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根源を問う~哲学のススメ

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哲学書のレビュー集です。自身、専門家ではないので、比較的読みやすい本の紹介や、読みにくいものであっても非専門家の言葉で噛み砕いていきます
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2020年2月の記事一覧

エロス/美とはなにか~プラトン『饗宴』

中期プラトンを総括する中核の書かと思ってたら、『パイドン』よりも前の本だった。『国家』と取り違え。。。 文学的見地から見れば傑作。ソクラテスを含む5人の登場人物による、エロス/美にまつわる掛け合いも、美しい劇を見ているようだ。 この美は、顔や手といった身体の部分のようには見えないし、なんらかの言葉とか知識のようにも見えない。また彼には、この美が生物とか大地とか天空など、美とは異なるなにかの中に内在しているようにも見えない。 むしろ、その美は、ほかのなにものにも依存すること

プラトン事始め~『ソクラテスの弁明・クリトン』

(岩波文庫) 『饗宴』進行中に思うところあって5年ぶりに再読。プラトン始まりの書であり、忠実に師ソクラテスの考えをなぞった伝記的性格の強い一冊である。 前半の「弁明」は、プラトンの著作ほぼ全てで取られる対話篇の形式(ソクラテスと誰かの対話形式で話が進行する形式)でなく、ソクラテスの死刑裁判における長編演説形式で、劇作的な味付けも多くある。 後半に収録されている「クリトン」は、虚偽の罪で投獄されたソクラテスに対して、友人クリトンが脱獄を勧める場面を描く。クリトンを喝破し、

プラトン思想の隠れた良書~『パイドン ー 魂の不死について』

(岩波文庫) プラトンの中核書『饗宴』に続く作品であり、プラトン中期の始まりの書。 この後のイデア論/想起説の展開の序章として足場固めをするように、その前提となる「魂は肉体の軛を逃れて不死であり、あらゆる物事をその純粋な観念として知っている」という仮説の論拠を幾重にも重ねて丁寧に示している。 正直、今日的な脳への理解と神経科学の知識体系から出発すると、ソクラテス≒プラトンの認識論にはモヤッとする部分が少なくないし、それ以外にも立論そのものにアラが目立つ所はわりとある。た

プラトン『プロタゴラス』

プラトン初期作で、ソクラテスと著名ソフィストのプロタゴラスの対話篇。 これもかなり読みやすい内容&良訳だが、先に読んでしまった初期総括篇「ゴルギアス」に大部分の議論が包摂されているので、やや薄かった。 ただ、徳(アレテー)の本質を、知識との結びつきの中でやや詳細に紐解いていく部分(最後は尻切れだが)や、劇作としてソクラテスの心的過程(特に弁論戦略に苦心する様)にも多少フォーカスを当てている点は面白かった。

読書メモ:プラトン『ゴルギアス』

(岩波文庫) 弁論術への批判を軸に、正しく、善く生きることが幸福に繋がる事を説いたプラトンの初期代表作。優れた翻訳と、仔細なあとがきも併用して、かなり平易に読めるし、ソクラテスの対話のテンポや論理の明晰さも楽しめる良書だった。

哲学の醍醐味が詰まった『まんが 哲学入門 -生きるって何だろう?』

哲学者と漫画家がタッグを組んで描かれた哲学入門書。訳あって久々に本棚から引っ張り出した。 本書は、主人公「まんまるくん」が「先生」に矢継ぎ早に質問をしていく中で、時間論、存在論、「<私>概念」あたりまでの哲学のベーシックな概念を中心で狭く深く掘っていくもの。 哲学における基礎的な概念を抜群に分かりやすく学べるだけでなく、掛け合いのダイナミズムというか、対話の中で引っ張られながら思考が展開していく哲学の醍醐味そのものを、ソクラテスの問答法(ディアレクティケー)宜しく体感できる