第3話 生検手術
初診日の次の日からは、笑うことがなくなった。
その時に出会ったのがかまいたちのYouTubeチャンネルだ。
前々からかまいたちが好きではあったがYouTubeをしていたとは知らず、山内の赤っ恥先生で大爆笑した。かまいたちの沼にはまってしまった。
そして8月29日、入院準備をしてがんセンターに向かった。
担当の看護師さんはとても優しく、自分の中で看護師さんといえばこんな感じというイメージがついた。
ついてすぐ、初めての入院ということもあり何をしていいかわからなかった。とりあえずYouTubeを見て過ごした。
お昼の病院食は麻婆春雨だった。
想像通りすぎる病院食に驚いた。健康になりそうだ。
このメニューを見るとどうしても初めの入院を思い出していやな気持になる。
消灯は9時。寝れない。
次の日、ついに生検手術の日がやってきた。
手術室にベッドに寝かされたまま移動し、手術台の上に乗る。
でっかいモニターに自分の心拍数が表示されていて、それが緊張をあおってきた。
手術中は音楽が流れていて、手術台がウィーンと上に上がり、ついに手術が始まるというときにSEKAI NO OWARIのバードマンが流れた。音楽の力ってやっぱすごいなと実感した。
麻酔の注射を腫瘍のところに打たれ、ゴリゴリと削られ始めた。
手にはゴムボールのようなものを握らされていたが、途中から看護師さんが手を握ってくれていた。
一回だけピキーンと脳天まで響くような痛みが走った。先生が3人いたのだが、もっと取ったほうがいい派ともう十分とった派の対立が起きていて軽く喧嘩のようになっていた。もう終わらせてくれーと思いつつ、必死な先生たちが必死に言い合いしているのが面白かった。
無事終わり、先生がとった組織を見せてきた。生姜焼きを食べたときに残した脂身のはしっこみたいな感じだった。
看護師さんにお疲れさまーと言われながら病室に戻ってきた。
生きてるーーー
窓から差し込む自然光、病室のにおい。生まれたての赤ちゃんが目を開けてぼーっと天井を見ているときこういう気持ちなのかなと思った。
翌日、退院した。
セブンイレブンのデカ豚ラーメンを買って帰った。大学時代はたまにのご褒美で買っていた高級品だ。悪魔的なうまさだった。
取った組織を顕微鏡でみて良性か悪性か調べるそうで、3日後にまた来てとのことだった。
良性であるという少しの希望にかけた。良性だったら手術して二週間くらいで一人暮らし先に帰れる。バイト先にも迷惑かけているし早く帰らないといけないんだ。なにより、大切な彼女を置いてきている。一日でも早く帰らなければいけないと思っていた。
その3日後、悪性と確定診断される。悪性の中でも高悪性。
治療期間は順調にいって8か月。終わるのは5月だ。
ただ、それは本当に順調にいったときの最短期間という話をされた。
自分は覚悟は決まっていたので、絶対最短で退院すると決心した。
その決心の裏に、2日でも長かった入院が8か月も続くのかと落胆もした。
次回は「第4話 抗がん剤治療開始」です。よろしくお願いします。
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