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読書記録|司馬遼太郎『ロシアについて』

読了日:2023年1月21日

 とても読み応えがあった!
 近現代の内容かと思ったら、良い意味で私の期待を大きく裏切り、チンギス・ハンの孫の時代まで遡り、キプチャク汗国がロシア人を”労働と生産のための道具”としていたことろから始まる。
 ロシア人国家が生まれたのはキエフ故にロシアはキエフに拘るのだ。

 今日のロシアを知る上で、当時、モンゴル人や中国人と、現ロシアの前身となる民族がどう関わっていたのかがとても興味深い。
 人とも扱われない奴隷だった過去のロシア人が、その数百年先には立場を反転し領土を得ていく様は、まるで積年の恨みを晴らすべく辿った道にも見える。

 毛皮商として立ち上げられた露と北米の「露米会社」の裏で、私欲を増やしていくロシア官僚のレザノフによる雇用者(実質奴隷相当)への扱いは、虐待されて育った子供が更に自分の子供に虐待するような継承さえ感じた。
 「露米会社」の実態は注目に値する。(もっと知られてもいいと思う)

 『坂の上の雲』と『菜の花の沖』で、ロシアに長い間没頭してきた司馬遼太郎氏が読み聞きしてきた知識がふんだんに詰まっている一冊。

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