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紹介状ってなあに

弊院は大学病院です。

なので、受診するには「紹介状」がいる。
紹介状を持たずに来院し、診察を希望する場合はその患者さんから「選定療養費」を「取らねばならない」。
その患者さんを診るなら治療費以外にキッチリ7,000円(税別)をもらいなさいよ、と国から義務付けられている。

じゃあ「紹介状」とはなんなのか、どこでもらうのかというと、地域の一般病院やクリニックになる。
そこで患者さんを診たドクターが、
「これはもっと大きい病院で診てもらったほうがいい」
と判断し、
「この患者さんの診察と治療をお願いします」
と他の医療機関に向けて記載したお手紙が紹介状とされる。

つまり、

「紹介状が発行されないくらいの体調不良であれば他の医療機関でも診察できるからそっち行きなさい、どしてもここがいいなら金払え(意訳)」

という意味での7,000円(税別)、というわけである。
(ちなみに救急搬送された患者さんが受診するにあたり紹介状を持っていなかった場合、「緊急性を要する患者」として原則選定療養費は請求しません。)




弊院もそうだが、大学病院などの高度急性期病院は高度で専門的な治療や緊急性を要する治療に特化した病院であるがゆえ、その医療資源はそれを必要とする患者に届くようにしないといけない。風邪とか突き指とか診てる場合ではないのである。そういうのは地域のクリニックの先生のほうがよほど手馴れている。(疾患をランク付けしているわけではなく、適材適所という話)

なので、地域のお医者さんがそういった病院へ紹介状を書く場合には、「その病院の診療が必要な患者かどうか」をよくよく判断して患者紹介を行うべき

…ではあるのだけども…

わたしの所属は初診予約手続きを担当する部署であるため、毎日多くの紹介状の内容を確認しなければならない。
そうして見えてくるのは、(大きい病院あるあるだと思うが)正直うちでなくてもいいのでは…というご紹介がそれなりに多い、という事実。

「患者の家から近いので」
「患者が「友達に大学病院を勧められたのでかかりたい」と申しており」

そういう基準で紹介していいの??

「人間ドックで要精査」

まずはかかりつけ医か地域のクリニックで診断してもらうのが先なのでは(じゃないとどの程度の治療が必要なのか判断もできない)

「循環器内科で大学病院にかかっているので皮膚科も大学病院にしたいそうです」

いや、わかるよ。わかる。あちこち医療機関を渡り歩くの大変だよね。
だいたい、大学病院なんてもんは受診するのが1科だろうが2科だろうが半日仕事、下手すれば1科診てもらうのに1日費やす、まである。
なので1日仕事休んで2科3科いっぺんに診てもらえるならそりゃそのほうがいいわけで。
むしろとても合理的な考えだと思うのだけども、ちょっと待っていただきたい。

そうやって受診した患者さんたちは、地域の医療機関に帰りたがらない。




そもそも高度急性期病院はそこで行うレベルの治療が必要なとき「のみ」かかるものであって、病状が安定し他の医療機関で診られるレベルになれば、適切な医療機関へと「逆紹介」されていく。

…が…

はじめから大学病院レベルの治療が必要だったわけではない患者さんをいつどのタイミングで逆紹介すればいいのか…

「大学病院がかかりつけです」なんて、(多くの場合においては)日本語としておかしいのだ。

入院にも高度医療にも繋がらない再診患者で外来はあふれかえり、患者の待ち時間は数時間がデフォ、逆紹介ははかどらずマンパワーも増えないので物理的限界で、患者数をコントロールするには初診の受け入れを減らすしか手立てがなく、新しい患者が増えないので新規入院なども減って病院収入はますます減り、地域医療機関が「これは大学病院でみてもらうべき患者だ!」と紹介しようと思っても初診予約は1か月先まで埋まってる…

誰も得してなくないですか

まさしくジリ貧。

7,000円(税別)払って受診する患者より、上記のような内容の紹介状をぶら下げてくる患者のほうが病院としては悩ましい。
地域の先生方あっての急性期病院なのだから、内容がどうであれお断りすることはまずない。
「こんな内容で紹介してくんじゃねえ」
なんて、口が裂けても言えないのだ。


そんなことを考えつつ、今日も紹介状を読んでいる。


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