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サラリーマンライターのインタビュースキルを爆上げしてくれるバイブル

こんにちは、jimorineと申します。
わたしはサラリーマンながら、2021年よりお仕事で文章を書いています。メインとなる掲載媒体はニッチな業界紙ですが、自社のお客さまや教育機関の方々を中心に購読いただいています。メジャーな発行物ではないものの、自分が書いた文章がたくさんの方に読まれるんだと思うと、原稿作成は毎度身が引き締まる思いです。

担当するコーナーでは弊社のお客さまをご紹介することがほとんど。そのため、だいたい3ヵ月おきに日本各地へ出張して取材を行います。取材先は自分で選べる場合もあるので、まだ行ったことがないエリアをあえて選択して、ついでに観光してから帰ってくる、ということもしばしば。独身であるがゆえに無茶ぶりも多い職場ですが、これはこれで「役得」と思い楽しんでいます。

そんなお仕事をしているわたしが、「読んでよかった!」と心底感じたのが、「行列のできるインタビュアーの聞く技術」(宮本恵理子・著、ダイヤモンド社・刊)です。

わたしがお仕事で担当するコーナーは、記事を書くにあたり必ず対人の取材を行う必要がありますが、冒頭で記載したように、わたしは元々「サラリーマン」です。正直に申し上げて、文章をお仕事にするための教育も受けておらず、ライター採用でもありませんので、取材も原稿作成も完全なる我流です(ライティング業務にあたる以前は自社サイトの運営を担当しており、その前は一般的な事務職でした)。そのため、「もっとエピソードを深く聞き出すにはどうしたらいいんだろう」、「どのような順番で話せば効果的な取材になるんだろう」と、自分のやっていることが合っているのか不安に感じながら、常に試行錯誤を繰り返しています。

1年ほど我流で取材を続け、ついに助けを求めて書店に走ったのが2022年4月(遅くない?というツッコミはご容赦ください。読書の習慣がなく生きてきた人間なのです)。そこで、取材を行ううえでの心構えにはじまり、知っておくべきティップスがぎっしりと詰まった一冊と出会いました。

……もっと早く出会いたかった!この業務に携わることになったときに読んでおけばよかった!と心の底から後悔しました。おすすめポイントは巻頭から巻末までと言いたいところですが、ここではわたしがもっとも共感した部分についてご紹介します。それは、わたしが最初期から「もっとも初心者がやりがち」だが「もっともNG」であると考えていたことでもありました。

「質問リスト」なんて、むしろない方がいい

取材(インタビュー)において「もっとも初心者がやりがち」だが「もっともNG」なこと。それは、「聞き手があらかじめ用意した質問事項に沿って淡々と話を進める」ことであるとわたしは考えています。著者の宮本さんが、書籍の中で、取材を受ける機会が多い方へのヒアリング結果としてよく挙がることであると記載されているこちらの内容。

「機械的に特定の項目をチェックしていくようなインタビューは退屈です」という証言(というかクレーム)
(第5章「聞く」がはかどるメモのとりかた、p153)

「行列のできるインタビュアーの聞く技術」(宮本恵理子・著、ダイヤモンド社・刊)

おやおや、この証言、まさに去年のわたしが思ったことじゃないか。この一文を読んで、とある出来事が脳内で走馬灯のように蘇りました。まるであのときのわたしを見られていたのかと驚くほどの共感でしたが、それだけみなさんが感じることなのでしょう。質問リストに沿ったインタビューってね、本当にね、退屈なんです。

反面教師にはなった取材同行の経験

今の業務に携わるようになったばかりの頃、2人の先輩社員の取材に同席し、取材の進め方や話のふくらませ方を勉強しようと考えた時期がありました。客先での対面取材、電話での取材、Zoomを使ったオンライン取材。シチュエーションによってかなり差異があるだろうとワクワクして同席したものの、お2人とも、手元の質問事項に沿って質問するだけの取材でした。ひとつの項目で多少盛り上がったとしても、彼らは「ここに書いてあることを全部聞かないと」という思考になっているため、話が落ち着くと予定していた次の項目へ移ってしまいます。「今のところ、突っ込んだらもっと面白いお話聞けそうなのに、どうして聞かないの!?」と何度も感じました。

よい感じの流れになりそうになっても、次の質問に移ると別の話題に不自然に切り替わってしまうので、話し手の方もなんとなくトーンダウンしてしまうのが表情や語り口から伝わってきました。こんな流れ作業みたいな取材、わたしだったら受けたくないなぁ。せっかく現地へ同行してもそう感じてしまったのが、わたしが彼ら「先輩に教わる」ことを諦め、「我流」に走った最大の要因でした(時間はかかったものの、この本に出会えたのでわたしにとっては幸運でもあります)。

先輩社員を貶めたい訳では決してないのですが、わたしが実体験として刺さった事柄について書かれていたため、何度も深く頷いてしまいました。もちろん、このような取材の仕方でも記事を書かくことはできます。しかし、そうして出来上がった記事は味がしないというか、どこか無機質に感じてしまうのです。

【質問リストについて、補足というかコメント】
ちなみにわたしは質問リストは「一応」作りますが、インタビュー中はあまり見ません。聞きたいことは事前に頭の中に入れてから現場入りするようにしていますので、備忘録程度の存在です。「これだけは絶対に聞きたい!」ということは、手元資料に赤ペンでマルを付けておくか、蛍光ペンでマーカーしておくことで聞き忘れ防止としています。このような我流と見比べながら読み進められるのもこの本の醍醐味といえるでしょう。

温度感のあるインタビューを実現するために

では、どうしたらそんな単調なインタビューを脱することができるのか?という疑問については……。ぜひ、宮本さんの書籍をご一読ください!これからインタビューを行う予定がある方も、すでに経験済みの方も、「このワザを試してみよう」と思える会話術や下準備が満載です。

ちなみにわたしはまだこの本を読み始めたばかりの時期に取材があったのですが、第1章で読んだ内容(※)がさっそく役に立った、という体験があるからこそ、余計本書に心酔しているのかもしれません。その内容は冒頭の30ページほど読み進めれば知ることができますので、ぜひその目でお確かめください。

※このときの取材がそれまでよりも質が上がったと実感でしたので、それ以来、取材に入る前に必ずそのフレーズを思い出すようにしています。それは、「誰もが『語りたい』物語を持っている」ということ。
 日本人の愛すべき特性として「謙遜」がありますが、エピソードを深堀するうえで立ちはだかる巨大な壁です。「仕事でやっているのだから当然だ」とか、「これくらい誰にでもできるから」と謙遜してあまり多くを語ってくださらない方も多くいらっしゃり、お話を聞いていて「いや言うてもそれって素人からみたらすごいことなんですけど……」と思ってもなかなか切り込んで行けない場面が多々ありました(特に東北の方に多いんですよ……!ものすごいご苦労されてきている筈なのに、忍耐強いと言うか、奥ゆかしいと言うか……)。
 しかし、この「誰もが『語りたい』物語を持っている」というフレーズに触れてからは、まさにそれを聞き出すのがインタビューの醍醐味ではないか!と自身を奮い立たせることができるようになったのです。
 とは言え、控え目な方にゴリゴリ聞くのはNGですので、掘り進め方は状況次第。これからも精進あるのみですが、マインドとして大切に持っておきたいと思っています。


大切なのは、冷静と情熱のバランス

この本で、宮本さんは口酸っぱく「受け手(記事を読む人)の存在を意識するように」と書かれています。聞き手は「受け手が何を聞きたいのか」を意識し、「話し手が何を話したいのか」に寄り添うことが大事であり、聞き手は双方の代理人であることを忘れてはいけないと、一貫してこの前提に立って語られています。読み始めたときは、なんだかドライだな、と感じたものです。

それなのに、全編通して読んでいて感じたのは、「宮本さんは本当に人とお話するのが楽しくて、好きな方なんだな」ということでした。それでいて「この人にインタビューしてもらいたい」、「この人になら本音が話せる」と安心して話を聞かせてもらうことができるのは、客観的な視点を忘れずに冷静な自分を保ちながら、「知りたい」という情熱が伝わるようにお話をするからなのでしょう。気を抜くとどちらかに偏ってしまいそうな感情をうまくコントロールすることがコツなんですね。

未熟なわたしは取材していると楽しくなってしまい、個人的に興味があることについて話し込んでしまったり、つい盛り上がりすぎてしまったりと、軌道修正や時間の管理といった課題が山積みです。この本をバイブルとして、これからも経験を積んでいきます!

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