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ミドルエイジからのキャリア「生存」戦略

■どうすれば我々ミドルエイジのビジネスパーソンはリストラを回避できるか?

ミドルエイジ(40代)の会社員が自らの今後のキャリアを考えるにあたり、重要な事とは何だろうか。

一般的に言われる事といえば、専門性である。確かに、専門性は非常に重要となる。例えば一つの分野で著作を出せたり、外部の講演に呼ばれたりするレベルにまで自らの専門領域の知見が高まっていたならば、恐らく理想形だろう。

実際、ある友人は現役の会社員時代から会社公認で認められた研修講師の副業で活動していて、今その実績を元に独立を果たし活躍している。この領域にまで達していたならばフリーランスとして活動していけるし、万が一生活が厳しく、会社員に戻る場合でも、企業に雇ってもらえ、かつ優位な交渉を可能にする影響力を持つ事が出来る。

しかし、実際に本を出せるレベル、社外での講演やセミナーを出来るレベルにまで自分の市場価値を高められる人は一握りであり、それを一般論として展開するのは無理がある。以前に比べて本を出版するハードルは下がっているように思われるが、それでも多くのビジネスパーソンにとって高い参入障壁となっている事は疑いがないだろう。

また、ここまで障壁は高くないが強い影響力を持つ事が出来る立ち位置として、社外からのヘッドハンティングやスカウトを受けて転職活動出来るレベル、というものがある。これは一定程度以上の規模や知名度がある会社において、大きな実績を残したりプロジェクトを成功させたりする事等を通じて得られる対外的な影響力である。ビズリーチ等をはじめとしたダイレクトリクルーティングサービスが一般的となった現代社会において、一昔前よりもヘッドハンティングは高い障壁ではなくなっている。情報の流通網が発達している為、エージェントが情報にアクセスしやすくなっている為、ヘッドハンティングは日本国内でも日常的に行われている。一般的に欧米等でのヘッドハンティングはハイクラス(あるいはエグゼクティブクラス)の採用を行う際に利用されるものであるが、日本国内においてはシニア~ミドルクラスにおいて盛んに行われているようである。

ただし、これも非常に高い成果を上げている人か、有名企業等で大きな組織のリーダー(本部長クラス)を務めるなどの実績がある人でなければ難しい。そもそも、それほどの高い実績を積んでいる人であれば、今所属している会社を出る必要性はないし、キャリアの方向性として生き残り戦略に困る事は少ないだろう。(ただし、景気が悪化して採用が全般的に絞られるような状況の時はこのクラスの人は苦戦する傾向にあるようだ。何故ならば、企業がそれほど高い人件費を払って大物を採りたい、と思わなくなるからだ)

■一般論として通用するミドルエイジのキャリア戦略論

では、ミドルエイジになった我々ビジネスパーソンは、どうすればよいのか?エージェントからヘッドハンティングの声がかからないレベル感の我々が出来る事とは何なのか?

結論、社内で生きる(生き残る)しかない。選択の余地はない。
だとすれば、ミドルエイジのビジネスパーソンは今からどの程度の専門性を身につければよいのか?

確実に出来る事があるとすれば、今の仕事の領域内で特化した分野を決めてそこで専門性を高め、社内では一番(大企業では一番とはいかないかも知れないが、少なくともトップクラスには辿り着きたい)この領域に詳しい、という評判を出すレベルにまで達する事だろう。そこまでいけば、管理職の仕事が仮に貰えずとも、社内で一定のポジショニングを取れる。一定のポジションがあるという事は、生き残れるという事だ。

自分自身のキャリアの過程に当てはめてみると、今の会社で人材開発の領域で自分より詳しい人はいない、という事は断言出来る。自分は労務領域を担当してこなかったこともあり、その領域には弱い。メンタルヘルス系については相当程度の知見を蓄積しているが、社会保険や給与計算は完全に専門外である。先日、あるTwitterでのつぶやきに「フルスタック人事」というパワーワードを発見した。あらゆる領域の開発言語に精通するIT技術者を指し示す「フルスタックエンジニア」の人事版という事だろうが、自分にはその領域の広さは到底なく、人事領域全般に強いとは言えない。なので、狭い領域の専門担当としてのポジションを構築するしかなかった。

組織開発、人材開発、教育設計、リーダーシップ、コミュニケーション、ファシリテーション、タイプ別診断ツール(適性検査系)の知識、面接スキル等については、かなりの知見を蓄積してきた。恐らく今後、よほど中途でエース級を採用しない限り、他の人に専門領域を侵食される恐れはない。高級車1台以上のお金と1万時間レベル(正確には測定不能)をつぎ込んできた。はっきり言ってオタクである。

自分は新卒で入社した会社での人事異動をきっかけに人事職(人材開発職)としての専門性に目覚めた。これは意図していない出来事であり、幸運だった。30歳で転職する時は既に「採用&教育の専門家を目指す」というジョブ選択が出来ていた。自分にはゼネラリストは向いていないと早々に判断していたからだ。

この領域のスキルの弱点は不景気に弱い事だ。リーマンショックの時は本当に苦しんだ。ほぼ求人がなかった。応募しても競合相手が強く、全く歯が立たなかった。長らく転職活動を強いられた事を覚えている。そこから非常に苦しい30代を過ごしたが、同時に学びも最も濃い時期を過ごした。コーチング、ファシリテーション、リーダーシップを中心に徹底的に自己探求、自己鍛錬に励んだ。この時期の訓練が今の自分の専門性の土台だ。

最もキャリア的に伸びしろのあった時期を超えて、現職グループに転職を果たし、年収も大幅にアップした。今の会社は医薬品製造業なので、未来は安泰とは言えないが、少なくとも他の産業(例:自動車業界)のような激震はないし、薬が不要になる未来も恐らく来ないだろうから、生き残る可能性は相対的に高い。退職金制度もあり、長期就労が推奨される風土だ。

現職でも業績が悪化した際は予算が削減されるだろう。しかし最低限、新卒採用のスキルと知見並びに最新アップデート情報があれば会社に在籍する事は許されるはずだ。流石に新卒採用まで止めるレベルとなれば、それは由々しき事態だからだ。

転職出来るならば、それは何の問題もない。その人の市場価値がそこに生まれているという証明だからだ。しかし、ミドルエイジ以上になると転職は非常に難しくなる。実際問題、求人数は激減し、年齢で足切りされるケースも多く散見される。

ならば、ミドルエイジの基本戦略は、今の会社で生きるしかない。その為には社内で相対的に一番となる狭い領域の専門性を特定し、それを磨き上げる事でその分野で社内で最も詳しい専門家になる事だ。

自分のキャリアの生き残り戦略は、今の会社で人材開発領域の専門プロフェッショナルとしてのポジションを守る事だ。その為、これからも最先端の学びを続けなくてはならないだろう。学習を怠った時点で後輩に追い抜かれたり、時代に取り残されたりして相対的価値が落ちるからだ。目安としては、研修会社やコンサルティング会社の営業、研修講師等と同レベル以上の知識を維持している必要がある。その内容を実際に自分が出来るかは別として、少なくとも内容においてグリップを握れるレベルを維持するという事だ。

現時点において、U理論、成人発達理論、トランスフォーメーショナル・リーダーシップの領域において、自分の会話に対等なレベルで話せる営業やコンサルタントは少なく、今も殆ど遭遇していない。EQについてはコンサルタントと同レベルで会話出来ている。無論、社内では皆無だ。組織開発の実践経験はまだないが、相当な学習は積んだ。少なくとも会話レベルでコンサルに丸め込まれるレベルではない。幸いにして師に恵まれた。後は実践あるのみだ。

ミドルエイジのキャリア戦略は、30代までのそれとは異なり、基本的に「生存」戦略である。社内における特定の分野で最も詳しくかつ実践的なスキルや知識を身に着ける事が、キャリアの生き残りをかけた競争に打ち勝つ方法ではないだろうか。

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