱させ、「賛否両論」に持ち込む。
③被害者同士を対立させる。
④データを取らない/証拠をを残さない。
⑤ひたすら時間稼ぎをする
⑥被害を過小評価するような調査をする。
⑦被害者を疲弊させ、あきらめさせる。
⑧認定制度を作り、被害者を絞り込む。
⑨海外に情報を発信しない。
⑩御用学者を呼び、国際会議を開く。
 どの項目も、あまたある政府や企業が起こした無責任な事故被害者への事故処理、対応に通じる。
 アイリーンさんは、「隠していても被害実態と企業、政府の責任はバレバレだ。あきらめず、疲れないよう、真実を話しにくい雰囲気を変える工夫をしよう。バレバレの事実がないもののようにされているのは、メディアの責任だ。上司の指示に従って紋切り型に書くのではなく、水俣の熊本放送のように、ジャーナリストの実感で書いてほしい。また、公衆衛生の専門家の責任も大きい。もっと調査報告して欲しい」と語った。

病因は原発事故以外考えられない
若者の決起に寄付・支援強まる

シンポジウムでは、3・11甲状腺がん裁判の井戸謙一弁護団長が、「約300人が小児甲状腺がんと診断され多発している。原因は福島原発爆発事故しか考えられない。10年を経過し、やっと口に出せた若者たち6人が原告になった裁判に注目して欲しい」と支援を呼びかけた。
 原告のうち3人が衝立の向こうで参加し、始めて肉声で語った。
 「応援してくれる人がいてうれしい」──こう語るしおりさんは、福島医大で甲状腺がんと診断された「爆発事故との因果関係はありません」と即座に医者に言われ、応援してくれる人はいないと思っていたが、裁判が始まり、クラウドファンデングで寄付してくれた方から「あなたたちが立ち上がってくれてありがとう」「本来は私たちがやるべきことだ」などと書き込みが多くあり、とてもうれしかった。今日も300人以上も来てくれてうれしい。
 あおいさんは甲状腺がん裁判第1回期日で陳述。「法廷ではとても緊張した。裁判に至る10年間は割り切れない思いだった。親にもつらいと言えなかった。皆さんのおかげで、裁判に勝つために自分の言葉で語ることができた」(あおいさん)
 みつきさんは始めて参加。司会者の白石草さんの問いかけに、長い沈黙の後、絞り出すように「大人になったのだと思う」と声を発した。

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