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[50日目] インド#4 生贄を捧げよ

2023/06/29
コルカタ / カーリーガート・マンディール

ヒンドゥー教の殺戮の女神 カーリー

Kalighat Mandir

カーリーガート・マンディール(Kalight Mandir)にやって来ました。
ヒンドゥー教の女神 カーリーを祀っている寺院。カーリーは「血と殺戮の女神」と呼ばれ、破壊や力強さの象徴とされています。ちなみにカーリーはシヴァ神の妻です。

上の通路も下も行列が続いていた

インド人にも人気のある寺院のようで、カーリーの祀られている本堂までは長蛇の列ができている。本堂の入口は狭く、皆しっかり祈っているようで中々列は進んでいない。すると男たちが

俺たちにお金払ったら1時間がかかる所をすぐいけるぞと

金銭を要求してきて怪しかったのだが、本当に列が長く動いていなかったので払ってみることにした。200か250ルピーだったように記憶している。すると、

俺らについてこい!

と言った後、僕を引っ張りながら柵を乗り越え、裏門から一気に逆走して一方通行の本堂に出口から強引に押し入っていく。そして僕を引っ張り、

こっちにこい!これがカーリーだ!祈るんだ!

と御本尊の前まで押し込んでくれた。あまりの力業に笑ってしまった。ぼったくりかと言われれば、実際に何十人と並んでいる行列をあっという間に抜かしているのだから嘘はついていない。アトラクションに金を払ったと思えば全く後悔はなかった。


生贄に捧げられる子ヤギ

実はこの寺院にきた一番の目的は本堂ではなく、その近くにある黒色に塗られた薄暗い小屋なのだ。そこではカーリーに捧げる生贄として子ヤギが捧げられている。その子ヤギは信者が参拝の為に連れてきたものだ。窓も小さく薄暗いので覗いても見にくくはなっているが、中には子ヤギの首を固定する為の台がある。連れてこられた子ヤギは台に掛けられる前から必死の抵抗をするが、男3人がかりで掴まれようものなら成す術がない。

子ヤギの断末魔の叫びに心苦しくなるが、同時に本能的な興奮からか目を背けられなくなる。

唱えられる呪文。
次第に早くなっていく太鼓の音。
最後に信者が万歳のような声を上げた直後、
鉈が振るわれ子ヤギの声は聞こえなくなった。

これが一匹ではなく、また1匹また1匹と続いていく。決して悲しい雰囲気が漂っているわけではない。子ヤギは神にささげるお供え物なのだ。

残酷かもしれないが必然

目の前で一つの命が奪われる光景は心安らかに見ていられるものではない。かなり衝撃的な体験であったが、同時に私たちの命は何かの死と引き換えに生き延びていることを強く思い知らされる。いくら質素に細々と生きたとしても、生きる限りその事実から逃げることは出来ない。生贄に捧げられる姿を見たとき、私は死への悲しみよりも私の血肉となった全ての命に対する感謝が上回った。

かつて日本でも生贄に動物(まれに人間)を捧げるといった事象はあった。現在でこそ行われてはいないが、私たち人間が何かの命を奪わずに生きていくのは不可能だということに変わりはない。私ができるのは日々の食事でその命に対して祈りを捧げることだけ。

いただきます。ごちそうさまでした。

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