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エアコンは6・10・14畳しか買ってはいけない!? 失敗しないエアコンの選び方

冷房だけでなく、暖房機器としての市民権をすっかり得たエアコンですが、正しく深い情報はほとんど知られていません。今後エアコンを買う際、ムダな出費と効かないというリスクを減らすために有用な情報を一級建築士でエコハウスのエキスパートの松尾和也さんに教えていただきました。※雑誌「だん09」から流用

私は、約10年前から様々なところで「エアコンを畳数通りに買ってはいけない」と言い続けてきましたが、その根拠も含め、エアコン選びに必要な知識を正しく理解している人はほとんどいません。最終的には、最適なエアコンの機種を計算で導き出せるようになってほしいのですが、ここでは初級編として、失敗しない選び方の基本をお伝えします。

なぜ畳数で選んではダメなのか?
そもそも、「〇畳用」という表示は1964年にJIS規格で制定されました。その際の基準になったのが、無断熱の木造平屋建て(Q値だと20くらい!)。驚くべきことに、この基準は60年近くも変わっておらず、当時の無断熱住宅に合わせた畳数が現在も表示され続けています。

いまの家と、60年近く前の家とでは断熱・気密性能が明らかに違うため、畳数でエアコンを選ぶとたいてい暖房はオーバースペックになるうえ、必要以上に高額な機種を買うはめになります。

オーバースペックで何が悪いの? と思われるかもしれませんが、車で言うと渋滞に巻き込まれたのと同じ状態。暖房の燃費効率が下がり、ランニングコストも高くつきます。

定格能力ではなく最大能力に注目しよう
まず、エアコンの商品体系を理解しましょう。メーカーやシリーズによって多少の違いはあるものの、たいていは畳数(6・8・10・12・14・18・20・23・26畳用)と電圧(100・200V)に応じて9〜10のランク(品番)に分類されています カタログの見方のコツを[図1]にまとめました。

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さまざまな数字が並ぶなか、つい「(定格)能力」に目が行きがちですが、これは中間値でもなければ標準的な能力でもなく、いわばカタログ上の「見せかけ」の数値。重視する必要はありません。

エアコン本来の能力で一番注目すべきは、暖房と冷房それぞれの「最大能力」です。上位機種と中・下位機種との決定的な差は、機能や燃費の差ではなく、この最大能力だということを覚えておいてください。

次に注目すべきは「燃費(通年エネルギー消費効率=APF)」です。ただし、車と同じで誰がどう使うかで実燃費は相当変わってきます。

最大暖房能力は3ランクしかない
[図2]は、畳数別の暖房・冷房能力を棒グラフにしたものです。

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暖房の最大能力に着目すると面白いことに気が付きます。カタログ上では畳数・定格能力別に9〜10ランクに分けられている同一シリーズのエアコンが、実は最大暖房能力別で見ると3ランクしかないのです。

つまり、6畳用と8畳用、10畳用と14畳用(100V)、14畳用(200V)と26畳用の最大暖房能力はほぼ同じだということ。であるにも関わらず、販売時には畳数表示にしたがってランクごとに大きな価格差がつけられています。

このカラクリを理解し、各ランクで最も安価な6・10・14畳用を選べば、お得な買い物ができます。私が「エアコンは6畳用、10畳用、14畳用以外は買ってはいけない」と言うのはこのためです。

一方、畳数通りの機種を選ぶと、本来支払わなくてもいい初期コストをかけることにります。例えば、14畳用(200V)と26畳用では倍くらいの価格差がありますから、暖房能力とコスパで選ぶなら14畳用がおすすめです。

冷房能力は日射が大きく影響
ただし、冷房に関してはこの法則が当てはまりません。バイクや車で最高速度が制限されているのと同じで、製造段階でリミッターが設けられているため、最大冷房能力は3ランクではなく、機種のランクに応じて上がっていきます。

しかも、冷房に関しては、その家の日射遮蔽、天井断熱、外壁の色に大きく左右されるため、計算をしてみると結果的に畳数通りの機種が必要だったというケースがよくあります。

このようにエアコンは、暖房と冷房を一緒くたに検討することはできないうえ、家の断熱・気密性能、窓の数や大きさなど個々の不確定要素が絡むため、「ワンランク上なら間違いない」とか「小さいので十分行ける」といった無根拠な説は通用しません。実際には厳密な計算が不可欠ですが、知った上で選べばコストが削減できます。

なお、この記事は高断熱住宅専門誌「だん」09に掲載しています。高断熱住宅に関心をお持ちの方はぜひ本紙をご覧ください。

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